第五章
あ。そういえば漫画借りたんだった。なんかシンプルだけどシンプル過ぎてあんまり惹かれるタイトルでもないよなあ。ていうか俺、ロボット物ってあんまり面白いと思えないんだけど。暑っ苦しいのとか苦手だし。今の子供なんてみんなそうでしょ。だいたい。まあ、夕飯の後にでも読むとして……そうだよ。夕飯までめっちゃ時間あるよ。冷蔵庫の中なんかあったっけ? ない? あんじゃーん。きんぴらが。……きんぴらかあ。悪くはないんだけどメインが欲しいよねえ。え? 作れって? かーっ! しゃーねーなー! 俺の超絶テク、君たちに披露してやるかー。買――い物はめんどうだよなー。麻婆でいいですね、はい。辛いの大丈夫? 大丈夫大丈夫。入れちゃえ入れちゃえー。ガンガン入れちゃえガシガシ入れちゃえー。豆板醤醤板豆。っつっても、まだ先だな。ゲームって気分でもないしなあ。VR、早く欲しいなー。
あ。聞いてよ。あの子ったら酷いのよっ! そうっ! 幼気な少女の振りして、とんだ小悪魔ねっ! 同じ無口っ子でも未無生ちゃんとは大違いっ! ずっとあたしを騙してたのよっ!
……つーか、話したのってほんの数回じゃねー?
記憶にある限り、四回くらいしか絡み無いんだけど。四回目とか学校帰りの挨拶じゃん。
今思えばあれー、無視されてたんだなー。羽伊奈が言った通りだったってわけだ。おいちゃん悲しいよ。
かわいいかって訊かれるとかわいいんすよ。マジで。一年美少女二十傑には入るね。ま、あのまま行ったらやばかったかもしれないし、却って今の状況が正解と言えなくもなくもない。払った代償がでかすぎるってことを除けば。
停学。停学て。
いや、まあ、中学に比べればマシかもしれないけどさ。一応進学校じゃん。出席日数とか大丈夫なのかなー。あの先生、そこまで考えてくれてんのかなー。聞きそびれたし、良子に限っては気にしてもなさそうだけど……今気づいたけどさー、担任に情報行く前に停学決まったってことは、もしかしてあの人そこそこお偉い立場だったりして? うーわー。うわうわうわ。先が思いやられるぜぇ。入学間もない時からこれってどうなのよって話よ。つか、担任連絡よこせよ。
……親に連絡いってるよな。詩衣奈がうまいことやってくれてるだろーけどさ。
はあ。
ああーあ。真逆の再会。躑躅ヶ谷うららを生け贄にして田中良子と彗星絵里を召喚ってか。もう二度と関わることはないと思ってたのに。昼ドラかよ。俺がしてーのはとらドラみたいな恋愛なんだよ。大して変わんない? んなことないでしょー?
……昔はこの時間にドラマの再放送やってたんだってよ? 知ってる? おばちゃんたちの井戸端会議で聞いたの。そうだなあ。ドラマでも一緒に見ます? なーんで日本のドラマって配信弱いんだろうねー?
それにしても。どーせならペットOKな家にしてくれればよかったのになあ。あー! そうだよ! マンションでもカメとかハムスターとか飼えるじゃーん。今度、羽伊奈とペットショップに……匂いとかすげー嫌がりそうだな、あいつ。
「ちょっと! それをこっちに近づけないでおくんなまし!」
なんか違うな。
「近づけないであそばせ!」
ううん? 今度お嬢様言葉講座開いてもらおうそうしよう。
えー? 君たちのことは捨てたりしないよー。ていうか無いと生きていけないよー。なんかもう無いと死にたくなってくるしさあ。
いやあ、虚しくて。はー死にてー。
今更思ったけど、この部屋見たら引かれないかな? ま、べつにいっか。なんか羽伊奈の罵倒、心地いいし。罵らたい願望はないけど、あの上からガンガン言ってくる感じがいいよね……。明け透けな物言い堪んない……。踏まれ……うーん? そこまでの属性はまだ早いんじゃないかな~。むしろ? 組み敷きたい?
「その汚らしい御手でお触りになったらあなた、どうなるかわかっていて?」
なんだこれ? お嬢様言葉、難易度高し高しですわますわ。
そういやさあ。ちっちゃな悩みあるんだけど聞いてくれる? あいつ妄想に使ってオナニーしたいんだけど口調が独特過ぎて難しいんよね。あはは。やってて笑っちゃうっていう。
どうする? 一週間後に学校行って、俺の席無かったりしたら。「誰? お前」「はあ……どこのどなたですか?」「気持ち悪い。近寄らないで」みたいな。みたいな? なんかこういうアニメ無かったっけ? く、くそ! 何がどうなってやがる! みんな! みんなどうしちまったんだ!?
そ、そうだ! ○○は? ○○がいるはずだろ!? みたいなさ。
はあ~。役者にでもなるか~。無理か~。ラジオDJとかだったら自信あるわ~。オールナイトどころか文字通りオールデイいけるわ。さんまさんに弟子入りでもするか~。
……米炊かなきゃ――って、米が無え!
詩衣奈。今日泊まっていかない?
なんで? いいじゃん。布団も綺麗にしてあるし、パジャマだって洗濯してあるし。連絡? しといてよ。えー。今日一日くらい良いじゃん。
寂しいんだよ。
よしよし。
ところで、羽伊奈さん何か言ってた? 何も? え? 何も? ……。
どっか行っちゃったって。えー。その後は? 満足そうに帰ってきた?
えー。なにそれー。トイレ? ちゃう? いや、こっちが聞きたい。
うん。俺もあいつの考えてることがわからんくなってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます