第十九話:ソラVS速水
予選も無事に終わり、昼食を挟んでから午後を迎える。
本戦へ出場する生徒16名は、控室でファイトの準備。
無論、俺は準備完了している。
ちなみに予選敗退した生徒の観覧は自由だ。
「しっかし体育館のステージでサモンファイトする日が来るとはなぁ」
本当に人生って何があるかわからん。
異世界転移とかするし。年齢逆行とかするし。
まぁそれはさておき。ようやくトーナメント本戦だ。
流石に予選よりは骨のある奴が相手してくれるだろう。
これは気合が入るぜ~。
……なんて思っていた時が、自分にもありました。
以下俺の試合ダイジェスト。
「ヒットを100まで上げた〈アサルト・ユニコーン〉で攻撃!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
モブ生徒:ライフ10→0
「〈ファブニール〉でモンスターを破壊。これで防御できるモンスターはいない! 〈ファブニール〉で攻撃だ!」
「きゃあぁぁぁぁ!」
モブ女子生徒:ライフ3→0
そして迎えた準決勝では……
「魔法カード〈召喚爆撃!〉を発動」
「投了です」
ツルギ:WIN
このザマである。
なんだよぉ! 想像以上に骨が無いじゃないか!
てかこれでようやく理解したわ。この学校の生徒、正直弱い。
そりゃ東校の奴らに搾取されますわ。
てか準決勝の相手! 俺の先攻1ターン目で投了するなよ!
「なんか……味気ねぇ……」
もっと強い奴と戦いたい。
と、ここでふと思い出す。
そういえば速水と赤翼さんはどうなったんだ?
俺は体育館に張り出されているトーナメント票を見る。
「二人とは別ブロックだったけど……あっ」
トーナメント表をよく見れば、二人とも順調に勝ち進んでいた。
流石は俺が仕込んだファイター。
だが今はそんな事はどうでもいい。
「次の準決勝。戦うのは速水と赤翼さんか」
これは中々。見ごたえのあるファイトになりそうだ。
俺は二人のファイトを観戦するために、控室を後にした。
「おー、流石に準決勝ともなると観客が多いな」
体育館のステージ前には、大勢の生徒が集まっていた。
熱気がすごいけど、これが全員サモンファイトの観戦者だと思うと感慨深いものがある。
前の世界でもこれくらい人気があったら良かったのにな~。
「それでは只今より、準決勝第二試合を行います! 選手の方はステージに上がってください」
放送部の人がアナウンスする。ようやく始まるようだ。
「上手側、二年A組。
速水委員長がステージ上に姿を見せる。
堂々とした様子で、緊張の欠片も感じられない。
てか速水の下の名前、始めて知ったかも。
「続いて下手側、二年A組。
続けて赤翼さんがステージ上に姿を現す。
の、だが……めっちゃプルプルしてるな。誰がどう見ても緊張してる。
流石に大勢に見られながらのファイトは不慣れか。
「赤翼さん、大丈夫かな?」
少し心配になる。
だけど信じよう。あれだけ頑張ってきたんだ、
きっと彼女は乗り越えてくれる。
「まぁ問題があるとすれば、相手はあの速水だという事だな」
速水も俺がサモンを仕込んだ人間だ。
一筋縄ではいかないファイターに仕上げてある。
赤翼さん、これは強敵だぞ。
「大丈夫か、赤翼」
「は、ひゃい! 大丈夫です」
「流石にこれは真剣勝負だ。下手な情はかけない」
ステージ上の速水はそう言うと、召喚器を手に取った。
「ターゲットロック」
二人の召喚器が無線接続される。
「赤翼の事情は重々承知している。だが俺にも負けられない理由があるんだ……本気でいかせてもらうぞ」
「ッ! はい」
速水の闘志にあてられたのか、赤翼さんの表情が引き締まる。
二人は召喚器から、初期手札5枚をドローした。
さぁ、始まるぞ。
「それでは準決勝第二試合、始めてください」
「「サモンファイト! レディー、ゴー!」」
速水:ライフ10 手札5枚
ソラ:ライフ10 手札5枚
「先攻は俺だ。スタートフェイズ」
まずは速水の番か。
「メインフェイズ。〈ダイヤモンド・パキケファロ〉を召喚!」
速水の場に、金剛石の頭を持つ恐竜が召喚された。
〈ダイヤモンド・パキケファロ〉 P6000 ヒット2
「更に魔法カード〈フューチャードロー〉を発動。ライフを2点払い、俺は2ターン後のスタートフェイズにカードをドローする」
おっ、俺も愛用しているドローカードだ。
あれ便利なんだよな~。
速水:ライフ10→8
「俺はこれでターンエンドだ」
先攻1ターン目は攻撃ができない。
それを考慮すれば、速水らしい手堅い初動だろう。
速水:ライフ8 手札3枚
場:〈ダイヤモンド・パキケファロ〉
「わ、私のターン。スタートフェイズ。ドローフェイズ」
ソラ:手札5枚→6枚
「メインフェイズ。〈キュアピッド〉を召喚します!」
赤翼さんの場にいつもの可愛らしい天使が召喚される。
相変わらず安定して動ける人だなぁ。
〈キュアピッド〉P3000 ヒット1
「〈キュアピッド〉の召喚時効果で、ライフを2点回復します。更に【天罰】発動! 〈キュアピッド〉のパワーを+6000します」
ソラ:ライフ10→12
〈キュアピッド〉P3000→9000
「そして〈シールドエンジェル〉を召喚」
聖天使デッキの防御モンスター。二つの大盾を持った天使〈シールドエンジェル〉が召喚される。
〈シールドエンジェル〉P7000 ヒット2
