第4話 出合い




 私、富永由紀と主人との出会いは同じIT会社に勤務していた元同僚で、所謂、社内恋愛からの結婚でした。


 三十四年前に高校で情報処理を学んで、電子系専門学校を出た私は当時、此れからから伸びるかどうかが見定められていたIT業界へと女性が少ない環境の中へ私は足を踏み入れたのです。

 同期入社は男性ばかりで、事務員を除いて専門職は私だけでしたが主人は二六歳の若さで既に主任となっていて、私達を指導する立場になっていましたね。


 専門学校出身は私だけで、男性陣は皆大学で勉強をしてきた人達ばかりでしたから主人の足を引っ張っては迷惑をかけていたようです。

 其れでも、毎日遅くまで自分で勉強したり同期に相談したりして、何とか食い付いて仕事を任せて貰えるようになりました。


 翌年には大学で勉強してきた女性達が入社してきて、やはり、大卒と専門学校卒ではとの思いが有りましたが仕事的には何ら問題は無く、何方かというと実力主義の会社でしたから一日の長が利いていたようです。

 大卒の中で、橋本保奈美さんという女性から見ても美人と思われる方がいて、主任であった彼を私と取り合う結果になるのですが、彼は私を選んでくれたのです。


 後で知る事になるのですが橋本さんは私より一歳年上で、そして彼の子供を産んだ最初の愛人になるとはこの時には想像がつきませんでした。


 主人、高橋健一は私が入社した時の指導員であり上司であり、そして皆から尊敬される頼れる人でもありました。

 決して彼への誇張でも惚気のろけでもなく、当時の高橋主任は会社の命運を左右するほどのアイデアと仕事の実力が高く信頼されていたのですから当然の事でしたね。


 そんな彼と私が接近して、結婚への付き合いを初め二年後に結婚するのですが、橋本さんからの彼へのアプローチが強くて辟易へきえきする程凄かったの。


 私達はIT業界が将来への展望が見え始めた時の入社でしたので、毎日が遅くまでの残業付けで、今でいうブラック状態だったのを覚えているわ。

 朝出社して、翌日朝に部屋に帰ってはお昼には会社にいる状態が連日続いてもそれでも仕事が面白かったと云うか、彼と一緒に仕事をするのが楽しかったのです。


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