第11話
ファーストフードを出て、冒険者協会に速足で向かいながら端末である人に連絡を取る。
『もしもし』
「突然の連絡で申し訳ありません、山田です。山田一」
『おお君か。知らない番号だったから、だれかと思ったよ』
「不躾で申し訳ありませんが、今日お会い出来ませんか?」
『今日?いきなりだな。なぜか聞いても?』
「その気になりました」
『ほーう。…なるほど、わかった時間を取ろう。事務所に来たまえ』
「ありがとう御座います。後ほどお伺いします」
一度切って、今度は店長に連絡する。
『おう、どうしたはじめ』
「すみません。ちょっと急用ができまして。今日から3日くらい休ませてもらいます」
『今日から休ませて貰うって、いきなり何言っての?お前それ本気?馬鹿なの?』
「いやいや、いくら何でもいきなり馬鹿はないでしょ。…真面目な話、さっき昔馴染みがダンジョンに取り残されてるのを知りました。聞いた状況だと正直危ない。一刻を争います」
『それで、お前が助けに行くってか?』
「はい」
『そんな大事なやつなのか?』
「孤児院の年下のやつらで妹みたいなもんなんで。聞いてしまったらほっとけなくなったんっす」
『…はぁ、しゃあねぇな。普通の欠勤扱いにしといてやる』
「え?あの、こう言うとき普通は有給とかになるんじゃ?」
『なにいってんだ、社員でも試用期間中は有給ねぇ事になってんだ、お前まだ入店して半年たってないだろ、試用中だ』
「えー」
『用事はそれだけか?じゃあ俺は忙しいから切るぞ。あっ担当にもちゃんと連絡入れとけよな、じゃな』
世知辛いと言うか、なんと言うか。
まぁこの業界、無断欠勤とかは罰金取られることもあるからな、それがないだけましだと思おう。
店長の仰せの通りにBondを立ち上げ結衣さん達担当キャストに休みのメッセージを入れておく。
そうこうしている内に冒険者協会へと到着した。
懐かしい、と感じるほどには時間はたっていないが、久しぶりではあるな。
内装も変わってないので、迷わず安否登録カウンターへ向かう。
「3級冒険者の山田です。安否登録の確認したいんですけど」
安否登録とは、文字通りダンジョンに入った冒険者の安否を登録することである。
今回の彩佳、瑠奈のように冒険者は常にダンジョン内で危険と隣り合わせであり、いつ消息をたったかが判然としない場合が多い。
そのため冒険者協会は、冒険者たちにダンジョンに入る前後の安否登録を推奨している。
簡単に言うと今からダンジョンに入るって登録と、無事出てきましたってよ登録を冒険者がして、家族とかの確認に来た人が登録者の安否がわかるようにするシステムだな。
まぁ安否確認するには、当然それなりの事前手続きもいる、個人情報だし。
俺の冒険者証を受け付けのお姉さんに渡す。
「はい。では、確認される冒険者のお名前と等級をお願いします」
「球磨彩佳と加藤瑠璃、2人とも4級」
「…まだ、出場の登録はされておりません。予定から2日目になります」
表情が少し沈痛になったお姉さんが、冒険者証を返してくれる。
出場とはダンジョンから出る事、予定から2日目とは予定された出場日から2日目だということだ。
つまり、予定より2日多くダンジョンに潜っていることになる。
やはり戻ってない、か。
4級冒険者のデットラインは予定から大体4日目と言われているから、今日から潜って捜索だとまじでギリギリだな。
「ありがとう御座います」
「無事をお祈りしております」
お姉さんの言葉に嘘はないのだろう。
だが、諦めの色が見えるその表情を見ている気にはなれない。
もう、ここに用事はない。
つぎだ。
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