閑話4

わずか1日で完結を外してしまいました。

これから先はプロットも構想もない状態ですが、頑張って投稿してみます。

では、閑話からお楽しみください。


話の続きが飛んでいると思った方は、一度16話まで戻って頂ければ続きが読めると思います。

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キャバクラのキャストたちには色々な接客方法がある。

その中で一般の人たちが思う一番それっぽい方法は、お客様に疑似恋愛を体験して貰う、色恋営業であろうと思う。

キャスト達にとってこの色恋営業は指名客を得るうえで、また売り上げを伸ばす上で、確実な手早い手段だと認識されている。

だが、色恋営業が接客方法の主流かと言うと、実はそうでもない。

理由は至極簡単であり、単純だ。

世の男性諸氏には夢も希望もない話ではあるのだが、好きでもない、もしくは苦手な人相手に接客中ずっと好きな振りをし続けるのは、仕事であるからこそ苦痛であり、非常に疲れるのである。

そのため、長くキャストを続ける女性ほど自然と友営(お客様に友達感覚で楽しんでもらう営業)に近い接客方法になっていく。


しかし、そんな色恋営業を選択するキャストも当然いるわけで。

今回はそんな色恋営業にまつわる、あれこれについて語ろうと思う。



エントリーナンバー6

色恋主義 まりさん(夢魔族)の場合


前世日本では淫魔族と混同されがちな夢魔族であるが、このファンタジー日本にでは明確な違いがちゃんとある。

淫魔族は肉体的な接触や相手の体液を通じて生命力を得るのに対して、夢魔族は相手の夢に潜り込んで、魔力を得る。

まあ前世日本のゲーム風に言うと、淫魔はエッチでHPを奪い、夢魔は幻想でMPを奪うのである。

そんな夢魔族であるまりさんは、うちの店で働いた期間は短いもの働きぶりからしてキャスト歴としては結構長いようである。

しかも夢魔族だけあって、お客様に夢を見させるのが非常にうまい。

フリー(指名がない事)で来店されたお客様の場内指名(フリーで来店されたお客様が、その時席についたキャストを気に入り指名する事)率は最近断トツ1位である。


今回は、まりさんがお客様に店内でxxされてしまった事件について語ろうと思う。


「まりちゃんは、海外ってどこが好きだって言ってたっけ?」

「えと、最近は台湾行ったよ?この前お見上げあげたじゃん」

「ああ、そうだね。でも、そういうんじゃなくてさ、ただ行ってみたいってだけじゃ無くてほら、憧れてるところとか」

「えーなんだろ?グアムとかかな?海とか夜景とか奇麗そうじゃない?」

「あーそっちかー、俺ハワイかと思ってたわ」


どうやら、旅行行くならどこかと言う話で盛り上がっているらしい。


「ん-どうしよう、俺ハワイだと思ってそっちの準備始めちゃったんだよね」

「え?ゆーくんハワイ行くの?いいなー」


ホント、そんな余裕あるなんて羨ましいです。

今の生活じゃ海外レジャーなんて夢のまた夢だよ。


「え?いや、何言ってるのまりちゃん。まりちゃんも行くにきまってるじゃん」


おう?

そんな約束をされているように見えませんが、大丈夫ですか?


