第九十九話:闇を撃ち抜け【無限砲】発動!
ウイルスカード『【
その名の通りカード内部に特殊なウイルスプログラムが含まれていて、使えばモンスターをカオス化させる事ができる。
前の世界でも流通したカードだけど、流石に現実的な効果処理になっていた。
間違ってもカードを一時的に変質させるなんて事はない。
だがここはアニメ世界。そんな常識は通用しないし、今目の前で本当にカードが変化していた。
いや……問題はそこじゃ無いな。
ウイルスカード最大の問題点は、その中毒性と使用者の精神汚染だ。
使えば強大な力を得られるウイルスカード。
しかし一度でも使えばウイルスに感染して精神を蝕まれる。
中毒性の高さから、自覚症状があっても使用をやめられない。
そしてウイルスカードを使ったファイトに敗北すると、その敗者もウイルスに感染してしまう。
……改めて考えたら、とんでもない代物だな。
(で、今俺の目の前にいるのが……)
〈【
前の世界には存在しなかった感染モンスター。
パワーはカーバンクル・ドラゴンを超える、驚異の21000。
俺はすかさず召喚器を操作してテキストを確認しようとするが……
「クソっ! ノイズだらけで読めねぇ!」
恐らくウイルスの影響か、テキストが極端に読みにくくなっていた。
これじゃあ能力を把握できない。
「アタックフェイズ!」
「ちっ!」
仕方ない、まずは相手の動きを見極めよう。
「〈ジェノサイド・カオス・オーガ〉で攻撃ィ!」
どす黒い怪物が、巨大な腕をこちらに向けて振り上げる。
流石にヒット4の攻撃は受けられない。
俺は魔法カードを発動しようとしたが……
「モンスターが攻撃した事で〈ジェノサイド・カオス・オーガ〉の【怒号】発動ォォォ!」
「攻撃だけでダメージ!?」
それは流石に緩過ぎるだろ!
どす黒い怪物の口から瘴気が放たれて、俺のライフを削っていく。
ツルギ:ライフ7→6
「さらにィィィ! 1ターンに1度、相手がダメージを受けた事で〈ジェノサイド・カオス・オーガ〉は回復するゥ!」
「そのヒットとパワーで連続攻撃とかふざけんな!」
【怒号】がターン中1回の制限がなかったら禁止行き不可避だぞ!
……いや、俺のカーバンクル・ドラゴンも大概な効果か。
それはそうとして、この攻撃は通せない!
「魔法カード〈ダイレクトウォール〉を発動! 俺の場にモンスターが存在しないなら、相手のアタックフェイズを強制終了させる!」
透明なバリアに阻まれて、ジェノサイド・カオス・オーガは攻撃を終了した。
これで坂主はもう攻撃できない。
「チッ、ターンエンドォ!」
坂主:ライフ12 手札3枚
場:〈【隷刃の感染】ジェノサイド・カオス・オーガ〉〈毒刃のスレイヴ〉〈妖艶なるスレイヴ〉
なんとか凌いだけど、問題は何も解決していない。
とにかく今は試せる手を打つしかない。
「俺のターン! スタートフェイズ。ドローフェイズ!」
ツルギ:手札3枚→4枚
「メインフェイズ! まずはコレだッ〈コボルト・ウィザード〉を召喚!」
〈コボルト・ウィザード〉P2000 ヒット1
俺の場に獣人の魔術師が召喚される。
そして召喚時効果で1枚ドローした。
ツルギ:手札3枚→4枚
ドローしたカードを確認する。
よし、まずはこれを試すか。
「パワー3000以下のモンスター〈コボルト・ウィザード〉を進化!」
モフモフ魔術師が魔法陣に飲み込まれていく。
そして魔法陣が弾け飛ぶと、新たに黒く巨大な竜が召喚された。
「進化召喚! 来い〈ファブニール〉!」
〈ファブニール〉P10000 ヒット?
