第九十六話:麒麟と融合進化獣

「俺のターン! スタートフェイズ。ドローフェイズ!」


 ツルギ:手札2枚→3枚


 考えるべき事はある。けど今優先すべき事じゃない。


「メインフェイズ。行くぜ!」


 今はこのファイトに勝って、必要な保険を得る!


「奇跡を起こすは紅き宝玉。一緒に戦おうぜ、俺の相棒! 〈【紅玉獣こうぎょくじゅう】カーバンクル〉を召喚!」


 紅玉が砕け、俺の相棒が召喚される。


『キューップイ!』


 〈【紅玉獣】カーバンクル〉P500 ヒット1


 やる気満々で登場したカーバンクルを見るや、和尚は意味深そうに頷いていた。

 やっぱり……カーバンクルが化神なのか?

 だけど疑問や質問は後回しだ。


「魔法カード〈ギャンビットドロー!〉を発動! カーバンクルを破壊して2枚ドローする!」

「SRカードを早々に捨てるか」

「悪いけど、カーバンクルは破壊されても自身の効果で手札に戻る」


 ツルギ:手札1枚→3枚→4枚


 手札は増えた。だけど和尚の場には〈シレンの青龍〉がいる。

 モンスターを破壊したから効果が発動してしまう。


「貴様のモンスターが破壊されたことで〈シレンの青龍〉の効果発動!」


 青龍の口から放たれたエネルギー弾を受けてしまう俺。

 だけど今は耐え時だ。ドローしたカードも悪くはない。


 ツルギ:ライフ7→6


「俺は〈カーバンクル〉を再召喚」


 仮想モニターにカードを投げ込むと、再び紅玉が出現する。

 そこからカーバンクルが再登場した。


『キュップイ! キュップイ!』

「魔法カード〈トリックカプセル〉を発動! ライフを2点支払ってカードを1枚除外! 2ターン後に除外したカードを手札に加える!」


 ツルギ:ライフ6→4


 俺はデッキから〈ダイヤモンドボックス〉を除外する。

 これで2ターン後のスタートフェイズに、カードを3枚ドローできるようになった。

 とはいえ、相手の場にはモンスターが3体。これを放っておけば敗北は必至だ。

 ではどうするのか?

 簡単だ、全部除去すればいい。


「派手にいくぞ相棒! 魔法カード〈ルビー・イリュージョン〉を発動!」

『キュゥゥゥップゥゥゥイ!』


 カーバンクルの周辺に大量の紅玉が浮かび上がる。

 今日も派手にいくぞ。


「〈ルビー・イリュージョン〉は〈カーバンクル〉が場に存在する場合にのみ発動できる魔法カード! その効果で相手のモンスターを全て、パワー-無限にする!」

「……ほう」

「いけ、カーバンクル!」

『キュップゥゥゥゥゥゥ!』


 カーバンクルが指示を出すと、浮かんでいた紅玉から光が放たれる。

 その光に飲まれて、和尚の試練獣は無限の弱体化を受けてしまった。


 〈シレンの玄武〉P9000→P0

 〈シレンの朱雀〉P7000→P0

 〈シレンの青龍〉P10000→P0


 パワーを失ってしまった試練獣は次々に破壊されていく。

 朱雀の効果でパワーが上がっていても、無限のマイナスを受けては存在を維持できない。

 このままトドメまでいきたいけど、残念ながらヒットがたりない。

 更に言えば〈ルビー・イリュージョン〉のデメリットで〈カーバンクル〉しか攻撃できない。


「アタックフェイズ」


 とはいえ、ライフは削らないとな。

 俺がカーバンクルで攻撃しようとした、その瞬間であった。


「相手のアタックフェイズ開始時に、魔法カード〈時逆ときさかの試練〉を発動ォ!」

「なっ、そのカードは!」


 流石に声が出てしまった。

 だって今和尚が使ったカードは、時期的にはまだ存在しない筈のカードだぞ。

 しかも効果がバカみたいに強い。前の世界でも散々な目にあわされた。


「〈時逆の試練〉は、このターン破壊された系統:《試練獣》を持つモンスターを全て復活させる!」

「インチキ効果!」


 これくらいの文句は言わせてくれ。

 条件付きとはいえメインフェイズに破壊したモンスターが全て復活するのは洒落にならない。

 しかもこの魔法カードの恐ろしいところは、何故か召喚コストを払わずに蘇生するんだよ!

