第4話

本日は当店ナンバー2 光さんのエース顧客、角田様がご来店される。


光さんはグラマラス猫獣人である、リアル猫獣人なのである。

営業スタイルは友営を主体としつつもセクシー&お触り路線。

少し複雑な営業スタイルだが、女の武器は存分に使用するスタンスだ。 基本お触りは禁止だが、キャストからのお触りは黙認されるのでセーフ。

あの腕に絡みつく尻尾にヤられる客は数しれない。


角田様は肥後エリアを中心に展開している冒険者相手の装備アイテムショップチェーン「カスたまエース」のオーナー様だ。


一度の来店で大体40〜50万を売り上げるのは普通で、イベントなどでは3桁万行くこともザラ。

うちの店にとっても、光さんにとっても、超が着く優良顧客である。


お察しの通り、いくら指名料とキャストドリンクが別料金とはいえ、一時間5000のうちの金額では普通こんなに行かない。

売り上げの殆どはボトルとシャンパンである。


いや、俗に言うコールなんかはないよ? あれはホストか、もうちょいおら付いた店でやるもんだ。


あと、角田様は黒服にショットを煽らせる事でも有名らしい。 ショットってのは、テキーラとかコカボムとかのアルコール度数が天元突破したやつを出す時のショットグラスのことだな。大体1杯2000〜3000。

らしいってのは、俺はまだ角田様が来店された日に出勤したことがないからだ。

正直、ショット煽ってまともに仕事出来る自信は無い。


あれこれ考えているうちに、光さんと角田様が連れ立ってご来店。

まぁこの辺りの客になると同伴は当たり前だ。

きっと高級で美味しいご飯を食べてきたのだろう。


「いらっしゃいませ、角田様。本日のお席もVIPでよろしいですか?」


こういう所が大事だ。

当店は新人黒服もしっかり教育してますよ!アピールである。


「ん? 君、何処かであった事あるかい?」


おっと、レスポンスがありましたよ。

当然初対面なので、変な乗っかりは禁物だ。


「いえ、本日が初めてです。 先日より勤めております、山田と言います。 よろしくお願いします」


「いや、会ったことがある筈だ」


え?

えーと、どゆこと?

なんぱ?


「はじめはそこそこイケてた元冒険者だから、それでじゃない? えーと、確か嵐ってパーティだっけ?」


そこそこイケてたって、あなた。

光さんは冒険者に興味無し。

アイドル顔負けだった嵐の事も殆ど知らないのだとか。


「あぁ、じゃあ君があの生き残りか。 やっぱり一度店で会ったことがある。 そうか、今は黒服か」


どうやら冒険者時代に会ったことがあるようだ、覚えてないが。

まあ冒険者時代は生きるのに必死で、あんまり周りが見えてなかったしな。


「すみません、覚えてなくて…」


「いや、良い。しかし勿体ないな、君ならもっと行けるだろ。 金に困って辞めただけで、まだやる気があるならうちの店がスポンサードしようか?」


おっと、これは思わぬ展開ですな。

けど、まぁこの店に借りた恩義はまだまだ返せてないし、意外と楽しいし、結衣さん居るし…


「いえ、今楽しんで仕事してますので」


この答えが、俺の本音だ。


「そうか、分かった。 それじゃ今日は君が潰れるまで付き合って貰うとするか。 楽しいしんだろ?」


渋めのおじさんのウインクである。

似合っているのがやたら悔しいのはなんなのか。


「ええ、喜んで。 角田様が潰れるまでお付き合いいたします」


結局この日は仕事にならなかった。

潰し合いの勝負にどちらが勝ったかは記憶にない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る