久々の登場だけど……上手く決まってくれよ。
「〈ファブニール〉の召喚時効果発動! 相手モンスター1体を破壊する。俺は〈ジェノサイド・カオス・オーガ〉を破壊!」
ファブニールが口から凄まじい炎を吐く。
ジェノサイド・カオス・オーガは抵抗する事なく、それを食らい破壊された。
対象には選べるみたいだな。
これなら問題なくいける!
「自身の効果で破壊したモンスターのヒット数が〈ファブニール〉のヒット数になる」
〈ファブニール〉ヒット?→4
強化されるファブニール。
だが切り札が破壊されたにも関わらず、坂主は焦っていなかった。
むしろ坂主は、ニヤついた顔でこちらを見ている。
「この瞬間〈ジェノサイド・カオス・オーガ〉の効果発動!」
「やっぱり何か持ってんのかよッ!」
「場を離れる時、自分のデッキを上から6枚除外することでェェェ! 〈ジェノサイド・カオス・オーガ〉は回復状態で場に残る!」
黒く巨大な魔法陣から、再び〈ジェノサイド・カオス・オーガ〉が場に現れる。
オイオイオイ、場を離れる時って。
耐性としては上位のやつじゃねーか! そのスペックでその耐性はダメだろ!
というか復活コスト軽いなオイ!
(クソッ、結局破壊判定は下っても場に戻るんじゃほとんど意味がない)
とはいえモンスターの頭数は減らしておきたい。
「……〈スナイプ・ガルーダ〉を召喚」
〈スナイプ・ガルーダ〉P3000 ヒット1
ひとまずこれでファブニールは【指定アタック】を得た。
流石に〈ジェノサイド・カオス・オーガ〉は倒せないけど、それ以外のモンスターならいける。
「アタックフェイズ! 〈ファブニール〉で〈妖艶なるスレイヴ〉を指定アタック!」
黒く巨大な竜が、女奴隷に牙を向ける。
しかし……そう単純にはいかなかった。
「モンスターで、攻撃したなァァァ?」
「なッ!? まさか」
「モンスターの攻撃によって〈ジェノサイド・カオス・オーガ〉の【怒号】を発動!」
嘘だろ、俺の攻撃にも反応するのかよ。
慌てて召喚器を操作してテキストを確認する。
どうやら発動した効果はノイズが消えるらしい。面倒な仕様だなオイ。
だが確かに、【怒号】の条件には「自分の攻撃」とは書いていない。
ジェノサイド・カオス・オーガの吐き出した瘴気を食らって、俺のライフが削れる。
ツルギ:ライフ6→5
「テメェのダメージに反応して〈毒刃のスレイヴ〉の【怒号】も発動! 更に〈妖艶なるスレイヴ〉の効果で追加の1ダメージだァ!」
「クソッタレな連鎖め!」
ツルギ:ライフ5→4→3
合計で2点の追撃ダメージ。
流石に食らい過ぎてしまったか。
だけど〈ファブニール〉の攻撃自体は止まっていない。
「いけ、ファブニール!」
黒く巨大な竜は、女奴隷を頭から食らう。
そのまま丸呑みして、破壊してしまった。
一応〈スナイプ・ガルーダ〉が攻撃可能だけど……今攻撃したところで返り討ちにされて終わりだ。
ならブロッカーとして残しておこう。
「ターン……エンド」
ツルギ:ライフ3 手札2枚
場:〈ファブニール〉〈スナイプ・ガルーダ〉
不味いな、流石にダメージを受け過ぎた。
相手の手札次第ではあるものの、最悪の覚悟とかしたくないぞ。
「俺のタァァァン! スタートフェイズ! ドローフェイズゥ!」
坂主:手札3枚→4枚
で、始まってしまった相手ターン。
手札4枚か、ちと最悪だな。
「メインフェイズ! 〈嘆きのスレイヴ〉を召喚!」
〈嘆きのスレイヴ〉P3000 ヒット1
坂主の場に召喚された奴隷少女。
あれは破壊時に1ダメージを与えてくるモンスターだったはず。
流石に2枚目の〈タイラント・オーガ〉は無いと思うけど……自壊系のカードを使う気か?
