第九十三話:最強ロボの倒し方

「スタートフェイズ。ドローフェイズ」


 ツルギ:手札3枚→4枚


 ドローしたカードを確認する。

 うーん、満点の回答とは言い難いかな。


 改めて状況を整理しよう。

 財前ざいぜんの場にはパワー14000の〈【合体機神がったいきしん】デルタ・アーサー〉が1体。

 このまま攻撃を仕掛けてもいいが、相手が防御やカウンターのカードを持っていた場合が厄介だ。

 ただでさえパワーが高いのに【合体】の性質上、あの〈デルタ・アーサー〉を倒すには3回除去しなければならない。

 中途半端な除去は上手く機能しないのに、合体している機械モンスターの中に〈ライト・バリアヘッジホッグ〉がいる。

 アイツがいると効果ダメージを与えられないから、無限ダメージコンボのような事もできない。


 俺は改めて手札のカードを確認する。


(ちょっと燃費はイマイチだけど、今はこれが一番か)


 とりあえずの展開ルートは決まった。


「メインフェイズ! 俺は〈メタル・ガルーダ〉を召喚!」


 〈メタル・ガルーダ〉P6000 ヒット0


 俺の場に全身が金属で構成された鳥が召喚される。

 ヒットは0だが、こいつは【指定アタック】を持っている。

 とはいえ、これだけではどうしようもない。

 なので次はこちらのカードです。


「魔法カード〈同姓同名分身〉発動!」

「な、なんだそのカードは」

「まずは発動コストでライフを2点払うな」


 ツルギ:ライフ8→6


「このカードは自分の場に存在するヒット1以下のモンスターを選んで、そのモンスターと同名のカードをデッキから2体まで召喚する」

「デッキからの召喚効果だと!?」


 大げさに驚く財前。いやお前もさっき使っただろ。

 まぁ実際サモンでは少し珍しい効果なのは事実だけどさ。

 

「俺が選ぶのは当然〈メタル・ガルーダ〉だ。来い、追加の2体!」


 俺のデッキから更に2体の金属鳥が召喚された。


 〈メタル・ガルーダ〉(B) P6000 ヒット0

 〈メタル・ガルーダ〉(C) P6000 ヒット0


 そして同名モンスターが3体揃えば、こちらのカードが使えます。


「魔法カード〈ザ・トリオ・ドロー!〉を発動! 自分の場に同名モンスターが3体存在するなら、デッキからカードを3枚ドローする」


 ツルギ:手札1枚→4枚


 これで手札増強……おっ、良いカード引いた。

 けどコイツの出番は、今じゃないな。

 なので次のカードはこっち!


「魔法カード〈トリニティオーラ!〉を発動」

「グッ、そのカードは……」

「お前はよく知ってるだろ? 最初のファイトで俺が使ったカードだからな」


 場のモンスター全てをパワー+する魔法カード。

 だが俺の場のモンスターが全て同名モンスター3体なら、パワー+9000だ。


 〈メタル・ガルーダ〉(A) P6000→P15000

 〈メタル・ガルーダ〉(B) P6000→P15000

 〈メタル・ガルーダ〉(C) P6000→P15000


 とりあえずこれで、3体のガルーダは〈デルタ・アーサー〉よりパワーが高くなった。

 あとは上手く攻撃が決まればいいんだけどな。


「アタックフェイズ。まずは〈メタル・ガルーダ〉Aで〈デルタ・アーサー〉を指定アタック!」


 金属鳥が合体ロボに狙いを定めて、その鋭いかぎ爪を向ける。

 だが財前は余裕そうだ。これは何か握っているな?