 マジでふざけんな。


「甦れ! ワシの試練獣よ!」


 和尚の場に三体の試練獣が復活する。

 しかも効果は無効になってないから、朱雀の効果でパワーも上昇してるぞ。


 〈シレンの玄武〉P9000 ヒット1

 〈シレンの朱雀〉P7000 ヒット2

 〈シレンの青龍〉P10000 ヒット2


「さらに、この効果で3体のモンスターを復活させた場合! 相手の場に存在するパワーが最も高いモンスターを1体破壊する!」

「マジでこれデザインしたやつ船降りろ」


 なんで除去効果までオマケで飛んでくるんだよ!

 1枚だぞ、1枚のカードがノーコストでやっていい事じゃないぞ!

 なんて文句を言っても、効果の処理は止まらない。

 魔法効果で〈コボルト・ウォリアー〉は破壊されてしまった。


「破壊をトリガーとして〈シレンの青龍〉の効果発動ォォォ!」

「そうなんだよな」


 またもや青龍の放つエネルギー弾で、効果ダメージを受けてしまう。


 ツルギ:ライフ4→3


 俺の場には〈カーバンクル〉1体のみ。

 流石に今攻撃しても意味は無いな。


「……ターンエンド」


 ツルギ:ライフ3 手札1枚

 場:〈【紅玉獣】カーバンクル〉


 防御札があるとはいえ、かなり心もとない状態だな。


「ワシのターン! スタートフェイズ!」


 俺は次の展開を予測したので、耳を塞いだ。


「ドロォォォォォォォォォォォォォォォォフェェェェェェェェェェェェェェェェェェェイズッッッ!」


 和尚:手札1枚→2枚


 だからうるせぇ、叫ばないでくれ。


「メインフェイズ! ワシは魔法カード〈岩戸いわどの試練〉を発動!」


 またドローカードか。

 今手札増強されるのは正直キツいんだけどなぁ。


 和尚:手札1枚→3枚


 ドローしたカードを確認した和尚が何かを確信したように笑みを浮かべた。

 これは……切り札を引いたな。


「召喚コストとして、ワシは場の〈シレンの青龍〉を破壊!」

「えっ!?」


 なんで青龍を破壊したんだ。

 あのカードがあれば、効率的にダメージを与えられる。

 しかも青龍は召喚コストが重い。迂闊に墓地に送るのは得策ではないぞ。

 あの和尚に限って、そんな凡ミスをするとは思えない。


「旅人に試練を与えよ! 汝はゼロ番目の番人なり!」


 口上を叫ぶと、和尚は1枚のカードを仮想モニターに投げ込んだ。

 和尚の場に、巨大な魔法陣が出現する。


「降臨せよ! 〈【試練獣零型しれんじゅうゼロがた】ロードキリン〉!」


 魔法陣を突き破り、神々しい光を纏った聖獣が降臨する。

 これが鬼ヶ崎和尚の切り札であり、俺達を監視していた化神〈ロード・キリン〉!


 〈【試練獣零型】ロードキリン〉P10000 ヒット2


『ほう……数奇な運命さだめを抱えて良そうなわっぱだな』

「今宵の試練に挑戦する小僧じゃ」

『なるほど、ではしかと見てやらねばな』


 ロード・キリンって、そんな喋り方だったんだ。

 でも仮にも聖獣の麒麟がモチーフだからな。

 これくらい貫禄のあるキャラの方が俺は好きだな。


『だが……あの童を試すには、まだ役者が必要だな』

「無論じゃ。この小僧には特別な切り札を見せてやるわい!」


 特別な……切り札?

 でも今の時点で和尚が使える切り札はロード・キリンくらいの筈。

 だが俺はそこまで考えてハッとなった。

 先ほど和尚は、イレギュラーなカードを使った。

 たしか前の世界で、あのカードが収録されたパックには、試練獣の新しい切り札が収録されていた筈!


