第8話 水天宮



 5カ月を過ぎ、悪阻が落ち着いてから人形町の水天宮様にいぬの日にお参りをして、お腹に岩田帯を巻くようになりました。


 日比谷線入谷駅から地下鉄に乗り人形町駅迄A1出口から歩いて6~7分くらい人形町交差点の信号の先に・・・あらっあそこにも地下鉄の出口が有るわ!って思い出したらバカみたいね。




 此処が人形町なの、へぇ本当だ人形焼きを売ってる。ねぇ帰りに買って帰りましょうウフフフだって美味しそうなんだもの。


 ほら、この信号を渡ってすぐに水天宮様が見えるだろう、これからお参りをして安産祈願をして貰うんだからね足元気を付けてよね。


 フゥ~ン水天宮様って何か近代的な造りに見えるんだけど~!


 こら、罰当たり的な事言わないの、お社が古くなったから新しく立て直して・・・と云うかまだ完成していない所も有るけれどきっと立派な物が出来るんだよ。




 水天宮様でお祓いをして頂き、安産の為のお守りと岩田帯を買って、そして美味しさへの思いから人形焼を買って帰りました。

 お祓いを済ませて家に戻ってから改めてお腹に買って来た岩田帯を巻くと、此れからママになるんだと云う思いから涙した事を思い出します。


 今まで普通のお腹だったのにふっくらと膨らみ、お医者様からも妊娠中毒を考えて塩分摂取を注意するように食事管理が大切ですよなんて言われ、本を読みながら栄養管理をしながらの仕事との日々が続きました。



 あなた、今日お腹の赤ちゃんが動いたの、私嬉しくて涙が出ちゃったぁ、赤ちゃんが動いたのよ、ママになれるの。


 本当か、どれどれ僕も触って良いかな、ゥン?動いていないよ、本当に動いたの?


 あなた、まだ動き始めたばかりですからこれからですよ、ウフフフ、さっき新米ママさんの本を読んでいましたら、此れから少しずつですが動いてくれるようになるのだとか、お腹をポンポン蹴ってくれるのが分かるんですって、楽しみが出来ましたね。


 そうだね、これからもっと頑張らなきゃ、其れからだいぶ家を買う頭金が溜まったから家を買おうか!産まれてくる赤ちゃんにはこの家では狭すぎるからね、郊外で庭付きなんて買えたら最高だよね。


 本当!やったぁ、あなた嬉しいわぁ。それじゃ今度一緒に不動産屋さん回って来ましょう。




 私は浮かれていたんですね、本当に彼の言葉が嬉しかったしお腹の赤ちゃんも元気に動いてくれていましたのでこの時には明るい未来しか見えていませんでした。


 千葉や埼玉、練馬や川崎、東京都下等色々と良い物件を探しましたが探せば探す程目移りして、結局、駅から歩いて行ける距離の練馬の庭付き住宅を購入する事にしたのです。


 其れから早々に引っ越しを決めて、新しい生活をお腹の子と三人で始めました。

 小さな庭ではたくさんの綺麗な花を育てて、駐車場には産まれてくる子供と出かけられる事を考え乗り降りが楽な少し大きめなワゴン車も購入しました。


 何もかもが絵にかいたような楽しい生活が目の前にあり、二人して明るい日々を過ごしていました。

 生れてくる赤ちゃんの為に、御包み《おくるみ》や洋服などを購入しては産まれた時に着やすいように一度洗っては干して、きちんと畳んで赤ちゃん用に購入した小さなタンスに仕舞っていく私が居るのです。


 彼も仕事が終われば早く来しては私のお腹に耳を当ててはお腹を触り、赤ちゃんに話しかけています。

 この幸せが何時迄も続けば良いと願っていた私達でしたが、神様はそんな私達へ試練を与えたのです。

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