第二十話:【天翼神】エオストーレ

「スタートフェイズ。ドローフェイズ」


 ソラ:手札3枚→4枚


「メインフェイズ。魔法カード〈エンジェルドロー〉を発動します。手札から系統:〈聖天使〉を持つモンスター〈キュアピッド〉を捨てて、カードを2枚ドローです」


 ソラ:手札2枚→4枚


 優秀な手札交換カードだ。

 これは赤翼さん、本気でいってるな。


「そして私は〈ジャスティスエンジェル〉を召喚! 召喚コストで手札1枚とライフ1点を払います」


 赤翼さんの場に降臨するのは、大槍を持った天使。

 コストはあるが、優秀な〈聖天使〉のレアカードだ。


 〈ジャスティスエンジェル〉 P5000 ヒット2

 ソラ:ライフ7→6 手札4枚→3枚


「〈ジャスティスエンジェル〉の効果で、私の場のモンスターは全てパワー+2000されます」


 〈キュアピッド〉P9000→11000

 〈シールドエンジェル〉P7000→9000

 〈ジャスティスエンジェル〉P5000→7000


「アタックフェイズ。〈ジャスティスエンジェル〉で攻撃です」


 速水のモンスターは3体全て疲労状態。

 これではブロックできないが……


「魔法カード〈ディフェンスシフト〉を発動。俺の場のモンスターを全て回復させる」


 やはり握っていたか、防御魔法。

 魔法カードの効果で、速水のモンスターは全て起き上がる。


「〈ダイヤモンド・パキケファロ〉でブロック」


 ジャスティスエンジェルの大槍を、金剛石の頭で受け止めるパキケファロ。

 本来なら戦闘破壊されるが、パキケファロは自身の効果で破壊を逃れた。


「〈ジャスティスエンジェル〉の【天罰】を発揮。私の場の系統:〈聖天使〉を持つモンスター全てに【2回攻撃】を与えます。〈ジャスティスエンジェル〉でもう一度攻撃」

「〈ウォーター・プレシオン〉でブロックだ」


 ジャスティスエンジェルの大槍が、ウォーター・プレシオンを貫き、破壊する。


「続いて〈キュアピッド〉で攻撃です」

「その攻撃はライフで受けよう」


 速水:ライフ5→4


「〈キュアピッド〉で2回攻撃」

「ライフだ」


 速水:ライフ4→3


「今度は〈シールドエンジェル〉で攻撃です!」

「魔法カード〈バブルエレメント〉を発動。その攻撃を無効化する」


 無数の泡の壁が現れて、シールドエンジェルの攻撃を無効化する。

 ちなみにこっちが〈バブルエレメント〉のメイン効果だ。


「でもまだ2回攻撃が残ってます。もう一度お願い〈シールドエンジェル〉」

「〈タイフーン・ブラキオ〉でブロックだ」


 パワーは9000対10000。

 このままではシールドエンジェルが返り討ちにあってしまうが。


「今です! 魔法カード〈エンジェルオーラ〉を発動。私の場の〈聖天使〉のパワーを+2000します。更に【天罰】の効果で+3000」


 〈シールドエンジェル〉P9000→14000


 大幅な強化が入ったシールドエンジェル。これなら戦闘で勝てる。

 シールドエンジェルは手にした大盾で、タイフーン・ブラキオを押しつぶした。


「うん、良い感じです。私はエンドフェイズに入って〈シールドエンジェル〉の効果を」

「その前に、俺の魔法カードを発動させてもらおう。手札から〈エレメンタルポーション〉を発動する」


 あっちゃあ、これは赤翼さん不味いかもしれないな。


「〈エレメンタルポーション〉は自分の墓地から系統:〈元素〉を持つカードを4枚デッキに戻すことで、ライフを4点回復する魔法カード」

「4点回復。それじゃあ!」


 速水の墓地から4枚のカードが戻り、ライフを増やす。


 速水:ライフ3→7


「ライフを上回られた」

「これで赤翼は【天罰】を使えなくなった。よって〈シールドエンジェル〉の効果でモンスターを回復させることもできない」


 これは本当にピンチだな。

 聖天使デッキは一度ライフ差をひっくり返されると、立ち直るのに苦労するんだ。


「うぅ、ターンエンドです」


 ソラ:ライフ6 手札2枚

 場:〈キュアピッド〉〈シールドエンジェル〉〈ジャスティスエンジェル〉


「俺のターンだ。スタートフェイズ。この瞬間〈フューチャードロー〉の効果が発動! 俺はカードを2枚ドローする」


