第25話 ザルな理由(わけ)

 視界が戻って目の前にいたのはアウルム様とアルブス様だ。今日は二人揃ってご登場か。同時に複数の神様に会うのは初めてだな。


「夜分遅くに悪いな」

軽く頭を下げたアルブス様が指を鳴らすとちゃぶ台と人数分の座布団が現れる。ポンッ、という音と白い煙と共に現れる様子はちょっと面白い。


「今日は何の用です?」

促されるままに座布団に座り、既に寝落ちしているレオンを横たえてから尋ねてみる。


「ああ、ちょっと待ってね。はい」

アルブス様がそう言ってもう一度指を鳴らすと今度はコップが現れる。


 硝子のコップに入っている液体は黒に近い茶色。気泡が浮かんでいる。コーラだ。もしくはコーラっぽい何かだ。でも、俺はコーラだって信じたい。


「これは?」

もう、一生お目にかかれないと思っていたコーラが目の前に置かれている。この世界にもこんなものがあったのか。


「お前のいた世の神からの贈り物じゃ。ありがたく受け取るが良い」

この世界にもコーラがあるというのは期待しすぎだったかな。


「じゃあいただきます」

水滴の付いたグラスを掴み口元に運ぶ。

 口の中にコーラを流し込むと炭酸の刺激と猛烈な甘味に襲われる。美味い。


「こんな時間に飲むのって罪悪感ありますね」

「あんだけ呑んでおいたら今更何も変わぬだろうに」

呆れたようにアウルム様に言われ苦笑いを浮かべる。


 護衛依頼中は質素な生活だったんだし大丈夫なはず。プラマイゼロってやつ? でも一気に詰め込むと内臓への負担が重くなるかな?


「まさかこれだけのために喚んでくれたんです?」

俺としてはとては嬉しいけどね。正直、さっさと帰って寝たい。

「これはおまけだよ。本題は別にある」

続けて、何か分かる? と問いかけてくるアルブス様。


 さて、今回の用事はなんだろう。全く思い当たる節がない。このタイミングだとオーバーフロー関連かな? 駄目だ。やっぱり皆目見当もつかない。


「分からぬようだな。そうも考え込まんでも」

声をあげて笑うアウルム様にちょっとイラッとしたのは内緒だ。


「それで答えはなんです?」

「降参のようだね。君、自分の身体に違和感を感じたことはないかな?」

「酔わないとかです?」

他は特にないはず。まだなんかあったかな?


「そっちが先に出てくるんだね。まあ、いいや。君、傷の治りも早かったでしょう? 君は再生の力を持っているんだ」

「再生、ですか?」

正直ピンときていない。


「外的なものに悪影響を与えられても元に戻るってこと。切り傷しかり火傷しかり骨折、打撲その他諸々がすぐに治るんだ。ちなみにアルコールや毒もすぐに分解されるから効かないも同然だよ」

「なるほど。じゃあ俺は酔えないってわけですか」

ちょっと残念だ。酔ったら気持ち良くなれるとかなれないとかいうしな。


「それを伝えるために喚ばれたと?」

「そうだね。でもまだ話は終わっていない」

「注告が終わっておらぬからな。再生にはそこそこの魔力を使う。被害の度合いにもよるがの」


「つまり、怪我しても治るからって無茶しちゃ駄目ってこと。あと、致死レベルのは治らないからね。毒だってそうだよ。あと、腕やら足やらが切られたらなかなか生えてこないから。もっと言うと内的な病気には力は効かない」

「なかなか面倒ですね」

「そうだね。だからいままで通り怪我に気をつけて頑張れってこと」


 なんやかんやあったけどあんまり影響はなさげだな。一応、明日イーリスには報告しておくか。


「それではの。さらばじゃ」

もう一度白い光に包まれ、俺の部屋に帰ってきた。とりあえず、今日は寝よう。




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 先日は間に合いませんでした。本当に申し訳ないです。しばらく更新が安定しないと思われますがどうかゆるりとお付き合いください。

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