第13話
「その条件でいいです。よろしくお願いします」
ここに来てこんなお願いをしている時点で俺に選択しなど無いのだ。
「そうか、受けるか、よし。君、確か倉庫にまだ例の深層シリーズ試作装備があった筈だ、持ってきてくれ」
俺に向かって一つ頷いた後、俺の後ろに向かって指示を出す。
他には誰もいなかったはず。
振り返るといかにも秘書です、といった格好をした女性が部屋の扉近くに佇んでいた。
忍者?まじで、気配感じなかったんだけど。
「承知しました」
秘書さんはしずしずと言った雰囲気で頭を下げ、社長室を出て行く。
てか深層装備って、上級冒険者が使うやつだ。
14層あたりでは持て余してしまう。
「あの、そこまで良いものでなくても」
「なに、どうせ倉庫の肥やしになってたものだし、貸すだけなら問題ない。…うん、そうだな。じゃあ、今回の件が失敗に終わったら全装備買取にしてもらおう。なに、支払いは分割でいい」
なんか良い事思いついたって顔してますけど。
あの、それ軽く4桁万円超える装備ですよね?
めっちゃ笑顔じゃないですか、そんなに俺に借金させたいんですか?
「いえ、もっと安い装備で…」
「なんだ、援助はいらないのかな?」
…借金させたいんですね、分かります。
「わかりました。遠慮なくお借りいたします」
「ああ、遠慮なく使用してくれたまえ。…だしね」
角田さんが最後にボソッと何か言った様だが、聞き取れなかった。
まぁ良いものであるならその分可能性が高まるんだ、遠慮なく借りる事にしよう。
暫くするとゴロゴロと言う音と金属がこすれるようなキィキィと言う音が廊下から聞こえてきて、社長室の扉がガチャと開いた。
ボロボロ段ボールをボロボロの台車に乗せた秘書さんが入ってくる。
え?高級装備の扱いってそんな感じ?4桁万円よ?
「お待たせしました」
深々とお辞儀した後に、てきぱきと段ボールから装備を取り出す秘書さん。
ボディースーツにメット、皮鎧っぽい胸当て、ブーツ、ショートソード、リングスタッフ、スモールシールド、収納リング。
良かった、梱包はしっかりしてあるし整備も問題なさそうだ。
てか、この装備って…
「装備はすべてオートアジャストだ、ここで装備していくかい?」
お決まりのセリフ、ありがとうございます。
でも、ここで全部装備すると街中に出られないんで、収納に入れさしてください。お願いします。
ボディースーツ着こんで収納リングを腕に取り付け、他の装備は一つ一つ受け取って収納リングへ入れていく。
こう言うところはまるっきりファンタジーだよなぁ。
普段、異種族の人が身近にいる以外はほとんど現代日本と変わらない生活が出来ているだけに、余計に思う。
「本当にありがとうございます。すみません、急ぎますのでこれで失礼させて頂きます」
「ああ、健闘を祈っている」
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