「目に焼き付けておけ小僧……ワシは系統:《試練獣》を持つ〈シレンの玄武〉と〈シレンの朱雀〉を融合進化ァァァ!」

「なっ、融合進化モンスター!?」


 2体以上のモンスターを素材とする、強力な進化モンスター……ってそうじゃない!

 それは後10カ月は先のカードだろ!?

 なんで和尚もう持ってるんだよ!


二柱にちゅうの聖獣今一つとなりて、天地轟名てんちごうめいの龍王となれ!」


 天空に出現した巨大魔法陣へと、玄武と朱雀が吸い込まれていく。

 二体の聖獣を取り込んで、黄金に輝く強大な龍の王が姿を現した。


「降臨せよ、融合進化獣! 〈【融合試練獣ゆうごうしれんじゅう】アース・コウリュウ〉!」

『グアァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!』


 〈【融合試練獣】アース・コウリュウ〉P15000 ヒット3


 凄まじい咆哮と共に現れた大型モンスター。

 まさか……もう融合進化が使えるとは。

 知ってたら俺もデッキに忍ばせたのに!

 だが同時に理解した。和尚は青龍をもう必要としていなかっただけだ。


『これで役者は揃ったな』

「そうじゃのう。では……アタックフェイズじゃ!」


 ウゲッ、来る。


「行けェェェ! 〈アース・コウリュウ〉で攻撃! そして【試練】発動じゃァァァ!」


 例に漏れず〈アース・コウリュウ〉も【試練】を持っている。

 俺の前には二つの仮想モニターが出現した。


 ①相手に4点のダメージを与える。

 ②相手の場のモンスターを全て手札に戻す。


 何度でも言ってやる。選択肢が地獄しかねーじゃねーか!

 4点のダメージは普通に致命傷レベルだし、モンスターを全て手札に戻す効果は一部の耐性がなければ防げない。

 どれを選んでも大打撃とかふざけんな!

 とはいえ選ばなくてはいけない。

 俺は落ち着いて【試練】の処理タイミングのルールを思い出して、冷静に決断を下した。


「……①の効果だ!」

「む、血迷ったかァァァ!」


 まぁ普通ならそう思うよな。

 俺のライフは残り3点。4点のダメージを受ければ終わる。

 なら本来は②の効果が最適解なんだろうけど……


「【試練】は俺が選んだ後に効果処理に入る……つまり、選んだ直後であれば俺にはまだカウンタータイミングがあるんだよ!」


 俺は躊躇わず最後の1枚であった手札を、仮想モニターに投げ込んだ。


「魔法カード〈ルビー・バリア!〉を発動! このターン俺が受ける全てのダメージは0になる!」


 俺の周りに深紅のバリアが出現する。

 そのバリアが〈アース・コウリュウ〉による効果ダメージから守ってくれた。

 

 本当に引き当てていて良かったァァァ!

 カーバンクルが場にいるから、確実にこのターンは生き延びる事ができる。


「ダメージを受けない状態だからな。攻撃は当然ライフで受ける!」


 コウリュウのかぎ爪が、深紅のバリアに激突する。

 いや至近距離でそれやられると結構怖いな。


「ガハハハハ! この攻撃を完璧に凌いだか!」

(本当は結構ギリギリなんだけどな)