「これで! これで俺の勝ちだァァァ! 魔法カード〈
「やっぱり自壊系のカードか!」
「このカードのコストとして、俺は〈嘆きのスレイヴ〉と〈毒刃のスレイヴ〉を破壊ィ!」
2体の奴隷が苦悶しながら死滅する。
うん、悪趣味だ。
だがこの後魔法効果も来るから、更に悪趣味だな。
「〈搾取のポーション〉の効果! 破壊したモンスター1体につきライフを2点回復する!」
坂主:ライフ12→16
4点も回復した坂主。流石にライフ16点は一気に削るの難しいぞ。
……で、確かあのカードは追加効果があったよな。
「効果でライフを4点以上回復した事で〈搾取のポーション〉の追加効果発動ォォォ! 2点のダメージを食らえェェェ!」
完全にイってる目だし、充血した目だし。
そんな顔で叫ぶな、ホラーじゃねーんだぞ。
とはいえ、流石にこのダメージは不味いな。
ツルギ:ライフ3→1
次は、アレのダメージが控えている。
「破壊された〈嘆きのスレイヴ〉の【怒号】を発動ォォォ! これで、終わりだァァァ!」
「終わらせねーよ! 魔法カード〈スーパーポーション〉を発動!」
ソラも使っている回復魔法だ。
デッキに入れておいて正解だったよ。
「コストで〈ファブニール〉を破壊して、ライフを5点回復する!」
そして回復直後に【怒号】のダメージが俺に着弾する。
ツルギ:ライフ1→6→5
「っ! 破壊された〈ファブニール〉は【ライフガード】の効果で回復状態で場に戻る」
再び俺の場に現れる黒く巨大な竜。
回復状態になった事で、ブロッカーにもなれる。
トドメを刺し損ねたからか、坂主が分かりやすく憤怒している。
そのまま額の血管弾けるんじゃないか?
「
凄まじい絶叫だけど、一応アタックフェイズに入ったらしい。
仮想モニターに表示してくれるの便利ね。
「今度こそ殺せェェェ! 〈ジェノサイド・カオス・オーガ〉!」
俺に狙いを定めて、どす黒い怪物が咆哮を上げた。
そして巨大な腕を振り上げる。
「【怒号】発動ォォォ!」
「やっぱりそれ条件緩すぎないか?」
ツルギ:ライフ5→4
効果ダメージを受けてしまったという事は……
「〈ジェノサイド・カオス・オーガ〉の効果発動ォォォ! 回復しろォォォ!」
もう一度攻撃可能になる怪物。
だからそういう連続攻撃はやめてくれ。
考え方がブーメラン? 知るか!
とはいえ、これを受けたら負ける。
「手札から〈コボルト・エイダー〉の効果発動!」
俺は1枚のカードを仮想モニターに投げ込んだ。
「〈コボルト・エイダー〉は、自分の墓地に系統:《幻想獣》が存在する場合に手札から捨てる事で効果を発動する!」
「そんなクズカードでェェェェェェェェェ!」
「効果発動! ライフを3点回復して、カードを1枚ドローする!」
ゲーム中一度しか使えないとはいえ、優秀な防御カードだ。
モフモフなナース獣人に注射器を刺されて、俺のライフは回復する。
ツルギ:ライフ4→7 手札0枚→1枚
俺はドローしたカードを確認する。
(……これなら!)
