第五十四話:母、ボンバー
幸いにして今日は仕事が休みな母さん。
俺は電話で事情を話し、カードショップに来てもらう事にした。
ちなみに卯月は友達と遊びに行っている。
「ツルギくんのお母さんって、やっぱり強いんですか?」
「サモン歴は短いけど、デッキはかなり凶悪だぞ」
「そうなのか……しかしわざわざ来てもらうとは、少し申し訳ないな」
メガネの位置を正しながら、速水は少し申し訳なさそうにする。
だが別に問題はないだろう。母さんも練習相手を探してたし。
色んなデッキを相手にするのは、ファイターにとって大事な修行です。
ちなみに何故母さんが練習相手をわざわざ探しているのかというと……簡単にいえば、強すぎたんだ。
職場でうっかり無双し過ぎたらしい。
おかげで今は厄介な取引先とのファイトに駆り出される事多数なんだとか。
うん、正直俺もあのデッキは少しやりすぎたかなと思ってる。
そんなこんなで十数分後。
フリーファイトコーナーが空くと同時に、母さんがショップに来た。
「あら~速水君。こんにちは~」
「こんにちは。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ~。まだまだデッキに慣れてなくて、練習相手が欲しかったのよ~」
のほほんとしている母さんに対して、速水はあからさまに気合を入れている。
うん。多分俺が強いとか言ったせいだな。
俺達はフリーファイトコーナーに移動する。
「ツルギくんのお母さんって、どんなデッキなんでしょうか」
「ざっくり言えば、後攻1kill率がめっちゃ高いヤベーデッキ」
「それ本当に大丈夫なんですか!?」
「初手で防御カード握ってないと……まぁ終わるな」
前の世界では防御カードを握ってない奴が悪いとまで言わしめた代物だ。
この世界での凶悪さは……考えないようにしよう。
フリーファイトコーナーに到着した俺達。
俺とソラは観覧用のベンチに座り、速水と母さんはステージに立つ。
「今は色々便利になってるのね~」
のほほんとしている母さん。
とりあえず召喚器の操作は頑張って俺が覚えさせた。
速水も準備完了している。
「それでは、いきます!」
「速水君、よろしくね~」
二人は同時に召喚器を前に出した。
「「ターゲットロック!」」
召喚器が無線接続されたので、二人は初手5枚を引いた。
「「サモンファイト! レディー、ゴー!」」
仮想モニターに『速水
あっ、ちなみにやよいってのは母さんの名前な。
コンピューターが先攻後攻を決める。
「先攻は俺です。スタートフェイズ!」
あっ、速水が先攻か。
これはちと不味いかもな。
「メインフェイズ。俺は〈サイクロン・プテラ〉を召喚!」
速水の場に、風を纏ったプテラノドンが召喚される。
まずは様子見といったところか。
まぁその様子見が命取りにならなければ良いんだけど。
〈サイクロン・プテラ〉P6000 ヒット2
「俺はこれでターンエンドです」
速水:ライフ10 手札4枚
場:〈サイクロン・プテラ〉
とりあえず派手に手札は使わないか。
場にもそこそこパワーの高めなモンスターを置いてある。
「速水くん、いい滑り出しですね」
「普通なら、な」
これはマジで速水の手札次第では一瞬で終わるぞ。
「わたしのターンね~。スタートフェイズ。ドローフェイズ」
母さんはのんびりとターンを始めている。
やよい:手札5枚→6枚
ドローしたカードと手札を確認している母さん。
アレ回し方は結構単調だから、悩む要素無い気がするんだけどなぁ。
「うん。じゃあこうしましょう。メインフェイズ」
母さんはカードを1枚選んで、仮想モニターに投げ込んだ。
「わたしは〈タイガーボンバー〉ちゃんを召喚~」
母さんの場にデフォルメされた虎型モンスターが召喚される。
ただしその背中には爆弾が背負われているがな。
〈タイガーボンバー〉P5000 ヒット1
「あれがツルギくんのお母さんが使うモンスター……見た目は普通ですね」
「見た目じゃないんだ。効果が強いんだよ……母さんの〈
「次は~この子。〈パグボンバー〉ちゃんを召喚~」
次に召喚されたのはデフォルメされたパグ型のモンスター。
やっぱり爆弾を背負っている。
〈パグボンバー〉P1000 ヒット1
「3体目はこの子。手札を1枚捨てて~〈ヒポポボンバー〉ちゃんを召喚~」
やよい:手札3枚→2枚
3体目に召喚されたのは、カバ型のモンスター。
