第7話 喪失
「付けました」
「オッケー。じゃあベッドに仰向けに寝てね」
言われるがまま
「タオルは取ってね。邪魔だから」
「え、取るんですか……」
予想はしていたがやっぱりか。高校の体育で水泳の授業があり、まさかその際に上まである競泳水着を着ていたわけではなかったので、異性に裸の上半身を見られた経験はあったし、その際に恥ずかしさを覚えたことはなかった。
しかしながら、ラブホテルの一室で、一対一で向かい合っている女にいざタオルを取って貞操帯一丁の体を晒せと言われることに抵抗を感じない者は存在しないだろう。
俺がまごついていると、巫女がにわかに近づいてきてベッドに横たわる俺の横に膝をついた。
「ここまできてなに
これは別にエロいことではないのだ。ラブホテルという場所で、巫女服女と面と向かって見えているから妄想があらぬ方向へと
「あっちょっ」と言う間もなく、巫女は俺が胸の真ん中に作ったタオルの結び目に手をかけていた。
手が触れる。初めて巫女に触れた。
指はすらりと細く、俺より短いだろう指先は長く見え、きれいだった。爪の形のことなど考えたことはなかったが、こう言う爪を整っていると言うんだろう。
シャワーを浴びたのと、何処より湧き上がる興奮に
異性に触れられるのなどいつ以来だろう。
固く縛った結び目を、巫女は力みを感じない柔らかな指先の動きで器用にほどく。
「腰あげて」と言われるままにベッドと背中の間に空間を作ると、俺を守っていたバスタオルがスルリと抜き取られ──俺は貞操帯一丁でベッドに投げ出された童貞になっていた。
貞操帯の中身は──痛いほどに……。
「準備完了!」
巫女は俺のバスタオルを
巫女はあろうことか膝をついて俺の腹の辺りにまたがってきた! 音にならない
巫女が手に持つ
貞操帯が壊れるんじゃないかという
もしかしてこの貞操帯、俺の童貞を守るものではなく、巫女の身を守るためのものではあるまいか。
「じゃあ始めるね。リラックスして、力抜いて。あと、目を閉じて」
リラックスして、力抜いて、と言われてもどうしようもない部分があるんですが……。
(ええい!)俺は雑念を振り払い目を閉じて自分を落ち着かせる。
落ち着け、リラックスだ……。
俺はなんとなく海の底をイメージする。砂地の水底には海水を透過した弱々しい太陽光しか届かない。魚もおらず
「集中して!」
そう言う巫女に、こんな状態で集中できるか!、と言い返しそうになった一言を飲み込む。
俺、にやけてたか?
雑念を振り払え……。俺は海底のイメージをもっと深化することにした。
ここは無の世界だ……。
俺はそのまま意識を失った。
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