「フッ、僕は魔法カード〈ユナイトチェンジ!〉発動!」

「あぁ、合体モンスターを入れ替える魔法か」

「その通りさ! 僕は合体している〈ライト・バリアヘッジホッグ〉だけを手札に戻して、手札から〈ライト・アックスライノス〉を召喚!」


 〈ライト・アックスライノス〉P3000 ヒット1

 財前:ライフ10→9


「そして〈アックスライノス〉を、アーサーに合体だ!」


 巨大なサイ型メカが、ハリネズミの代わりに合体した。

 ……デカブツにデカブツを合体させたから、コア部分のアーサーが見えなくなったぞ。

 違うメカが合体したが、〈デルタ・アーサー〉のパワーの増減はない。

 同じパワーのモンスターが交代したからな。ただしヒットは1下がっている。


〈【合体機神】デルタ・アーサー〉P15000 ヒット4


 これで済めばよかったのに、この後〈アックスライノス〉の召喚時効果までくる。


「召喚された〈アックスライノス〉の効果発動! ヒット1以下の相手モンスターを1体破壊だァ!」


 俺の場にはヒット0のモンスターしかいない。

 合体ロボが投げた巨大な斧によって、俺の〈メタル・ガルーダ〉Cは破壊されてしまった。


「だけどまだ戦闘は続行している!」

「それも相打ちさァ!」


 攻撃中だった〈メタル・ガルーダ〉Aが〈デルタ・アーサー〉に突撃して大爆発を起こす。

 通常であれば両者破壊で終わるのだが……あのカードは別だ。


「合体していた〈ライト・アックスライノス〉を身代わりにして、僕のアーサーは生き残る。


 合体要因が減った事で、アーサーのパワーとヒットが下がる。

 名前も元に戻っているな。


 〈【中核機神ちゅうかくきしん】コア・アーサー〉P9000 ヒット3


「なら〈メタル・ガルーダ〉Bで指定アタック!」

「今度は〈レフト・シールドマンモス〉を身代わりにするよ」


 マンモスが合体を解除して、ガルーダの攻撃を防ぐ。

 爆散するマンモス。

 これで俺の攻撃は全て終わってしまった。


「……ターンエンドだ」


 ツルギ:ライフ6 手札3枚

 場:〈メタル・ガルーダ〉A、B


 攻撃回数が減っているとはいえ、流石に固いな。

 倒せる相手とはいえ、ちょっと面倒だ。

 あとターンが回ってきた財前の笑顔が気持ち悪い.


「フフフ、僕のターンだ! スタートフェイズ。ドローフェイズ!」

 

 財前:手札3枚→4枚


「メインフェイズ。僕は〈ライト・バリアヘッジホッグ〉を再召喚」


 またもや召喚されるハリネズミっぽい人型メカ。

 まーた効果ダメージメタだよ。どんだけ警戒してんだ。


 〈ライト・バリアヘッジホッグ〉P3000 ヒット2


「続けて魔法カード〈オイルチャージ〉を発動! 僕の場に系統:《機械》を持つモンスターが2体存在するので、2枚ドローだ!」


 財前:手札2枚→4枚


 うーん、手札補充されてしまったか。

 少しヤだな。

 多分次の合体要因を引き込んでいるな。


「さぁ行け! 〈レフト・ジェットプテラ〉を召喚だ!」


 またもやミニ仮想モニターが出現して、出撃バンクが流れる。

 今度はプテラノドン型の戦闘機か。

 燃えるじゃねーか。

 そして、ソレは財前の場に着陸した。


 〈レフト・ジェットプテラ〉P4000 ヒット1


 3体のメカが場に揃った。

 観覧席からは再び男子達の熱き期待の声が鳴りびいている。

 うんうん分かるぞ。俺もメッチャ期待してる。


「新たな合体を見せてやれ〈コア・アーサー〉! 〈バリアヘッジホッグ〉! 〈ジェットプテラ〉! 三位一体!」


 三体のメカは高く飛び上がり、合体バンク空間へと突入した!

 だから一々かっこいいんだよ!


「レッツ! コン、バイーン!」


 だから財前、その指令ブレスはどこから出したんだよ。

 俺も欲しいからどこで買ったのか後で教えてくれ。


 バンク空間に謎のエンブレムを出現させてから、合体体勢に入る三体のメカ。

 アーサーとヘッジホッグは同じ変形。

 プテラは胴体手足、そして翼へと変形した。

 ……また七割乗っ取られてる。


「愛の翼に勇気をこめて――」

「オイ馬鹿! それは怒られそうだからやめろ!」


 流石に阻止させてもらうぞ。

 観覧席からブーイングが来た気がするけど無視だ無視!

 あと財前、鉄道要素なしでその口上使うんじゃねーよ、バカ!


