第7話

うちの店には黒服担当という制度がある。

簡単に言えば担当したキャストの何でもがかり的なものかな。


担当キャストの出勤のスケジューリングとか時間調整をしたり、イベントとかのスケジュールとか店の業務連絡をしたり、しつこい客の対応について相談を受けたり、 キャスト同士の揉め事の相談を受けたり、遅刻したら迎えに行ったり、欠勤した時の穴埋め対応したり、某ソシャゲのプロデューサー顔負けの密着仕事である。


担当キャストに嫌われるといろんな意味で黒服は仕事をやりづらくなる半面、親しくもなりやすく、恋仲になって飛んでしまうことも少なくない。


ちなみに俺は結衣さんの副担当である。

本来であれば平でペーペー黒服の俺がナンバーワンである結衣さんの担当などなれるはずないのだが、そこは結衣さんが俺の事を結構信頼してくれてるっぽい事やこの治安の悪いファンタジー 日本で腕力に定評がある元冒険者はボディーガードとして持って付け、という理由で店長から副担当と言う微妙な役職を頂く事となった。


おかけで半分仕事みたいな事でも、結衣さんと二人でお出掛け出来る役得を享受しているので俺は満足だ。


さてさて、それでは本日2店目の営業返しと行きましょう。


「やほー、しぃーちゃん久しぶりー」

「おお、ゆいちぃーいらしゃりませー。結構遅かったねぇ」


今お迎えしてくれてるのはオーナーママであるシイタケさん。

やってきたのは、キャバクラと言うよりもスナックに近い営業形態のきのこクラブである。


…間違っている訳では無い。

ママの名前も店の名前も前述の通りである。


「そっちの君が噂のいっちゃんかな? 初めまして、シイタケです。変な名前でしょ?好きに呼んで良いからw」


シイタケさんは元々椎名と言う源氏名でキャストをやっていたそうなのだが、いつの間にか常連客にシイタケのあだ名で呼ばれる様になり、なんでかシイタケの名前の方が有名になって、じゃあいっそ源氏名もシイタケに直しますかと、まじでシイタケと言う名前で名刺を作ってしまったツワモノだ。

どうでもいい情報だが、名刺にはかわいい椎茸の挿絵が入っている。


自分の店を持つに至った時も、お客さんが面白がって覚えて貰えるほうが良いよね、という理由で「きのこクラブ」と言う店名にしたそうな。


「いえ、覚えやすくてかわいいです」


ほんと、カワイイです。

どう見ても未成年にしか見えない、あなた自身もカワイイです。


シイタケさんは、ドワーフ族である。

合法ロリで酒豪と言う、この業界では無双を誇る種族なのだ、可愛くっても仕方ない。


「ありがトン」


少し見上げながら、首を傾げてニッコリ。

あざといですっ!

でも、かわいいからなんでも許す!


暫く歓談しながら飲んでいると、突然花束とケーキを持ったボーイさんがやってきた。

そう、今日はシイタケさんのバースデーなのだ。

あ、ちなみにこの店では黒服をボーイと呼んでいる。


店の照明が消されバースデーソングが流されたので、皆んなでおめでとうと合唱。

照明がつくと、シイタケさんが若干涙目になっている事に気づいた。

うんうん、こういうの良いね。


その後はシャンパンを開けて、お祝いムードで飲みまくった。


お会計は20万オーバーだった。

また結衣さんが出してくれた。

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