まずは目の前の攻撃だ。
「その攻撃は〈ファブニール〉でブロック!」
黒く巨大な竜と、どす黒い怪物がぶつかり合う。
とはいえパワー差はありすぎる。
必死に抵抗するファブニールだが、ジェノサイド・カオス・オーガに首を引き千切られて爆散してしまった。
もう【ライフガード】による耐性も残っていない。
それに対して〈ジェノサイド・カオス・オーガ〉はまだ攻撃ができる。
「さっさと死ねやァァァ! 〈ジェノサイド・カオス・オーガ〉!」
2回目の攻撃だから【怒号】は発動しない。
とはいえ高いパワーとヒット。
まともに食らう必要は無い。だから〈スナイプ・ガルーダ〉でブロックする。
……なんて、普通なら考えるんだろうな。
俺は思わず口元に笑みを浮かべて、それを宣言した。
「ライフで受ける!」
怪物の剛腕が俺を襲い、ライフを大きく削り取る。
ツルギ:ライフ7→3
「クソがよォォォ! テメェは今ここで死ななきゃダメだろうがよ!」
「悪いけど、最大限の抵抗はさせてもらうぞ」
「俺が、俺が頂点なんだぞ! その事実に逆らってんじゃねェェェェ!」
「なら反逆しよう……お前の攻撃を引き金にしてな」
俺は1枚のカードを仮想モニターに投げ込む。
「魔法カード〈リベンジバースト!〉を発動」
「な、なんだそのカードは」
「マイナーカードさ。このカードは一度に4点以上のダメージを受けた時に発動できる魔法。その効果でカードを2枚ドローする!」
ツルギ:手札0枚→2枚
「さらに、このターン俺が受ける全てのダメージは3点減少する」
これで追撃の魔法カードを使われても、俺が生き残る可能性が大幅に上がった。
それを理解したのか、坂主はさらに狂気じみた目つきになっている。
「テメェ……何考えてやがんだ……ただの駒の分際でよぉ」
「駒?」
「俺が頂点。俺が王。だったらテメェらみたいなクズは俺の所有物、駒になる事が栄誉だろうがァァァ!」
なるほど、これが坂主の本音か。
ウイルスに感染した影響もあるとはいえ……
「どこまでも、クソ野郎だなお前」
「あぁん!?」
「お前は教科書のお勉強よりも先に人間を学べ。今ならまだ小学生レベルからやり直せるかもしれないぞ」
「偉そうなんだよAクラスがァァァ!」
「じゃあそのAクラスの俺が、お前を2回潰してやる」
「黙れッッッ! 俺の〈ジェノサイド・カオス・オーガ〉は無敵だ、テメェなんかに倒せるもんかァァァ!」
無敵、ねぇ。
カードゲームなんか大抵どこかに攻略法があるって知らないのかな?
「ターンエンド……次のターンで嬲り殺しにしてやる……テメェの親兄弟も覚悟しておけよ!」
坂主:ライフ16 手札2枚
場:〈【隷刃の感染】ジェノサイド・カオス・オーガ〉
どこまで口が悪いのやら。これはもう親の教育が悪いな。
とはいえ、俺もどうやってこの状況を打開しようかね。
(単純に考えれば〈ジェノサイド・カオス・オーガ〉の動きを封じてライフを削るべきなんだろうけど……)
そもそもアレのパワーが高すぎるから戦闘破壊は難しい。
疲労状態にしてブロックをすり抜けようにも、坂主のあの性格だ。
精神汚染されていても、疲労ブロッカーを作る魔法カードは握っていそうだな。
「俺のターン。スタートフェイズ。ドローフェイズ」
ツルギ:手札2枚→3枚
とりあえずドローしたカードを確認する。
……〈【
残りの手札は〈トリックシード〉と〈スペルリカバー〉。
〈スペルリカバー〉は墓地の魔法を全てデッキの下に戻して、ライフを3点回復するか、1枚ドローするかを選べる。
一応〈トリックシード〉と組み合わせればデッキから任意のカードを手札に加える事が可能。
ただ問題は何を持ってくるかなんだよな。
(……あれ?)
ふと、俺はある事に気が付いた。
坂主のデッキ枚数が少なくなっている。
同時に、ある可能性が俺の頭に浮かび上がった。
(もしかして……あのカードは)
召喚器を操作して〈ジェノサイド・カオス・オーガ〉のテキストを確認する)
そして、可能性が確信に変わった。
これなら、途中妨害をされなければ勝てるぞ!