「ジェットカスタムで降臨せよ! 〈【合体機神】デルタ・アーサー〉!」


 プテラの翼を広げ、新たな姿となった合体ロボが降臨した。


 〈【合体機神】デルタ・アーサー〉P13000 ヒット5


「この程度で終わると思うなよ天川ツルギ!」

「は?」

「僕の場に合体状態のモンスターが存在するなら、このカードは手札から直接武装アームドできる!」


 おっとこれは予想外。

 アームドカードまで使うようになっていたか。


「顕現せよアームドカード! 〈マキシマムバズーカ〉を〈デルタ・アーサー〉に直接武装ダイレクトアームド!」


 巨大な必殺キャノンを武装するデルタ・アーサー。

 これは面倒なカードを使われたな。

 それはそうとして、顕現コストは払ってね財前君。


 財前:ライフ9→7


「ダメ押しだァ! 魔法カード〈斬撃歯車!〉を発動! 貴様の〈メタル・ガルーダ〉Bを破壊!」


 あっ、アイツの弟が使ってたカードだ。

 てか貴重な除去魔法をここで使うのかよ。

 勝てると慢心して変なテンションになってないか?


 飛来してきた歯車に身体を両断されるガルーダB。

 残るは最初のガルーダだけか。

 とは言っても〈マキシマムバズーカ〉の武装時効果で〈デルタ・アーサー〉は指定アタックを得ているんだけどな。


「アタックフェイズ! 〈デルタ・アーサー〉で、残った〈メタル・ガルーダ〉を指定アタックだァ!」


 既にガルーダのパワーは元に戻っている。

 問題はこの攻撃でガルーダが破壊された後だ。


 必殺のバズーカ砲をガルーダに向けるデルタ・アーサー。

 チャージされた膨大な破壊エネルギーがガルーダを跡形もなく消し飛ばしてしまった。


「相手モンスターを戦闘で破壊した事で〈マキシマムバズーカ〉の武装時効果発動! 武装しているモンスターのヒット数分のダメージを相手に与える!」


 再びエネルギーチャージに入るデルタ・アーサー。

 そうこれが問題なんだ。

 合体の性質上パワーとヒットは上昇しやすい。

 そこにこの効果ダメージ。これが厄介極まりないんだ。

 現在俺のライフは6点。これを通せばデルタ・アーサーのヒット数である5点のダメージを受けてしまう。

 流石にこれは通せない。

 俺は手札から効果ダメージを0にする魔法カード〈ゼロバリア!〉を発動しようとしたが……


(待てよ……大ダメージ……ライフ差ができるのか……)


 俺は墓地に眠る〈コボルト・ライブラリアン〉の存在を思い出す。

 そうだ、デッキにあのカードも入っているならいっその事。


「……ライフで受けてやる」


 デルタ・アーサーが放った極太のビームを、俺は正面から受けた。


 ツルギ:ライフ6→1


 残りライフは1点。

 一見するとピンチだな、うん。


「クッ、仕留め損ねたか……ターンエンド!」


 財前:ライフ7 手札2枚

 場:〈【合体機神】デルタ・アーサー〉+〈ライト・バリアヘッジホッグ〉+〈レフト・ジェットプテラ〉


 悔しそうにターンを終える財前。

 ありがとよ、リーサル計算ミスしてくれて。

 さぁてそれじゃあ……派手にいきますか!


「俺のターン。スタートフェイズ!」


 発動から2ターン目のスタートフェイズ。

 俺は最初のターンに発動していた〈フューチャードロー〉の効果で手札を増やした。


 ツルギ:手札3枚→5枚


「そしてドローフェイズ!」


 ツルギ:手札5枚→6枚


 ドローしたカードを確認する。

 よし、このターンに決められる。

 問題は財前が持っている最後の1枚の手札だな。


「メインフェイズ!」

「その瞬間、僕は魔法カード〈スーパーディフェンスシフト!〉を発動! その効果によって、このターン〈デルタ・アーサー〉は疲労状態でブロックが可能になり、パワーも+5000となる!」


 〈【合体機神】デルタ・アーサー〉P13000→P18000


 巨大な合体ロボが防御態勢に入る。

 ……えっ、そのカードをこのタイミングで使っちゃうの?

