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「く、ふ、はははっ! いやあ俺もね、君のことはちょっとばかり詳しいんだよ小姐!! ははは、例えば君が手下を四十七人雇っていたとか、この屋敷を発注した業者とか、有事の籠り先とか切り札となるトラップとか、ちょっとばかりね!! くくく、ガスの仕掛けは今ごろ部下のひとりが処理しているよ。なんで俺ひとりでこの部屋に入ってきたか少しは考えなかったのか?」
哄笑と共に防弾ガラスの目の前まで近づいて彼女を見下ろした。
「俺は腐っても組織の長だ。ノリや気分でカチコミなんかやらないさ。それにそんなお遊びは子供の時分にたっぷり楽しんできてる」
眉間にシワを寄せて歯を剥き出して笑う。それは喜悦でも嘲笑でもない。獣の威嚇だ。
タイミングを見計らったように、鼈甲が籠っている側の壁を貫通する鉄の板。否、刃。
「防弾ガラスで部屋を分断するのがそもそも古典的というかなんとも言い難いが、やるならやるで隣室との壁にも拘るべきだったな。どうせ切れ者気取りで払いをケチったんだろう? 薄いんだよそこ」
壁の向こうで剣が引き抜かれると、角度を変えて再び突き込まれ、それを三度繰り返したところで壁は崩れ落ちた。
鎧姿が壁の残骸を蹴散らして現れる。
「主様、お楽しみのお邪魔にはなりませんでしたか?」
「ああ、実に良いタイミングだったよ」
剣鍵は黒狗の返事にひとつ頷くと固まっている鼈甲から乱暴にリモコンを奪い取った。太い義指で器用に操作すると、防弾ガラスはシャッターのように天井に収納される。
「さて鼈甲小姐、もう君を守るものはなにもない。お高い旗袍や宝石を身に着けていても今の君は俺以上に全裸だ」
「あ、あ、ア…」
鼈甲が膝から崩れ落ち、彼女の目の前で黒狗が両手の大型自動拳銃を見せつけるように仁王立ちになる。
「右の銃と左の銃どっちで死にたい? 君が好きな方を選ぶといい。俺は寛大な男だからね」
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