第八十四話:合流とチーム分け

 糞ドレッド野郎を撃退した俺は、九頭竜くずりゅうさんを連れてみんなと合流した。

 うん……予想はしていたよ、その反応。

 らん以外全員、頭抱えているね。


天川てんかわ……その女子は?」

竜帝りゅうていの九頭竜さんだ」

「ツルギ……なんで一緒にいるのよ」

「色々あったんだよ」


 俺はとりあえず、ここまでの経緯を説明した。

 流石に九頭竜さんの生活力ZEROや友達ZEROの件は……濁したけど。

 幸い皆納得してくれたのか、拒絶の言葉は飛んでこなかった。


「なんというか、ツルギらしいわね」

「まぁそのなんだ、九頭竜さんも一緒でいいかな?」

「えぇ。ソラも良いでしょ?」

「……」


 あの、ソラさん?

 なんで無言のまま俺を見るんですか?

 なんでそのまま近づいてくるんですか?


「……ツルギくん?」

「は、はい」

「また女の子に手を出したんですか?」


 思わず俺は吹き出した。


「俺はいかがわしい事はしてません!」

「大丈夫ですか九頭竜さん? 口説かれてませんか? してませんか?」


 ソラさん? 妙な箇所が強調されてるんですが。

 九頭竜さんも困ってるから、加減してあげて。


「距離……なら、近くなったかもしれない」

「!?」


 九頭竜さん、お願いだから迂闊な発言はやめてください。

 ソラさん、ハイライトのない目で俺を見ないでください、怖いです。


「おい速水、助けろ」


 俺は小さな声で速水に救援を要請するが……


「天川……お前が悪い。刺されないように気をつけろ」


 速水ィィィ!

 アイ、アイは助けてくれるよな!?


「はい藍。ポッキーよ」

「わーい!」


 アイさぁぁぁぁぁぁん!?

 藍を餌付けするんじゃなくて、俺を助けて!


 えっ、一人で解決しなきゃなの?

 ……わかったよ、やってやるよ!


「ソラ、誤解なんだ。俺は変な事はしていない」

「……」

「俺はただ……ポンコツさんを見捨てられなかっただけなんだ」


 そう言った瞬間、後ろから「無礼者ォォォ!」という叫びと共に、シルドラに後頭部を蹴られた。

 すまない……だがこう言うしかなかったんだ。

 あと九頭竜さんがポンコツなのは事実だぞ。


「ツルギくん……表現が酷いです」

「ツルギ、女子にそれはダメよ」

「天川、お前……」

「ポッキーおいしい」


 ははーん、知ってるぞ。

 これは四面楚歌ってやつだな。

 泣くぞ、駄々っ子みたいに泣くぞ。


「九頭竜さん、大丈夫ですか? 六帝になれるような人がポンコツなんてありえないですよね」

「ボクは大丈夫……ちょっとドジしただけだから」


 ものは言いようだな九頭竜さん。

 ややこしくなるから突っ込まないけどさ。

 あと藍、お前さっきからポッキー食べる事しかしてないな。

 マスコットキャラかよ。


 それはそれとして、情報共有だ。


「とりあえず、調査報告するぞ」


 俺は売店街の物価を伝える。

 他の方も表示は似たようなものらしく、ポイントでの価格が出ていたらしい。

 とはいえ、価格の差は結構あるようだ。


 売店街は1p=1円だった。

 

 洋室ホテルの宿泊は、1泊8000pから。

 ホテル内のレストランは一食6000pから……高級だな。

 その他ホテル内施設もポイント消費が必須らしいが、まぁあまり関係ないだろう。

 

 ちなみに敷地内のトイレは全て無料。

 あとホテル内にある詰めファイトマシンの利用も無料。

 

 和室こと召臨寺しょうりんじは、1泊5000pだけど基本的に大部屋のみで、食事なし。

 飯は自分で調達しろって事らしいな。

 一応野宿用テントが1泊2000pで借りれるらしいけど……普通に考えて和室行きが正解だろうな。


 施設の敷地内にあるバーベキュー場は、1人あたり3時間1000pで利用できるらしい。

 お手頃価格で良かった。


 これで抑えておきたい施設と価格がわかった。

 あとは計算するだけ。

 俺はスマホの電卓で計算する。


「大雑把な計算だけど、1人あたり『19000p』くらい稼げばクリアできそうだな」

「和室に泊まって、自炊するのであれば妥当な数字だな」

「料理なら俺に任せろ」


 俺は速水に向かって、胸を張る。

 ……間違ってもアイと九頭竜さんにはさせないよ?


「さーて、そろそろ二時間の安全タイムも終わりそうだし」


 俺がそう言うと、全員の間で緊張感が走った。

 必要ポイントさえわかってしまえば、その後やる事は簡単だ。


「どうする天川。分散するか? それとも団体行動をするか?」

「団体が団体に狙われたら無駄に時間を消費する。かといってバラバラに動くとフォローをし難い」


 となれば答えは一つだ。


「2人ずつのチームで行動しようぜ」

「なるほど。ライバルがチームで動いてきても、それなら対処しやすいか」


 速水は理解が早くて助かる。

 俺はスマホに入れてあったチーム分けアプリを起動した。

 意外とこの世界では便利なアプリなんだよね。


 俺達6人はランダムにチーム分けされる。


「私はアイちゃんとですね」

「よろしくね、ソラ」


 まずはソラ&アイチーム。


「俺は天川とだな」

「背中任せるぜ、委員長」


 俺は速水とチームだ。


 ……となると残る2人がチームになるのだけど。


「え、えっと……よろしくね!」

「よろしく」


 藍と九頭竜さんがチームになった。

 なんというかその……世界の意思を感じるような組み合わせだな。

 特に藍は昨日、九頭竜さんへのリベンジを決意したばっかりだし。

 気まずい空気にはなるかもだけど……変なトラブルが起きなければ良いなぁ。

 既に会話が続かなさそうという事実からは、目を背けます。


「と、とりあえずコレでチーム分けが済んだし――」


 俺がそう言った瞬間、召喚器からブザーが鳴った。

 二時間が終了したんだ。

 今から挑まれるファイトは拒否できなくなる。


「……みんな、生き残るぞ」

「当然だ」

「はい!」


 速水とソラは既に気合い十分。


「楽しい試練になると良いわね」


 アイはこの後のファイト……というよりはポイント狩りに期待を高めている。

 顔を赤るのは、なんか違う気がするなぁ。


「一緒に頑張ろうね!」

「大丈夫。ボクは1人で十分だから」


 藍は頑張って明るく振る舞っているけど、九頭竜さんが塩対応している。

 これから仲良くなってくれると、今は信じよう。


 そうしていると、早速数人の生徒がこちらに近づいて来た。


「さぁてそれじゃあ……派手に行くぞ!」


 俺の言葉に合わせて、2人1組のチームは第二の試練本番までへと駆け出すのだった。

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