「え?私も連れて行ってくれるの?…うれしいけど、パスポート大丈夫かな」


まりさん、さっき台湾行ったって言っちゃってますよ。

動揺しているのは分かりますが、落ち着いてください。


「大丈夫、大丈夫。それにさ、両親も会いたがってんだよね。最近早く家につれてこいって煩くてさ」


なんだか話の内容が飛び飛びで良く分かんないんですが、あなたがヤバいって事だけは分かります。

いったい何故、ハワイに行く話とご両親がまりさん会いたがる話が一緒になっているのか。

そんな、まさかね。

勘違いだよね。


「え?えーと、ご両親もお店に遊びに来てくれるの?」


まりさん、流石にそれは無理筋です。

俺もだが、まりさんもうっすらこの話の行きつく先に気が付いたらしい。


「いやいや、そんなわけないじゃん。俺、まりちゃんが夜のお仕事してるって、両親に言ってないし、いったら家追い出されるかも」

「…」

「けどこの前さ、俺と結婚したいって言ってくれたじゃん。それで、両親説得する決意がついたんだよね」


いや、俺の記憶がたしかなら、まりさんは「ゆーくん見たいな人と結婚したら幸せだろうなぁ、ゆーくんと結婚する人に私嫉妬しちゃいそうw」と言っていたはずだ。

誤解を恐れずにまりさんの言葉を翻訳すれば「ゆーくんは良い人なんだからきっと誰かと幸せになるよ、ゆーくんと結婚する人に私興味ないけど」である。

まあ聞きようによっては結婚したがってるともとれるけど、わざとそう言う風に言ってるわけだし。色恋ってそういう営業だし。


お客様は何か話続けているが、場は既に微妙な空気である。

まりさんは笑顔を保っているが、既に体はお客様の方を向いていないので気持ち的には今すぐ逃げ出したいのだろうと思う。

そんな空気の中、お客様はソファーに置いてあったオシャレで小さめの紙袋から小箱を取り出し徐にソファーから立ち上がったかと思うと、まりさんの前で片膝立ちをして小箱のふたを開けた。


「まりちゃん、いやまり。幸せにする。結婚しよう」


決め顔である。

断れるとは微塵も思っていないお顔である。


誰か、誰か助けて。

俺にこの場の収拾をつけるのは無理だ。


「ごめんなさい!」


まりさんは半ば叫びながら頭をさげ、お客様の肩に手を置いた。

すると、お客様は白目をむいてぶっ倒れたのである。


あぁ、妄想全開だったもんね、MP全開もっていかれたんだね。


その後、まりさんは暫く出勤停止となり、お客様ことゆーくんは当店出入り禁止と相成った。

夢を見させのも行き過ぎると、怖いんだなと思う出来事である。

まぁ未だにまりさんにはゆーくんから連絡が来ているらしいのだが。

俺は密かにまりさんは他の店でも行き過ぎてお客様がストーカーに転職してしまい、逃げてきたのでは無いかと勝手に思っている。



エントリーナンバー7

メンヘラ担当 うみさん(38歳 種族年齢的には22歳くらい ラミア族)の場合


色恋営業は基本キャストの女の子がお客様を軽くいなすことで成り立っているが、中にはキャストの方がお客様に本気になってしまうこともある。

うみさんは普段明るく元気なキャラではあるのだが、変なところにスイッチがあるらしく、お酒が入ると接客中にも関わらず突然大泣きしたり叫んだりする地雷系の側面をもつ。

だが、そんなうみさんにもコアなファンがおり、指名客も一定数いるのが不思議なところである。


今回は、うみさんがあるお客様に本気に事になってしまって仕事を止めてしまった出来事について語ろうと思う。


カラオケルームに氷の交換に行くと、うみさんが熱唱していらした。


「ころぉ~ぉす♪私のぉ♪物にならないのならぁ、ころぉ~ぉす♪」


人気女性歌手がインディーズ時代に出した曲である。

それはいいのだが、思いっきり殺すとか言っているのをお客様は喜んで聞いてくれるのだろうか。

普通引くんじゃね?


「はぁすっきりした」


歌い終わったうみさんが本当にすっきりした顔で、ドリンクをぐびぐび飲んでいる。

ここはお客様を楽しませる場所ですよ、別にキャストが楽しんだらダメなわけじゃ無いけど、お客様優先ですよ。


「うみ姉は歌上手いよね、僕下手だから羨ましい」

「がっくんは素直でかぁいいねぇ」


褒められたことが余程うれしかったのか、お客様をかいぐり、かいぐり撫でまわすうみさん。

これは、俗にいうお姉ショタ系なんだろうか?

お客様は10代前半の若者に見えるが、種族次第では見た目は全然あてに出来んしな。

実はお客様の方がめっちゃ年上って可能性もゼロではないのが、この世界なのだ。


そんな感じで暫くうみさんがお客様にじゃれついていたところで、お客様が徐に話を切り出した。


「うみ姉、僕、もう来れないとおもうんだ」


あら、まさかのお別れモードに突入。

これはお店としても悲しい。でもなんで?


「なんで?」


暫く固まっていたうみさんも再起動後に、おれの疑問と同じ質問をする。

上手く引き止めてくれると嬉しいんだけど。


「お仕事、決まったんだ。東京で」


なんと、就職が決まったとのこと。

しかも大都会東京である。

これは悲しみつつも、応援するしか


「いやっ!がっくん、なんで?なんでそんなこと言うの?」

「モデルのお仕事で、つい昨日オーディションに合格したって通知が来たの。だから一番最初にうみ姉に伝えようと思って」


なんや、いい子じゃないの。

残念だけど、頑張ってほしいね。


「…私、私ついていく」


え?