「さて、本来であればワシは〈ロード・キリン〉で攻撃をしたいところなのじゃが……」


 和尚は試すように俺を見つめる。

 知っているさ〈【試練獣零型】ロードキリン〉が持つ【試練】はな。


 ①相手は自身のモンスター1体を選んで、そのモンスターのパワーを0にする。

 ②自分はデッキからカードを2枚ドローする。


 この世界の普通のファイターならきっと攻撃して【試練】を使うだろう。

 だけど和尚にその気はないらしい。

 それもそうだ。俺が①を選べば〈カーバンクル〉が破壊される。

 だけど破壊された〈カーバンクル〉は手札に戻って、次の俺のターンに再召喚されるから意味がない。

 そして選択権は俺にあるから②を選ぶ事もない。

 一応、俺のモンスターが破壊されると、そのターン中だけ試練獣に耐性を与える効果がある。

 でもそれも今は無意味だ。


 となれば、わざわざブロッカーを減らす必要は無いということだ。


「ターンエンドじゃ」


 和尚:ライフ7点 手札1枚

 場:〈【試練獣零型】ロードキリン〉〈 【融合試練獣】アース・コウリュウ〉


 さぁて、ターンは回ってきたけど……これはピンチだな。

 少なくとも2枚目の〈ルビー・バリア!〉は期待できない。

 そしてターンを渡せば確実に俺は負ける。

 俺の場には単体では戦闘に不向きな〈カーバンクル〉のみ。


 泣いても笑っても、このドローで解決する必要があるみたいだ。


「俺のターン。スタートフェイズ」


 俺は深呼吸をして、デッキに手をかける。

 その時であった、カーバンクルの額にある紅玉が一瞬光ったような気がした。

 応援してくれているのだったら……相棒の期待に応えないとな!


「ドロー……フェイズ!」


 ツルギ:手札0枚→1枚


 ドローしたカードを確認する……きた!


「これならいける! メインフェイズ!」


 俺はドローしたカードを即座に仮想モニターへと投げ込んだ。


「魔法カード〈逆転の一手!〉を発動! 自分のライフが4以下なら、手札が3枚になるようにドローする!」

『キュップーイ!』


 デッキに手をかけた瞬間、カーバンクルが鳴き声を上げた。

 奇跡でも起こしてくれるなら、最高なんだけどな!


 そして俺は3枚のカードをドローする。


「……本当に奇跡起こしてくれたんだな」


 新たな手札を確認して、俺は勝利への道筋が見えた。

 同時に、カーバンクルの意思を感じたような気もした。

 なんでもいいさ、相棒がそれを望むのであれば……


「派手派手にいくぞ、相棒!」

『キュップイ!』


 こちらを見て、カーバンクルは上機嫌そうに鳴き声を上げる。


 俺は1枚のカードを仮想モニターに投げ込んだ。


「進化条件は自分のライフが3以下であること! 俺は系統:《幻想獣》を持つ〈カーバンクル〉を進化!」

『キュゥゥゥップイィィィ!』


 カーバンクルの身体はは蒼く巨大な魔法陣に飲み込まれて、新たな姿へと進化していく。


「蒼穹に風舞しとき、竜の槍が天地を貫く! 今こそ覚醒しろ、俺の相棒!」


 魔法陣が弾け飛び、中から巨大な蒼の宝玉が出現する。

 その宝玉が砕けると、中から長いロップイヤーと雄々しき翼を持つ、巨大な蒼色の竜人が召喚された。


「進化召喚! 来い〈【幻蒼竜げんそうりゅう】カーバンクル・ドラゴン〉!」

『グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!』


 〈【幻蒼竜】カーバンクル・ドラゴン〉P20000  ヒット3


「ほうほうほう。これは随分と強大な力を支配するものじゃのう」

「とは言っても、これだけじゃ和尚さんには勝てない」

「当然じゃ」

「だから俺は……コイツを使う」


 俺はコストとして手札を1枚捨て、ライフを1点支払う。


 ツルギ:ライフ3→2 手札2枚→1枚


 そして最後のキーカードを仮想モニターに投げ込んだ。


「蒼き風と共に来たれ。アームドカード〈【王の幻槍げんそう】グングニル〉を顕現!」


 魔法陣を突き破り、俺の場に一振りの巨大な槍が姿を現す。

 じゃあ和尚に見せてやるか。

 グングニルが本来想定されている組み合わせを!


