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日常生活程度から純粋な破壊と殺戮まで、細かな出力調整が可能なこの義腕は当然医療用などではなく軍事用に開発された非公式な代物だ。
さらに身に着けている鎧は義腕を最大限活かすために専用開発されており、義腕と連動して生身の肉体への負担を軽減する外骨格としての役割を持つ。
つまり、戦場においては人を象ったこの金属の塊すべてで一個の私となる。
ほんの少しばかり知恵を働かせた者がスタンロッドで打ち掛かって来るが、どうせならもっと知恵の労働時間を増やしてやるべきだった。
常に金属を身に纏う私が絶縁対策を怠っているとでも思ったのか? 当然電流など生身まで通らないしそんな玩具では鎧に傷も付かない。いっそ
好きなように打たせながら無造作にその腕を掴むと、三百キロを超える握力でゴム手袋のように握り潰した。そして耳障りな悲鳴を上げる男を鈍器代わりにして隣の者を殴り付ける。
激突の衝撃でお互いが潰れて崩れ、一瞬でどれがどっちのパーツかわからないような有様になってしまった。
くだらない。どうでもいい人間がどうでもよく死んでいく。
“赤子の手を捻る”というが、手を捻られる赤子にも失礼な戦力差だなこれは。のんびりやるつもりだったのに少し調子に乗り過ぎてしまったかも知れない。私はよくよく加減や遊びの出来ない男だ。
ぐしゃぐしゃになったふたりを見て、もはや怯えて誰もかかってこなくなってしまった。
「撃て! とにかく撃つんだ!」
指揮官が叱咤するが、これはもう駄目だな。誰も彼も顔が怯えている。
もはや暴力でも雌雄は決したか。となればこの数ばかりの残党ども掃除するのは容易いが、さてどうしたものだろう。
「ふ、くく、は、くははははははははっ!」
主様の高笑いが響いたのは、そんなちょうど手持ち無沙汰になったところでだった。気付けば一分ほども経っていた。少し気を抜き過ぎてしまったか。
なんにせよ今日の主様は格別にご機嫌麗しいようで、ほんとうに来て良かった。帰ったら久しぶりに一杯やりながら鼈甲小姐に感謝のひとつもしてやろう。なんだったら彼女のために献杯くらいしてやってもいい。
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