「メインフェイズ! 頼むぞ!」
俺は相棒のカードを仮想モニターに投げ込む。
「奇跡を起こすは紅き宝玉。一緒に戦おうぜ、俺の相棒! 〈【紅玉獣】カーバンクル〉を召喚!」
『キュプイ! キュプイ!』
紅玉が砕けて俺の相棒が姿を現す。
緑のロップイヤーウサギが今日は一層逞しく見えるな。
〈【紅玉獣】カーバンクル〉P500 ヒット1
「次だ! 魔法カード〈トリックシード〉を発動! デッキから任意のカードを1枚選んで、デッキの1番上に置く」
妨害カードは……来ない。
俺は心の中で安堵しながら、キーカードをデッキの上に置いた。
そして次のカード、これも通ってくれよ。
「魔法カード〈スペルリカバー〉を発動! 自分の墓地に魔法カードが3枚以上あるなら、その魔法カードを全てデッキの下に戻す事で発動可能!」
「無駄な事を」
「俺は魔法カードをデッキの下に戻して、カードを1枚……ドロォォォ!」
気合を入れてドローしてしまった。
だがこれで、切り札が俺の手札にやってきた。
あとはトドメに持っていくのみ!
「行くぜぇ、相棒!」
『キュイキュイ、キュップイ!』
「進化条件は自分のライフが4以下であること!」
初めて聞く進化条件なのだろう。坂主は僅かに首を傾げている。
「俺は系統:《幻想獣》を持つモンスター〈【紅玉獣】カーバンクル〉を進化!」
『キュゥゥゥゥゥゥップイィィィィィィ!』
深紅の魔法陣が出現し、カーバンクルの身体が飲み込まれていく。
そして魔法陣の中央には巨大な深紅の宝玉が浮かび上がっていた。
「勇猛なるタテガミを
魔法陣が消滅し、深紅の宝玉が砕け散る。
すると中から姿を現したのは、巨大な獅子のようなモンスター。
勇猛を象徴するような紅蓮のタテガミと、背負った巨大なキャノン砲が特徴的な、相棒の新たな進化形態。
「砲撃せよ〈【
『ガオォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!』
〈【幻紅獣】カーバンクル・ビースト〉P15000 ヒット2
紅き獅子が、戦場で雄叫びを上げる。
だが坂主は嘲笑をしていた。
「パワー15000? そんなカードで俺の〈ジェノサイド・カオス・オーガ〉を相手しようってのか?」
「できるって言ったら、どうする?」
「なに?」
「確かにパワーとヒットは劣る……だけど〈カーバンクル・ビースト〉には専用能力があるんだよ!」
さぁ、派手派手にお仕置きタイムだ。
いくぜ相棒!
「〈【幻紅獣】カーバンクル・ビースト〉を疲労させて、専用能力【
「【無限砲】だぁ?」
「メインフェイズ中に〈カーバンクル・ビースト〉を疲労させる事で、コイツは相手モンスターを全て破壊する!」
「なに!?」
「ぶちかませ! 〈カーバンクル・ビースト〉!」
背中のキャノン砲にエネルギーを充てんする相棒。
そしてターゲットロックをし、足についていた鎖が反動対策で地面に突き刺さる。
「【無限砲】発射ァァァ!」
凄まじい光を帯びたエネルギーの噴流。
それが〈ジェノサイド・カオス・オーガ〉の全身を飲み込んで消滅させた。
勿論、これだけで終わる効果ではない。
「【無限砲】でモンスターを破壊した場合、1体につき相手のデッキを上から3枚除外する」
「たかが3枚、くれてやるよ」
坂主:デッキ残り23枚
坂主のデッキが3枚、エネルギーの余波で消滅する。
だが当然のように、坂主は余裕そうにしていた。
「だから無駄なんだよォォォ! デッキを上から6枚除外して〈ジェノサイド・カオス・オーガ〉を復活!」
坂主のデッキを食らい、場に戻る怪物。
だが……俺は見逃していないぞ。
今のコストで、坂主のデッキが残り17枚になった事。
そして……
「全部全部全部! テメェみたいなクズのする事なんてなぁ! 全部無駄なんだよォォォ!」
「へぇ……ところでさぁ1つ質問していいか?」
「あぁん?」
「〈ジェノサイド・カオス・オーガ〉って本当に無敵なのか?」
「あたりまえだ。俺が支配しているモンスターだぞ!」
「じゃあもう一つ聞くけどさ……そいつの場に残る効果って、
坂主は一瞬、その言葉の意味が解らなかったらしい。
だが理解した瞬間に、顔を青ざめさせた。
