第24話 祝宴
机を囲んでいるのは五人。俺、レオン、イーリス、オルテ、それと金髪の少年だ。シラソルはいろいろなところから引っ張りだこなので今はいない。流石はAランクだ。
「いやー、フロレスだっけ? よろしくね」
金髪の少年に差し伸べられた手を握る。俺とほとんど変わらない身長で歳も近そうだ。
「よろしく。君は?」
「ファイルって言うんだ。二人から聞いてなかった?」
ファイルはイーリスらをじっと睨みつける。そんなに眼力はない。
「家の最後の一人。十五歳、Cランク。商人の子。説明するんはこんくらいや」
検索ワードみたいに言葉を並べるイーリス。まさかの同い年だ。
「ねえ、雑すぎない? もっとなんかないの?」
ごねるファイル。その脳天にオルテの拳が落ちる。
「シショーなにするんだよっ」
「喚くな。しかもそんなに力込めてないだろ」
「シショーってのは?」
なんというか、オルテに師匠って雰囲気はない。あまりにも不似合いで面白いな。
「こいつが勝手に呼んでるだけだ。気にすんな」
シショーひどい、と言うファイルを無視して酒を煽るオルテ。
会話も落ち着いてきたので料理に手を伸ばす。酒やら料理やらは俺が飲み比べをしている間に用意したみたいだ。
まずは焼き鳥みたいなのから。醤油がない世界に来ちゃったため残念ながら塩味だ。タレの方が好きなんだけどな。
荒く削られた岩塩がかかった鶏肉。筋肉質で噛みごたえがある。肉の旨味が噛むたびに口いっぱいに広がる。美味い。
この街の肉は全体的に筋肉質だ。森を生き抜いた魔物の肉が大部分を占めるからかな。俺はしっかりしている肉の方が好きだったから問題ないけどね。ただ、甘辛く醤油と砂糖で仕上げたのが食べたい。
醤油はそもそもないみたいだし砂糖は高級品だ。こっちの世界で甘い調味料といえば蜂蜜なんだよな。蜂蜜は沢山採れるみたくそこそこ安い。
皿の料理も残り僅かになり帰り始める人もちらほら現れてきた。レオンもうとうとしていて、オルテも酔い潰れて机に突っ伏している。いびきが五月蝿い。
ちびちび呑んでいるイーリスはほろ酔い状態だ。ファイルは下戸らしく呑んでいないから元気。俺はというと酔いは全く回っていない。
「それにしてもさっきはすごかったな。ボクもフロレスが戦っているとこ見ていたいな」
「お前、やっぱり物好きやなあ」
すごかった、というのはさっきの人達だろう。
俺に会いに人が沢山集まったんだよね。魔法で魔の森を抉り倒したのが噂になっているらしい。レオンのこともだ。
イーリスがいい感じに対応してくれたけどどうなるだろう。明日から穏やかには過ごせんかもやな、なんて言っていたイーリスの眼は死んでいた。不安だ。
「フロレス、提案なんやけど明日にでも剣買いに行かん? 子連れの、武器すら持ってない奴がギルドにおったら今日みたいに絡まれるかもやし。今日は宴会の最中やったから飲み比べで済んだけど決闘なんてこともざらにあるからな」
「やだ」
イーリスの提案をレオンが跳ね除ける。さっきまでうとうとしていて今にも寝そうだったのに、やだ、の一言ははっきりしていた。
「なんで嫌なん? レオンが寝よるときのためにも予備の剣くらい持っとく方がいいと思うけど」
「だってフロにいのけんはボクだけだもん」
ぎゅっと腕に抱きつかれた。いつもより力が強いのはレオンなりの抵抗だろう。
「レオンが嫌ならいいんじゃない? 絶対に必要というわけでもないでしょ? 絡まれないようにするためだけだったら竹光でも作れば?」
「せやな。その方向でいこう。二人とも、一月後からの予定空けときい」
俺が口を出す隙はなく話はまとまっていった。こっちにきてからこういうの多いな。
家に帰り就寝準備。結局、全く酔わなかったな。お腹はいっぱいだから満足しているけどね。
本当は風呂に入りたかったけど諦めた。もう遅くなってしまったからね。水を温めてくれるオルテは潰れているしな。明日の朝一番に入ろう。
とりあえず服を脱ぎ寝巻きに着替える。
……っ。
視界が一気に真っ白くなる。
これは……神様の登場かな。流石にもう慣れたな。
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最近短めが多いですね。……頑張ります。
次回は4月15日金曜日18時です。
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