第22話
「なにか言われたんですか?」
「いえ、直接何か言われた訳ではないんですが…」
明日香さんの話を総合すると、相番が決まった辺りからから明らかにひまりさんの態度が変わったらしい。
基本は無視、後は仲のいいキャスト達と明日香さんをチラ見しながらヒソヒソ話、見えない距離から聞こえよがしに普通遠慮とかするよね的な事を言う等など、地味な嫌がらせが始まったとのこと。
およそ予想通りの展開ではあるね。
それでなくてもひまりさんは、入店当初からトップになると豪語しているにも関わらず、なかなか実現出来ずに苛立っていたのに、太客の売り上げが半分になると思えばそんな態度にもなるだろう。
相番のお客様はひまりさんのお客様の部下だと言うことだから、支払いはおそらくひまりさんのお客様がするってところも許せないのかもね。
店の方でキャスト達の射幸心やら、対抗心を煽っているわけだから、この程度の揉め事は日常茶飯事だし、許容範囲ではあるんだけど、明日香さんは夜が初めての新人キャストである、こういう事が多いと嫌気が差して辞めてしまう可能性もあるかなぁ。
「あんまりお勧めは出来ないんですが、手が無いこともないですよ」
「手、ですか?」
「そうです、同伴を断ってお客様が来店された後で今日も場内を入れてもらうんですよ。そうすれば相番にはならず、ひまりさんも不満は無くなると思います」
「あ、あぁ成る程。確かにそうすれば」
「先程も言いましたけど、あまりお勧めはしません。一度譲ってしまうと今後も同じ様な対応を要求されてしまうかも知れませんし、他のキャストに舐められます。何よりキャストの都合でお客様を振り回す事にもなります。予め言っておきますがお客様に事情を説明して、なんてのは駄目ですよ? 店の内情をお客様に話すのは禁止です」
「…じゃあ、どうすれば」
「そういう物だと受け流すのが一番良いんですが…」
まあこういうトラブル、キャストやってたら必ず経験する通過儀礼みたいな物だし、対応方法もだいたい決まっている。
「分かりました。次回からひまりさんのグループの席にはなるべく明日香さんを付けない様にお願いしておきます。今日のお客様はもう指名を頂いているので、二人きりでゆっくりしたいみたいに、なるべく相番を避ける誘い方をしましょう」
いくら対抗心を煽っているとは言え、揉め事だらけでは店としてもキャストの管理がしにくいので、女子グループ間での付け回しの融通くらいは普通にやる。
明日香さんは結衣さんが可愛がってるから、自然と結衣さんグループだな。
「それで、大丈夫でしょうか。今日を乗り越える自信がないです。お客様に弱音を吐きそうで」
「何度も言いますが、お客様に内情を教えるのはNGですからね。まあ席でどうこうされる事はないでしょうし、席を離れたら結衣さんのグループに付ける様にしますので。もしそれ以外で問題が起きたら、教えてください。きっちり対処します」
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