 速水:手札0枚→2枚


「そしてドローフェイズ」


 速水:手札2枚→3枚


 ドローしたカードを速水が確認する。

 微かに口角が上がったのを、俺は見逃さなかった。

 これは来るぞ、赤翼さん。


「赤翼。このターンで決着をつけようか」

「引いたんですね、キーカードを」

「その通りだ。召喚コストでライフ1点を払い、俺は手札の魔法カード〈バブルエレメント〉と〈ヴォルカニックエレメント〉を【合成】!」


 速水:ライフ7→6


 大量の水と、凄まじい炎が速水の場で合成されていく。

 火と水の合成。これは来るぞ、速水のエースであるレアカードが。


「火と水の力を受け継いで、君臨せよ俺のエース! 〈スチーム・レックス〉を合成召喚だ!」

『ギャオォォォォォォォォォォォォォォォォン』


 全身から蒸気を噴き出している、凄まじき巨体の恐竜が、速水の場に降臨した。


〈スチーム・レックス〉P9000 ヒット3


「これが、速水くんのエース」

「そうだ。生半可なカードでは、こいつは倒せないぞ」


 速水の言う通りだった。

 スチーム・レックスはカード効果では破壊されないという特徴を持っている。

 赤翼さんはどうやってコイツを攻略するのか。


「アタックフェイズ。まずは〈ダイヤモンド・パキケファロ〉で攻撃だ」

「それは……ライフで受けます」


 ソラ:ライフ6→4


「続けて、〈スチーム・レックス〉で攻撃!」

「その攻撃は防がせてもらいます。魔法カード〈リブート!〉発動。〈キュアピッド〉を回復させて、ブロックします」


 スチーム・レックスの牙が、キュアピッドの身体を貫き、爆散させる。

 普通に見れば攻撃を防いだように見えるが……スチーム・レックスの場合は違う。


「〈スチーム・レックス〉は【貫通】を持っている。ヒット数分、3点のダメージを受けてもらうぞ」

「そんな。キャア!」


 スチーム・レックスの攻撃が、赤翼さんを襲う。


 ソラ:ライフ4→1


 ライフを大きく削られた赤翼さん。

 速水のモンスターは全て攻撃を終えたが、アイツはこれで終わらせる男ではない。


「この瞬間、魔法カード〈アースエレメント〉を発動! 俺の場の系統:〈元素〉を持つモンスター〈スチーム・レックス〉を回復させ、そのパワーを+3000する」

「回復魔法。やっぱり持ってたんですね」

「これで終わりだ。行け〈スチーム・レックス〉!」

『ギャオォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!』


 けたたましい咆哮を上げて赤翼さんに襲い掛かるスチーム・レックス。

 この攻撃を受ければ、赤翼さんの負けだ。


「今です! 魔法カード〈痛み分けの反射鏡はんしゃきょう〉を発動!」

「なに!?」

「〈痛み分けの反射鏡〉は、私が受ける戦闘ダメージを一度だけ相手に反射させます。その代わりに、相手にカードを1枚ドローさせてしまいますが」


 赤翼さん、良い発動タイミングだ。

 これなら確実に3点のダメージを、速水に反射させられる。


 速水:ライフ6→3 手札0枚→1枚


 間一髪で生き残った赤翼さん。

 その光景に体育館にいる生徒たちは一気に沸き上がった。

 そうそう、カードゲームはこういう瞬間が盛り上がるよね。


「倒し損ねたか」

「簡単には負けられません。約束したんです、天川くんと決勝で戦うって」

「俺もあいつとファイトをしたいんだがな」


 速水は今さっきドローした1枚の手札に視線を落とす。


「……エンドフェイズ。魔法カード〈ディフェンスシフト〉を発動。俺の場のモンスターを全て回復させて、ターンエンドだ」


 速水:ライフ3 手札0枚

 場:〈ダイヤモンド・パキケファロ〉〈スチーム・レックス〉


 さて、赤翼さんはなんとか生き残った訳だけど。

 速水の場にはブロッカーが2体。

 赤翼さんの場には〈ジャスティスエンジェル〉と〈シールドエンジェル〉。

 しかもライフ量のせいで【天罰】は使えない。

 手札はお互いに0枚。

 このドローフェイズで全てが決まる。


「私のターン。スタートフェイズ……ドローフェイズ!」


 ソラ:手札0枚→1枚


 さぁ、何を引いた!