 そういうのは戦闘時に使って相手を欺こうよ。

 財前め、完全に慢心しきってるな。

 たしかに超大型の疲労ブロッカーは厄介この上ないよ……でもそれは、破壊できなければの話だ。


「じゃあサッサと攻略しますか」


 俺は1枚のカードを仮想モニターに投げ込んだ。


「奇跡を起こすは紅き宝玉。一緒に戦おうぜ、俺の相棒! 〈【紅玉獣こうぎょくじゅう】カーバンクル〉を召喚!」


 巨大な紅玉が砕けて、毎度おなじみ俺の相棒が召喚される。


『キュップイ!』


 〈【紅玉獣】カーバンクル〉P500 ヒット1


「残念だが、今の僕に無限ダメージコンボは通用しない!」

「お前、まさか無限ループだけがカーバンクルの戦い方だと思ってるのか?」

「なんだと? だがそうなればパワー500の雑魚モンスター! 僕の〈デルタ・アーサー〉の敵じゃない!」

「普通ならそうだな」


 普通ならな。

 だからこれから君には講義をしてやろう。


「3枚で合体している〈デルタ・アーサー〉は非常に強力だ。3回破壊しないと倒せないからな」

「そうだ。これこそ無敵のモンスター」

「その無敵に弱点があるとすれば?」


 俺がそう言うと財前は「な、なんだと……」と驚いた顔をする。

 観覧席からも疑問の声が聞こえてくるな。

 まぁ確かに、正攻法だと倒すのは面倒極まるのが事実だ。

 財前の言う「無敵」というフレーズもあながち嘘ではない。


「財前、無敵のロボットを倒すのは簡単な事なんだよ」

「なん、だと」

「要するに倒れるまで破壊し続ければいいんだ。それこそ3回なんてケチな事は言わず……無限にな」


 そう言って俺は、1枚のカードを仮想モニターに投げ込んだ。


「魔法カード〈ルビー・イリュージョン〉を発動!」


 魔法効果で、カーバンクルの周囲に大量の紅玉が浮かび上がる。


「な、なんだそのカードは!?」

「このカードは、俺の場に〈カーバンクル〉が存在する場合にのみ発動できる。その効果で相手の場のモンスター全てを、パワー-無限にする!」

「パ、パワー-無限だとォ!?」


 カーバンクルが相手の場を指さすと、浮かんでいた紅玉から眩い光が放たれた。

 弱体化の光を真正面から浴びてしまう〈デルタ・アーサー〉。


「確かに〈デルタ・アーサー〉の除去耐性は厄介だ。でもそれはパワーが存在する場合に限る」

「……ハッ!?」


 どうやら財前も気づいたようだ。

 三体合体をした〈デルタ・アーサー〉のパワーをゼロにした場合、たとえ身代わり効果を使ったところでパワー0の状態は変わらない。

 つまり状況起因処理によって〈デルタ・アーサー〉は実質無限に破壊され続ける。


 〈【合体機神】デルタ・アーサー〉P18000→P0


 全てパワーを失った合体ロボは、全身が灰色に染まった後、粉々に崩れ去ってしまった。


「ぼ、僕の〈デルタ・アーサー〉が……」

「これでもう抵抗するカードはないな」


 そう、これで財前の場は0枚、手札も0枚である。

 ただ一つ問題があるとすれば。


「俺このターンは〈ルビー・イリュージョン〉のデメリットで〈カーバンクル〉でしか攻撃できないんだよな」

『キュップ~イ』

 

