不透明な戯言

まに丸

第1話 「ヒロコが殴った」

”ヒロコが殴った、サチコはタカシを強く抱きしめた。”


そんなフレーズが頭から離れられない。

しかし、頭に浮かぶフレーズやアイディアは金太郎飴のようにニュルっと出てきてスパッと出てくる。


”トシコは毒を盛り、ユウスケは床に寝ながらこちらを見ている。”


トシコ?ユウスケ? そもそもヒロコとは誰だ?

自分の人生で出会った登場人物には当てはまらない不思議な言葉。


その疑問とは関係なく登場人物の設定が自動的に構築され、なぜかそのことすらあまり気にしなかった。


”ヒロコは殴る人、サチコは抱きしめる人、タカシは昔の人、トシコはただの老婆、ユウスケは人間だった”


このようなイメージがポンポンと出てくるのは才能ではないだろうか?僕は少し変な自身を持ち始める。しかし、さっきから浮かぶ設定やらフレーズ等は考えて練りだしたものではない、、、別の人が考えてそれをただただ聞いているかのような感覚であった。


”ヒロコが殴った”


このフレーズだけがパワーワードである。無意識の中ですら口ずさんでしまう。

第三者にこの話をしたらどう思うだろうか?ヒロコって誰?なんで殴ったの?誰を殴ったの?

おそらくこんなことを言われるに違いない。ただ、殴った行為のみしか僕にもわからず、他の登場人物とは何の脈略もない。ただ殴ったことだけがわかっている。


”ヒロコが殴った”


頭にイメージが流れ込んでくる。これも不思議なもので自分からイメージしようってわけではない。勝手に再生されてしまった感じだ。いうなれば目が覚めたら映画館にいてこれから映画を見るという夢みたいなものだ。

ただ、少し違う。いやだいぶ違う。


”ヒロコが殴った”


「しつこい」と思ってしまった。しかし、イメージしていたものと違った。

いや、イメージが流れ込んできた。暗い部屋、テーブル、皿、台所・・・男性と女性のシルエット。


女性がヒロコと想定し、男性は?ユウスケかタカシだが。。。

まさか、ヒロコが殴った理由は実は結婚していて、タカシがサチコと不倫していた。

それがヒロコにバレてタカシを殴ったんじゃないか?

誰でも思う内容ではある、現に考えてもなく惰性で作っているものではこの程度のレベルであろう。


”ヒロコが殴った”


しかし、疑問が一つある。それはこの物語自体は惰性で作っていない。

だからと言って心血注いだ物語とも違う。ただただイメージを流されているだけ

作者は僕ではない。少し怖くなった僕は周りを見渡す。

誰もいない、そう誰もいないのだ。安堵したのも束の間、イメージが流れ込む、、、


”ヒロコが殴った”


いや、冷たい声でそう聞こえた気がする。ナレーションのような口調で、、、


”ヒロコが殴った”、”ヒロコが殴った”、”ヒロコが殴った”


イメージが流れ込む、床に這いつくばりながら逃げる男性。

女性はその男性にゆっくりと歩み寄る。


女性のシルエットの右手が異様に長い、いや、なにか持っている。

バット?いや違う、別のものだ。物騒なものであるのは確か、、、


男性も一度殴られたような床に這いつくばった感じではない。

なにか麻痺しているようなものである。


そんな異様なイメージが流れた瞬間----


イメージが突然停止した。ただ、あの一瞬だけで何が起きたか想像できてしまう。

長編になってしまった謎の妄想物語も終わったのかあのフレーズは出なくなった。


ただ、なぜか男性を抱きしめている女性のシルエットが脳裏に流れた。

あぁ、「サチコがタカシを強く抱きしめた」ってこういうことか。。。


ならトシコもユースケもこの後に出るのかな?と思っていたがそれ以降はなにもない。ただシルエットの女性は何も変わらなかった。変化もない。色も変わらない。


僕は頭をフル回転した


あぁ、わかった。僕に流れ込んできたイメージはタカシ視点であった

あの一瞬以降イメージも流れなくなったし、、、「ヒロコが殴った」はおそらく「ヒロコが殴った!!」って喚いているのであろう。


そう納得するものもあれば、疑問も残ったままである。

最後に脳裏に流れ込んだものは誰目線?女性目線?どのタイミングで女性目線になった?

「ヒロコが殴った」ってナレーション口調で冷静だったんだよね?

納得がいかない、どこかに女性自身が話しているところがーーー

変に納得してしまった。

””の部分はヒロコ目線で、女性の登場人物はすべてヒロコだ。。。。


おわり


雑な設定と解説。

””の部分はすべてヒロコ目線。女性の登場人物もすべてヒロコ

”ヒロコが殴った サチコはタカシを強く抱きしめた”=”私が殴った (タカシを○して)ヒロコは強く抱きしめた”


”トシコは毒を盛り、ユウスケは床に寝ながらこちらを見ている。”=

”ヒロコは毒を盛り、ユウスケ(タカシ)は床に倒れこみこちらを見ている”




ユウスケはヒロコにとっては「これから○す男性」であり、この場合はタカシであるが愛している相手を○すことができないため、タカシを別の人物に想像で置き換えて生まれたものである。そのため ユウスケ=タカシ である。


”ヒロコは殴る人、サチコは抱きしめる人、タカシは昔の人、トシコはただの老婆、ユウスケは人間だった”=

”ヒロコはタカシを○す人、サチコ(ヒロコ)はタカシを抱きしめる人、タカシは昔の人、トシコ(ヒロコ)はただの老婆、 ユウスケ(タカシ)は人間だった”になります。


こちらはさらに「、」を「→」にすると時系列になります。

「ヒロコはタカシを○した後にサチコ(ヒロコ)はタカシを抱きしめます。タカシは昔の人でした。トシコ(ヒロコ)はただの老婆です。ユウスケ(タカシ)は人間でした。」昔というのであれば、今はそのあとの未来になります。


そのため、タカシは故人でトシコはその後老婆になったともとらえられるでしょう。


最後に”ヒロコが殴った”っというのはヒロコ自身が自分に言い聞かせていたものとなります。そのため、冷静でナレーション口調だったのです。

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