「きた! メインフェイズ。私は魔法カード〈逆転の一手!〉を発動します」

「そのカードは天川が使っていた」


 噓だろ、確かにデッキには入れてたけど1枚だけの保険だぞ。

 よく引き当てられたな。


「〈逆転の一手!〉は、自分のライフが4以下の時、手札が3枚になるようにカードをドローできます」


 ソラ:手札0枚→3枚


 これで手札が増えた。

 後は逆転のカードを引いたかどうかだけど。


「……ありがとうございます。きてくれて」


 赤翼さんが優しく微笑んでいる。

 そうやら引き当てたみたいだ。


「まずは魔法カード〈スーパーポーション〉を発動。私の場の〈シールドエンジェル〉を破壊して、ライフを5点回復します」

「ここで回復に成功したか!」


 シールドエンジェルの犠牲で、赤翼さんのライフが増える。


 ソラ:ライフ1→6


「これで【天罰】の効果を使えます」

「だが〈ジャスティスエンジェル〉だけでは俺のライフを削りきれないぞ」

「大丈夫です。一番大切なカードが、私を助けてくれますから」


 赤翼さんは自分の手札を見る。

 そしてその中から1枚のカードを選び、仮想モニターに投げ込んだ。


「私は……系統:〈聖天使〉を持つモンスター。〈ジャスティスエンジェル〉を進化させます!」


 まばゆい光と共に、ジャスティスエンジェルが魔法陣に飲み込まれていく。

 来るか、赤翼さんの切り札!


「天空の光。今翼と交わりて、世界を癒す輝きとなる! 最後まで一緒に戦ってください。〈【天翼神てんよくしん】エオストーレ〉を進化召喚!」


 光臨したのは、ロップイヤーのウサ耳が生えた大天使。

 それは、あまりにも美しい光の化身だった。

 体育館から一瞬音が消える。それ程に神々しい見た目だった。


 〈【天翼神】エオストーレ〉P11000 ヒット3


 あぁ、もう……テンション上がるなおい!


「キッタァァァ! SRカード!」


 俺は思わず声を上げてしまう。

 だけどそれは、体育館にいる生徒も同じだった。


「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」


 体育館が熱狂の渦に飲み込まれる。

 やはりSRカードの登場は盛り上がるものなんだ。


「それが、赤翼の切り札か」

「はい。天川くんが助けてくれた、私の一番大切なカードです」

「だが良かったのか? 〈ジャスティスエンジェル〉を素材にしては、二回攻撃ができないぞ」

「大丈夫です。だって、一撃で終わらせますから」

「そうか……なら来い!」

「はい! アタックフェイズ。 〈【天翼神】エオストーレ〉で攻撃!」


 エオストーレが背中から生えた巨大な翼を羽ばたかせる。

 俺は知っているぞ、あのカードの効果を。

 赤羽さんの狙いを!


「アタック時に〈エオストーレ〉の【天罰】を発動!」


 エオストーレの手の平に、強い光が集まっていく。


「〈エオストーレ〉の攻撃時に、私のライフが相手より多ければ、相手は自身のモンスターを2体選んでデッキの下に戻さなければいけません」

「だが〈スチーム・レックス〉は効果では破壊されな――ッ!」

「これは破壊ではありません。だから〈エオストーレ〉の効果も有効です」


 速水の場にはモンスターが2体。

 実質的な全体除去だ。

 エオストーレは手の平に集めた光を、相手モンスターにぶつける。


「くっ」


 速水の場から、スチーム・レックスとダイヤモンド・パキケファロが消滅する。

 これで速水を守るモンスターはいなくなった!


「手札が0枚なら、もう怖くはありません! お願い〈エオストーレ〉!」


 エオストーレは翼を羽ばたかせ、速水に光のエネルギーをぶつけた。


「……俺の負けか」


 速水:ライフ3→0


 ソラ:WIN

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