 そしてカーバンクルのヒットは1。

 ダメージは1点しか与えられない。


「ハハハ! なら次のターンで僕の勝ちだねェ!」


 露骨に財前が調子に乗っているな。

 だが安心しろ、お前に次を与えるつもりは無いからな。


「まずはこのカードだ。魔法カード〈トリックシード〉を発動」

「また魔法カードか」

「〈トリックシード〉は自分のデッキからカードを1枚選んで、それをデッキの1番上に置くカード」

「ハハハ! つまり次のターンに賭けようってわけか!」

「本当にそう思うか?」


 なら見せてやる。合法的積み込みの恐ろしさを。


「俺は墓地から〈コボルト・ライブラリアン〉の効果を発動!」

「墓地から発動するモンスター効果か」

「墓地のこのカードを除外して、デッキを上から3枚墓地に送る。その中に魔法カードがあれば、ただちに使用できる」

「ただのギャンブルカードじゃないか。お目当ての魔法が都合よく出ると思うのか?」

「出るんだなこれが、俺がさっき何してたか思い出してみ」

「……あっ!」


 そう、俺は〈トリックシード〉であらかじめ魔法カードを仕込んでおいたんだよ。

 そしてデッキのカードが3枚墓地に送られる。

 墓地に送られたのは〈ジャバウォック〉と〈スナイプ・ガルーダ〉……そして魔法カード〈圧政と革命〉だ。


「墓地に送られた魔法カード〈圧政と革命〉を発動! このカードは相手とのライフ差によって効果が変わる」


 相手のライフが自分より低ければ、モンスター1体のヒットを差分だけ下げる。

 逆に相手のライフが自分より高ければ、モンスター1体のヒットを差分だけ上げる。


「俺のライフはお前より5点少ない。よって魔法効果で〈カーバンクル〉のヒットを上げる!」

『キュップゥゥゥイ!』


 やる気満々な声を上げるカーバンクル。

 魔法効果でしっかりとパワーアップをした。


 〈【紅玉獣】カーバンクル〉ヒット1→6


「お、お前まさかこれを見越してダメージを!」

「大正解、だからまた言ってやるよ。ライフ調整にご協力ありがとうございました」

「て、天川ツルギィィィ!」

「とは言っても、まだリーサルには至っていない、だからこれを使おう」


 俺は1枚の魔法カードを仮想モニターに投げ込む。


「魔法カード〈デストロイポーション〉を発動。デッキを上から5枚墓地に送る」


 墓地に送られたカード:〈【幻蒼竜げんそうりゅう】カーバンクル・ドラゴン〉〈ケリュケイオン〉〈召喚爆撃〉〈リブート!〉〈フューチャースティール〉

 

 墓地に送られたモンスターカードの数だけライフを回復する魔法カードだ。

 今回墓地に送られたモンスターは2枚。

 よってライフを2点回復だ……まぁ1点増えれば十分だったんだけどね。


 ツルギ:ライフ1→3


 さぁ派手に最後のカードを使いますか!

 俺はコストで手札の〈ゼロバリア!〉を捨てて、ライフを1点支払う。


 ツルギ:ライフ3→2 手札1枚→0枚


「蒼き風と共に来たれ。アームドカード〈【王の幻槍げんそう】グングニル〉を顕現!」


 蒼い魔法陣を突き破り、俺の場に巨大な槍が顕現する。

 うんうん、いつ見てもカッコいいな。


「そっちが合体ロボなら、こっちは武装アームドで相手してやる」

「グヌヌ」

「俺は〈【王の幻槍】グングニル〉を〈【紅玉獣】カーバンクル〉に武装アームド!」


 グングニルは眩い光と共にサイズが変化し、カーバンクルの身体の3倍ほどの大きさになった。

 それをカーバンクルは軽々と手に持つ。


『キュゥゥゥップイ!』


 どこか勇ましい声を出すカーバンクル。

 だがまだ可愛さの方が勝っているな。


「アタックフェイズ! 〈カーバンクル〉で攻撃!」

「クソッ、ライフで受ける!」

『キュプイ!』


 カーバンクルが横に薙ぎ払った槍が、財前の身体を襲う。


 財前:ライフ7→1


「まだだ、僕のライフはまだ」

「この瞬間〈グングニル〉の武装時効果を発動! 1ターンに1度、デッキを上から8枚除外する事で〈カーバンクル〉を回復させる」

「な……なん、だと」

「これでトドメだ! いけ〈カーバンクル〉!」

『キュップーイ!』


 カーバンクルは勇ましく槍の先を財前に向ける。

 その財前は随分と動揺していた。


「バ、バカな……僕がまた、負けるだって!?」

「前よりは強くなってたぞ。また挑んでこいや」

「天川ァァァァァァァァァ!」


 叫ぶなうるさい。

 さぁ終わらせるぞ。


「次は必ず、僕がァ!」

『キュップイ!』


 台詞を全て言い終わる前に、カーバンクルの投擲した槍が財前に直撃した。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 財前:ライフ1→0

 ツルギ:WIN


 ファイト終了のブザーが鳴り、立体映像が消える。

 俺は召喚器を確認して、一応獲得ポイントを見た。


「……プラス『20000p』か」


 財前、お前めっちゃ頑張ったんだな。


「えっと、財前……もう一回ポイント稼ぎ頑張ってくれ」

「言われなくてもそうする! 覚えてろ!」


 そう言い残すと、財前は猛ダッシュでファイトステージを後にした。

 いや、本当にごめん。

 恨むなら試練のポイント総取りルールを恨んでくれ。


「……とりあえず、これはランチ代にでもするか」


 みんなでホテルランチにしよう。

 それがせめてもの贖罪(?)だろうと、俺は思うのだった。

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