そう、〈ジェノサイド・カオス・オーガ〉はデッキを上から6枚除外する事で場に残る強力な耐性を持つ。
だがそれは強制効果であり、必ずデッキを削らないといけない。
さらに俺がテキストを確認した限り、このカードは自分のデッキが6枚未満の場合に除去された場合、デッキのカードを全て道ずれにしてしまうのだ。
強い力には相応の代償がつく。
このカードも例に漏れなかったらしい……いや、普通に代償軽い気がするけどな。
「だ、だがテメェの場にはもう攻撃可能なモンスターはいねぇ! そのライオン野郎だって――」
「回復、してるぞ」
そう、既に〈カーバンクル・ビースト〉は回復状態になっている。
それを認識した瞬間、坂主の顔から気力が抜け落ちていた。
「な、なんで……」
「〈カーバンクル・ビースト〉の【無限砲】はな、発動後に相手の場にモンスターが残っていた場合、何度でも回復状態に戻るんだよ」
「ば、バカな!?」
「まだまだぶち込むぞ! 【無限砲】発射ァァァ!」
カーバンクル・ビーストの放つ攻撃エネルギーの噴流が、ジェノサイド・カオス・オーガを破壊する。
そして坂主のデッキを3枚除外する。
坂主:デッキ残り14枚
場を離れた事で〈ジェノサイド・カオス・オーガ〉は坂主のデッキを6枚食らって復活する。
坂主:デッキ残り8枚
「これで最後だ……〈カーバンクル・ビースト〉!」
「させるかァァァ! 魔法カード〈
坂主は慌てて発動した魔法カードで、カーバンクル・ビーストの効果を無効化しようとする。
たしかにそうすれば負ける事はないな。
無効化できればの話だけど。
『ガオォォォォォォォォォン!』
カーバンクル・ビーストの咆哮によって、魔法カードの効果が霧散してしまう。
「な、なんで無効にならねーんだよ!?」
「〈【紅玉獣】カーバンクル〉を進化素材にした〈カーバンクル・ビースト〉は、効果が無効化されないんだよ」
「あ、あぁ……」
後退る坂主。だが容赦はしない。
カーバンクル・ビーストの方もエネルギーの充填は十分だ。
「ありえない……俺が……選ばれた人間の、俺が」
「まずはその驕りを捨てろよ」
「俺は……俺はァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
「ターゲットロック」
カーバンクル・ビーストのキャノン砲が狙いを定める。
さぁ、終わらせるぞ!
「【無限砲】フルファイアー!」
『ガオォォォォォォォォォォォォォォォォン!』
解き放たれる最大火力のエネルギー。
それは〈ジェノサイド・カオス・オーガ〉ごと、坂主のデッキを焼いた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
坂主:デッキ残り5枚
そして……最後の効果処理が入る。
黒い魔法陣から手を伸ばした〈ジェノサイド・カオス・オーガ〉は、坂主に目を付けた。
「や、やめろ……俺はテメェの主人だぞォォォ!」
そんな声もむなしく、どす黒い怪物は強制的に代償を支払わせてきた。
「やめろ……やめろォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
強制効果によって、坂主のデッキは全て食われてしまった。
デッキを失った者は、ファイトを続行できない。
「ターン、エンド」
スタートフェイズにデッキが0枚のプレイヤーは、ゲームに敗北する。
坂主:デッキアウト
ツルギ:WIN
ファイト終了のブザーが鳴ると同時に、黒い靄は消え去っていた。
ウイルスを使ったファイトで敗北したせいか、坂主はその場に倒れ込んでしまった。
口から泡を吹いて、白目を剥いている。
「ん?」
よく見ると、坂主の近くに例のウイルスカード『【暗黒感染】カオスプラグイン』が落ちていた。
「危ないなぁ」
それは、本当に他意はなかった。
ただ他の誰かが拾ってはいけないと思っての行動だった。
俺はウイルスカードを拾って……
「とりあえず誰か呼んで、コイツ片づけてもらうか」
無意識に、それを召喚器に入れてしまっていた。
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