「アタックフェイズ。〈シールドエンジェル〉で攻撃します!」
「〈ダイヤモンド・パキケファロ〉でブロックだ」
シールドエンジェルの大盾と、ダイヤモンド・パキケファロの頭がぶつかり合う。
本来ならパワーの勝るシールドエンジェルが勝利する。
だがサモンはそこまで簡単じゃない。
「〈ダイヤモンド・パキケファロ〉は1ターンに1度だけ、戦闘では破壊されない」
破壊を免れて、場に残るパキケファロ。
優秀なブロッカーだ。
「でもこれでブロッカーはいません。〈キュアピッド〉で攻撃です!」
「流石にそれは、ライフで受けよう」
キュアピッドの矢が、速水の身体を貫く。
速水:ライフ8→7
「エンドフェイズ。〈シールドエンジェル〉の【天罰】で、私の場のモンスターは全て回復します。ターンエンド」
ソラ:ライフ12 手札3枚
場:〈キュアピッド〉〈シールドエンジェル〉
まずはお互い小手調べって感じだな。
だけど赤翼さん、速水のデッキはここからが本領だぞ。
「俺のターンか。スタートフェイズ。ドローフェイズ」
速水;手札3枚→4枚
「メインフェイズ。赤翼、ここからが俺のデッキの真の戦い方だ」
「きますか!」
「見ろ俺の〈元素〉デッキの力を。俺は手札の魔法カード〈ウォーターエレメント〉と〈バブルエレメント〉を【合成】!」
出たな、速水の【合成】戦術。
「【合成】は系統:〈元素〉を持つ魔法カードだけが有する専用能力。その効果で俺は、二つの魔法カードを合成し、〈元素〉モンスターをデッキから呼び出す!」
「デッキからモンスターを召喚するんですか!?」
「そうだ。俺は二枚の魔法カードを合成して、デッキから〈ウォーター・プレシオン〉を合成召喚!」
大量の水が渦を巻いて、速水の場で一体の恐竜を形作っていく。
〈ウォーター・プレシオン〉P3000 ヒット1
速水の出した〈ウォーター・プレシオン〉は、普通に召喚してはパワーの低い弱小モンスターだ。
だけど【合成】で召喚されたなら話は変わる。
「〈ウォーター・プレシオン〉の召喚時効果発動! 俺はデッキからカードを2枚ドローする」
速水:手札2枚→4枚
「更に【合成】で召喚された〈ウォーター・プレシオン〉が場に存在する限り、俺の系統:〈元素〉を持つモンスターは全て、パワー+2000される」
〈ウォーター・プレシオン〉P3000→5000
上手いな。〈元素〉デッキ特有の手札消費の激しさを上手くカバーしている。
そして当然、ここで終わるような速水ではない。
「俺は魔法カード〈元素再生〉を発動。ライフを2点払い、墓地から系統:〈元素〉を持つカードを2枚まで手札に加える。俺は〈ウォーターエレメント〉と〈バブルエレメント〉を手札に加える」
「〈元素〉の魔法カードが2枚揃った。ということは」
「そうだ、再び【合成】だ! 俺は手札の〈ウォーターエレメント〉と〈エアロエレメント〉を【合成】!」
水と風が合成され、速水の場には台風が生まれる。
その台風は変質して、一体の首長竜を生み出した。
「合成召喚! 現れろ〈タイフーン・ブラキオ〉」
〈タイフーン・ブラキオ〉P10000 ヒット2
「パワー10000の大型モンスター!?」
「〈タイフーン・ブラキオ〉は【合成】でしか召喚できない。だがその分、効果は強力だ。〈タイフーン・ブラキオ〉の召喚時効果発動! 相手モンスターを全て疲労させる!」
タイフーン・ブラキオの起こした風により、赤翼さんのモンスターは全て疲労状態となってしまった。
これでは攻撃をブロックできない。
「アタックフェイズだ。まずは〈ウォーター・プレシオン〉で攻撃」
「……ライフで受けます」
ソラ:ライフ12→11
「続けて〈ダイヤモンド・パキケファロ〉で攻撃」
「ライフです」
ソラ:ライフ11→9
「続け! 〈タイフーン・ブラキオ〉」
「ライフで受けます」
ソラ:ライフ9→7
防御札は手札に無かったか。
1ターンで、赤翼さんのライフは大きく削られてしまった。
「言った筈だ、本気でいかせてもらうと。俺はこれでターンエンドだ」
速水:ライフ5 手札3枚 (内一枚〈バブルエレメント〉)
場:〈ダイヤモンド・パキケファロ〉〈ウォーター・プレシオン〉〈タイフーン・ブラキオ〉
ライフは赤翼さんの方が上。
だけど正直盤面は厳しいところがある。速水にはまだ手札もあるし。
「さぁ、どうする赤翼」
「……フフ」
「赤翼?」
猛攻を受けた赤翼さんは、ステージ上で小さく笑っていた。
「ごめんなさい。なんだか楽しくなってきたんです」
「楽しい?」
「はい。きっと、天川くんもこんな気持ちだったんでしょうね」
緊張のあるファイトの最中。赤翼さんは確かに笑っていた。
そして、サモンファイトを楽しんでいた。
「やっと見つかった気がします。一番大事なこと」
「そうか」
「私、このカード達とサモンをしたいです。だから、絶対に負けたくありません」
その表情に、もはや迷いは無かった。
もう大丈夫だ。赤翼さんは自分の心に勝ち始めたんだ。
「そう簡単に俺を倒せると思うなよ」
「勝ち方は、ドローしてから考えます。とにかく今はいっぱい楽しんで、そして速水くんに勝ちます」
「なら俺も、全力で相手させてもらおう」
「はい! 私のターン!」
赤翼さんの反撃が始まった。
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