やっぱり爆弾持ってる。
〈ヒポポボンバー〉P10000 ヒット2
「む、召喚コストがあるだけあって、パワーが高いな」
ヒポポボンバーのパワーを見て警戒する速水。
だが気をつけろよ。〈炎獣〉の真価はパワーじゃないからな。
「それじゃあ。アタックフェイズに入るわね~」
くるぞ……母さんの猛攻、ボンバーな時間が。
「まずは〈タイガーボンバー〉ちゃんで攻撃」
「その攻撃は〈サイクロン・プテラ〉でブロックです!」
爆弾を背負いながら突進するタイガーボンバー。
それを翼で切り裂くサイクロン・プテラ。
タイガーボンバーはあっけなく爆散してしまった。
「速水くん、まずは1体倒せましたね」
「あぁ~、早速やっちまったな」
「えっ?」
「見てれば分かる」
破壊されたタイガーボンバーだが、背負っていた爆弾だけは速水の方へ転がっていった。
「なに、爆弾が!?」
「〈タイガーボンバー〉ちゃんが破壊された時の効果で1枚ドロー」
やよい:手札2枚→3枚
「そしてもう一つの破壊時効果【
「【爆炎】だと!?」
「速水君に2点のダメージを与えるわね~」
爆弾が炸裂し、速水のライフが削られる。
速水:ライフ10→8
これが母さんの使う【炎獣】デッキの本領。
凄まじい勢いでライフを削っていくビートバーンだ。
「ブロックしたのに、速水くんのライフが削られた!?」
「まだ驚くには早いぞソラ。あと2体モンスターがいる」
「次は〈パグボンバー〉ちゃんで攻撃~」
「どうやら迂闊にライフを削るわけにはいかないらしい。俺は魔法カード〈デストロイウォール〉を発動!」
速水の前に半透明のバリアが展開される。
とりあえず防御カードは持っていたか。
「〈デストロイウォール〉の効果! 相手の場のモンスターが持つヒットの合計分自分のデッキを上から墓地に送る!」
母さんの場に存在するモンスターのヒット合計は3。
速水はデッキを上から3枚墓地に送った。
墓地に送られたカード:〈グランドエレメント〉〈アースエレメント〉〈ウォーター・プレシオン〉
「このターンの間、俺は戦闘によってはダメージを受けない! その攻撃はライフで受けます!」
パグボンバーは突進するが、半透明のバリアにぶつかってしまう。
速水のライフは守られた。
ただし、戦闘ダメージは、だけどな。
「この瞬間〈パグボンバー〉ちゃんの効果発動~。攻撃終了と同時に破壊されまーす」
「なに!? ということは、まさか」
「〈パグボンバー〉ちゃんを破壊して、【爆炎:2】を発動~。そーれボンバー!」
自爆するパグボンバー。
その爆弾だけが速水の足元に転がって、爆発した。
「ぐあっ!」
速水:ライフ8→6
「あれ? なんで速水くんのライフが減ったんですか?」
「〈デストロイウォール〉で防げるのは戦闘によるダメージだけだ。効果ダメージは防げないんだよ」
さぁて、これは速水ピンチだぞ。
母さんの場にはまだ、ヒポポボンバーが残っている。
「最後に~〈ヒポポボンバー〉ちゃんで攻撃~」
「くっ、ライフで受けます」
ヒポポボンバーが速水に突進するが、やはりバリアによって阻まれる。
だが母さんはこれで正解なんだ。
ヒポポボンバーが攻撃した事に意味がある。
「〈ヒポポボンバー〉ちゃんも攻撃終了時に自爆しま〜す」
「まさか……そのモンスターも【爆炎】を」
「せいか~い。〈ヒポポボンバー〉ちゃんが破壊されたから~【爆炎:3】を発動よ~」
「3だと!?」
ヒポポボンバーの置き土産爆弾が、速水にぶつかり爆発する。
「ぐあっ!?」
速水:ライフ6→3
後攻1ターン目の出来事。
その僅かな時間でライフを7点も失ってしまった速水。
周りのファイターも驚いた表情で、こちらを見ている。
「あらぁ、もう攻撃はできないわね~。わたしはこれでターンエンドよ」
やよい:ライフ10 手札3枚
場:なし
おそらく想像以上の攻撃だったのだろう。
ソラと速水も驚愕の表情を浮かべている。
「ツルギくんのお母さんって、すごく強いんですね」
「あぁ。今日は手札よくないみたいだけどな」
「あれでですか!?」
「デッキの切り札が手札にあったら、このターンで速水が負けてただろうな」
俺がそう言うと、ソラは口をあんぐりと開けていた。
なんか可愛いな。
さぁて速水。半端な戦い方じゃあ勝てないぞ。
どうやって攻略する?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます