第3話 子への悲しみ


「由紀もう泣くな、泣いても赤ちゃん帰って来ないんだ、又神様が俺達夫婦に授けてくれるまで待とう。だから、これ以上自分を責めるな」


「だってあなた私はもう赤ちゃんが産めない身体だって先生に言われたのよ。もう無理なのよ、神様は私達に赤ちゃんを授けてくれない、だから・・だからあなた御免なさい」



 最初の子供を死産して、次の子供を流産してから私はしばらく泣いてばかりの毎日、彼の事を考えてあげられなかった。

 悲しいのは彼も同じだったはずなのに・・・・其れなのに私は自分だけの悲愴世界に入り、子供を産む事が出来なくなってしまった自分の身体を恨んでしまっていたの。


 そんな私を・・・・・当然よね!主人はそんな私を見限り外に女を作って子供を作ってしまった、良く聞く話でしょウフフフ。

 だから、誰が悪いって?それは多分・・・ウゥンやっぱり私よね、其れだもの彼が外に子供を作ったことは責められないわ。


 あの日から、私は主人にいつかは捨てられる、と言うか子供が居る生活へ主人が求めている事を知ってしまったから、いつかは身を引かなければと思っていたわ。

 其れなのに主人は毎日伝書鳩のように夜遅くに帰って来ては、朝を迎えて何事もなかったように仕事に出ていくの。


 不安の毎日だったわ、だから何時この家を追い出されても良いように、彼女たちが入って来ても良いように綺麗にしているの、立つ鳥跡を濁さずって言うでしょ!

 私だって仕事はしているのよ、ただ、彼が知らないだけで主人を送り出してから残りの部屋の掃除や庭掃除をして急いで仕事に出て、定時に上がって買い物をしてから家に戻っては家事をして、主人の帰りを待って居る日々を過ごしている、主人の帰ってくる前には必ず家に居る訳だから分からないわよね。

 

 主人は庭に咲いている季節の花さえも見る事は無いし、雨漏りがして困っていても何もしない、トイレや風呂のリフォームをしても気にしない人なの、だから私の事なんて・・・・あの日から主人の中に私は何処にも居ないのよね。

 其れは寂しいわよ、でも、もう二十数年も続くと慣れて・・・・うぅん慣れるなんてことはないわ、辛いものよ寂しいと云う事は、誰にも相談が出来ないのだから。


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