第15話

ダンジョンの中を駆けていく。

浅層ではほとんど戦闘にはならない、人多いし、ザコばっかりだしね。


ちなみにこの世界の冒険者はソロがそこそこ多い。

チームでは稼ごうと思うと効率の良い狩場を見つけたり、なるべく深く潜ってよりよいアイテムや素材、鉱物を採取する必要があるが、ソロでやれるなら中層に行くか行かないかの比較的地上に近い場所でそれなりの収入を得られるからだ。


まあソロやってる奴らは、大体が特殊な能力を持ってるやつだな。

なので、ソロ冒険者はやっかみの対象でもあるわけだ。


「おう、小僧。お前ソロで10層ボスやれるくらいなら、他でも儲けあるだろ?順番譲れよ」


ちょっといきった冒険者たちに囲まれ、凄まれている今みたいに。

こういう人達って人の実力わかっているようで、分かってないよね。

だって、自分たちが4人で相手する敵に1人で挑もうとしてる若者に絡んじゃうんだものね。


「譲るつもりはない」


はいはい、相手してる時間ないの。

今集中してあいつらの場所確認してるんだから。


「あぁ舐めてんのか、おまえ。喧嘩売ってんの?」


いや、喧嘩売っているのそちらでは?

そんな汚い顔なんか舐めたくもないし。

無視だな、めんどくさいし。


「おうおう、今度は無視ですか。怖いんでちゅかー」


誰彼構わず喧嘩売ってる、あんたたちの存在のが怖いわ。

先にも言ったが、ソロ冒険者は特殊能力者が多くヤバい奴らの代表である。

そしてダンジョン内は治外法権、と言うより無法地帯なので、切れたヤツが他のヤツをぼこぼこにしたぐらいでは捕まらないし、誰も気にしない。

つまり、俺がこの冒険者たちをボコっても誰も気にしないのだ。

それが分かっている人たちは、少し距離を取って巻き込まれないようにしている。


いや、助けてくれてもいいだよ?


「なあ、はやくそこどけよ、そろそろ門開く時間になるじゃん」


うざ絡みは嫌われるよ?

ホント、困っちゃうな。…やっちゃうか?


「おい、そのくらいにしとけ。順番は順番だろうが」


おお、救世主現る。

渋めのおじさん。ソロっぽい。

やるね、おじさんかなりやりそうだ。

てか、おじさんなんで10層のボス待ち部屋にいんの?


ダンジョンは何故か、連続で潜るヤツを優遇する傾向がある。

転送ゲートなんかがいい例で、ダンジョンに1週間も潜らないと一度登録したゲートも使えなくなってしまう。

なので、プロ冒険者たちは足しげくダンジョンに潜る必要があるんだけど。


「んだよ、おっさんは引っ込んでろよ」


だから、誰彼気にせず喧嘩売るのは止めなさいって。


「ぐほっ」


ほら見たことか。

でも悶絶するくらいで、よかったね。一瞬本気で殺すのかってくらい殺気だったよ、あのおじさん。


「ふん」


他の3人がビビッて引き下がったのを鼻で笑って、列の元の位置に戻るおじさん。

ちょっとかっこいいです。ここが10層のボス待ち部屋じゃなければもっとよかったね。


そうこうしている内にクールタイムは過ぎボス部屋の扉が開く。

さ、サクッといきますか。

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