「俺は〈【王の幻槍】グングニル〉を〈【幻蒼竜】カーバンクル・ドラゴン〉に武装!」


 カーバンクル・ドラゴンの手に、巨大な槍が握られる。

 今回はサイズ変更なんて発生していない。

 そしてグングニルを武装したカーバンクル・ドラゴンは、勇ましく槍の先を敵に向けた。


「いくぞ、アタックフェイズ! 〈カーバンクル・ドラゴン〉で〈ロードキリン〉に指定アタック!」


 グングニルの効果で指定アタックを得ているカーバンクル・ドラゴン。

 槍を構えて、勢いよくロード・キリンに飛び掛かった。


「無駄じゃ! 魔法カード〈イージーガード〉を発動! 攻撃を無効に――」

「できねーよ!」


 和尚の発動した魔法カードが粉々に砕け散る。


「なんじゃと!?」

「〈カーバンクル〉から進化した〈カーバンクル・ドラゴン〉が存在する限り! 相手はアタックフェイズ中に魔法を使えない!」

「小僧……味な真似を」


 そのまま攻撃続行。

 カーバンクル・ドラゴンの振るう槍を、ロード・キリンは紙一重で躱し続ける。

 だがパワーの差は明白だ。


『グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!』

『クッ、ここまでか』


 カーバンクル・ドラゴンが横薙ぎにしたグングニルを食らい、ロード・キリンは爆散してしまった。

 そしてモンスターを戦闘破壊した事で、カーバンクルの本領発揮となる。


「相手モンスターを戦闘破壊した事で〈カーバンクル・ドラゴン〉の【無限槍むげんそう】を発動!」


 カーバンクル・ドラゴンがグングニルを振り、衝撃波を発生させる。

 その衝撃波が和尚のライフを削り取った。


 和尚:ライフ7→4


「くぅぅぅ! 追加ダメージ効果か!」

「それだけじゃない! 相手の場にモンスターが残っているなら【無限槍】の効果でカーバンクルは何度でも回復する!」

「無限に攻撃を仕掛けるモンスターじゃと!?」


 瞬時に回復し、起き上がるカーバンクル・ドラゴン。

 まだまだ攻撃は続くぞ。


「次は〈カーバンクル・ドラゴン〉で〈アース・コウリュウ〉を指定アタック!」

「グヌゥ! 迎え撃てェェェ!」


 上空に飛翔する竜と龍。

 コウリュウのかぎ爪や火炎放射を、カーバンクル・ドラゴンは槍で弾いていく。

 次々に攻撃を仕掛けるコウリュウだが、カーバンクルのパワーにはかなわない。

 いくら融合進化モンスターとはいっても、純粋なパワー勝負ならコチラの勝ちだ。


『グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!』


 満月を背景に、カーバンクル・ドラゴンが咆哮する。

 そして勢いよく手に持っていたグングニルと投擲。

 コウリュウの腹部を貫いた。


『グアァァァァァァァァァ!?』


 凄まじい断末魔と共に、コウリュウは上空で爆散、破壊された。

 そしてカーバンクル・ドラゴンは、グングニルをキャッチして地上に戻ってくる。


「【無限槍】発動!」


 再び衝撃波で、和尚のライフを削る。


 和尚:ライフ4→1


 さて、和尚の残りライフは1。

 普通ならこのタイミングで和尚は〈アース・コウリュウ〉の【ライフガード】を使うだろう。

 そうすれば〈アース・コウリュウ〉が回復状態で戻ってくるからな。

 だが、和尚がそれをする気配は無かった。


「ガハハハッ! 何故【ライフガード】を使わないのか、そう思ったのだろう?」

「モンスターが場に残れば【無限槍】の的になる。ならいっそ任意効果である【ライフガード】を使わないほうが生き残れる」

「正解じゃ小僧。ワシのライフは残った! モンスターは0体、これでは貴様の無限攻撃も続かんじゃろ!」


 まぁ、普通はそう思うわな。

 けどな和尚さんよ……


「それはどうかな?」

「む?」

「和尚さんの腕前を前にして、きっと【ライフガード】を使わないという選択はするだろうと予想はできていた」


 だからこそ俺は〈グングニル〉を引いた事に歓喜したんだよ。


「〈【王の幻槍】グングニル〉の武装時効果発動! 自分のデッキを上から8枚除外して、ターン中1度だけ回復できる!」

「……そうか、そこまでは想像できておったか」


 グングニルの効果でカーバンクル・ドラゴンが起き上がる。

 もう攻撃を邪魔するものは存在しない。


「合格じゃ天川ツルギ! その一撃、撃ち込んで来い!」

「はい! いっけー〈カーバンクル・ドラゴン〉! 蒼穹幻槍ドラゴン・フィニッシュ!」

『グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!』


 勇敢な咆哮と共に、カーバンクル・ドラゴンはグングニルを和尚に投擲した。


「……この小僧なら、あるいは」

 

 和尚:ライフ1→0

 ツルギ:WIN


 ファイト終了のブザーが鳴り、仮想モニターには俺の勝利が表示されていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る