いや、それはちょっと、うちの店的にも困るんですけど…


「うみ姉、ありがとう。でも一人で大丈夫だから」


いや、多分心配だからついていくんじゃなくて、おいて行かれるのが嫌なんじゃ?


「私がいちゃだめなの?」

「そんなことないけど…」


その後、「ついて行く」、「ダメ」の問答を繰り返すお二人。

もうね、お家でやってくれる?


結局その日は答えが出なかったようで、お客様もうみさんも不満がある顔で閉店となった。

翌日うみさんは飛んでしまった(突然音信不通になったり、出勤しなくなること)。


後日噂で聞いたところ、うみさんは結局強引にお客様ことがっくんについて東京にいってしまったらしい。

いや、それはいいんだけど、やめるときはちゃんと言ってよ。



エントリーナンバー8

伝説系キャバ嬢 シイタケさん(3?歳 ドワーフ族)の場合


シイタケさんは昔、肥後エリアの夜の世界で知らないヤツは潜り扱を受けるほど有名だったと聞いた。

シイタケと名乗るようになった経緯を見ても、ノリがよくて面白く、付き合いもいいのは分かる。

しかも見た目も可愛いとくれば、人気が出ない筈がないのは分かるのだが伝説となると疑問が残る。

俺も夜の世界に入って、あちこちのお店に仕事や挨拶がてら飲みに行くようになったが、今でも店長とかオーナークラスのひとはみんなシイタケさんを知っている。

知っているのだが、みな当時の事は口を閉ざして教えてくれないのだ。

ただ昔はすごかったんだぞ、と口をそろえて言われるだけである。

すごく気になるが、今回それはおいておく。

そんなシイタケさんはなんと既婚者である。しかも、結婚相手は元お客様であるとか。


これを色恋営業と言っていいのかは、微妙なラインだが、今回はシイタケさんと旦那さんとの馴れ初めについて語ろうと思う。


「シイタケさんって、夫婦で一緒にお店やってるなんて、羨ましいです。幸せそうです」

「ん、秘訣教えてほしい」

「そんないいもんじゃないよ?でもまぁ毎日一緒にいるから浮気の心配だけはないけどね」

「シイタケさんの旦那さんって、昔はお客さんだったんですよね?」

「そうそう、旦那がね、それはもう毎日のように通ってきて、付き合おうぜ、結婚しようぜって言うもんだからね、仕方なくよ、しかたなく」


本日は彩佳、瑠衣をつれてきのこクラブへ挨拶ついでに飲みに来ている。

そして話題は何故か、シイタケさんの結婚の事になった。


「むかしはねぇ、もうちょっとスマートで歌もうまかっただけどね。今じゃあれだから」


そう言ってカンターを指す、シイタケさん。

その指の先には小太りのマスターがグラスを磨いている。


「でもでも、いくら通って来ても、普通お客さんと付き合おう、結婚しようってならなくないですか?」

「んー、まぁ確かに少ないけどね。よく考えると当時の私って可愛いとか、面白いとか、一発やしてくれとかしか言われた記憶がないんだよね。だから、旦那から真っすぐに好きだって言われてキュンと来たのかも」

「あー成るほど。直球って結構効きますもんね」

「それに、必死だったしね、旦那。そういう所も可愛かったのかもw」

「あーいーなー、私も言われてみたいなぁ」

「決めては?決め手はなに?」

「うーん、難しいけど…歌かな?旦那とハモッた時にね、ああ一緒に歌うの気持ちいいな、楽しいなって。この人だったら、一緒に過ごすのも楽しいかもなって、思っちゃったんだよね」

「えー私もそんな運命感じたいです!」

「運命は言い過ぎだけどねw 彩佳ちゃんと瑠璃ちゃんなら、すぐにいい人見つかるよ。なんだったら私が紹介してもいいよ?」

「うーん、でも今はいいです」

「私も、結婚の約束がある」


彩佳はともかく、瑠衣の言っている結婚の約束をした相手ってだれだ。

今の生活を見てもそれっぽいヤツはいない筈なんだが。


その後、シイタケさんが運命を感じたと言っていた、マスターとのデュエットを聞かせて頂いた。

2人ともメッチャ上手かった。


ちなみに旦那さんはバンド活動をされている。

デスメタル系コミックバンドと言う何を目指しているのか、まったく意味の分からないバンドだが地元のライブハウスでは結構有名なバンドらしい。

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