第21話 オーバーフロー2
第21話 オーバーフロー2
戦闘開始から三時間。魔物の出現は止まることなく数え切れない魔物を葬り続けた。
「交代だ。退がって休んでおけ」
十数名の冒険者がぞろぞろやってきた。
たしか、一つの戦場につき二グループがあてがわれていて、六時間交代で常に戦闘が行われている、とオルテが言っていた。
俺らは途中参加だったから六時間経つ前に交代となったんだろう。
そいつらと交代して百メーター程街側に移動。そこにはテントがいくつか張られていた。
「フロレス、付いてこい。俺らは一旦ギルドまで戻る」
「えっ、休憩じゃないの?」
「ああ、移動しながら説明する。ほら、レオンは背負ってやるから行くぞ」
無慈悲にも休む間もなく休憩所を後にする。六時間の半分しか戦ってないのにかなりきつい。
後半は同じところから魔法を放っていただけだから肉体的にはまだ余裕がある。
だけど魔力不足のせいで頭が痛い。貧血みたいな感じだ。
六時間という時間設定は一般的な冒険者が戦い続けて魔力が保つかつ、休めば完全回復できるようにできているみたい。
なのに俺の魔力は残り僅か。俺の魔力量は人より多いのにだ。つまり、調節に失敗した俺が悪い。以後気をつけよう。
「で、なんのためにギルドまで戻るの?」
「Bランク以上には集合の義務があんだよ。作戦の確認と現状確認のためにな」
「俺はEランクなんだけど」
「話を最後まで聞け。オーバーフローを終わらすにはどうすればいいと思う?」
もちろんそんなこと知らない。
少し考えるか。
そもそもダンジョン内の魔力が高まって起きるのがオーバーフローだ。だから魔力が戻れば終わるのかな。
でもどうやってだろう。
「魔物を全部倒す、とか?」
「あながち間違ってはない。核となる魔物……ボスを倒せばオーバーフローは収まる」
「ボスって?」
「その正体なんかはいろいろな説があるが……半端なく強い。詳しいことはイーリスに聞け」
まさかの丸投げ。まあいいか。
「それで、ボスを倒せばいいってのは分かったけどなんでギルドまで戻るんだよ」
「察しが悪いな。お前もボスの討伐に参加するんだよ」
ため息をつきながらオルテは言う。
「なんで俺まで? オルテはランク高いからわかるけど俺まで同行しなくても」
「お前……自分の力が化け物じみていることをまだ理解してないのか? マスターに連れて来いって言われてんだよ」
その後も抵抗してみたもののギルドに連行されました。うう、休みたかったのに。絶対ボス討伐なんて危ないのに。
ギルドに戻るとマスターがいた。
「よし、全員揃ったな」
マスターの横にはイーリスと茶髪の男がいる。俺を入れて全部で五人。ちょっと少ない気がする。
「君がフロレスだな? シラソルだ。話はイーリスから聞いている」
「よろしく」
差し出された手を握る。シラソル……たしか家の長だったかな。
「さて、作戦を伝える。今回はボス戦のために体力、魔力を温存する必要はない。よってボスまで一直線に、魔物は薙ぎ倒しながら進む」
作戦を聞いたイーリス、オルテは苦笑。シラソルも渋い顔をしている。
ちなみに普通のボス討伐作戦は魔物を避けつつ万全の状態でボスに挑むんだとか。しかも十人規模の集団で挑むそう。つまり今回の作戦はかなり異常なんだろうな。
ただ、前線の維持のためにも討伐要員は少ない方がいいらしい。
異常な存在である俺がいるからできることだろう。……自分で言うことではないか。
ギルドに集合して三時間休憩していよいよ出発だ。事態は一刻を争うために完全回復を待たずに作戦決行となった。
休憩時間の間にイーリスにいろいろ教えてもらった。まず、ダンジョン内の魔物がなんらかの影響で大量の魔力を手に入れボスとなる。その大量の魔力が漏れ出しすことでダンジョン内の魔力が高まりオーバーフローが起こるんだとか。
一説によるとこれは逆だとも言われているみたいだけど。卵が先が鶏が先かって話だな。
そのボスだがものすごい魔力を放っているので位置は大体わかるみたい。
このオーバーフローが起こると最悪国が滅ぶんだとか。実際の所は近くの街、村が滅ぶくらいの被害が多いみたいだけどそれでも大事だ。
しかも大量の魔物が倒されるので肉や皮の価格が暴落しかねない。だからオーバーフローにより出現した魔物から得た素材はギルドが預かるんだって。いい感じに調整しながら売り払ってくれるみたい。そこから報酬が出る仕組みってわけだ。
まあ、何が言いたいかっていうと早く食い止めたいってことだ。
長引くと戦う者たちの犠牲者は増えるし捌くべき素材も増える。街が滅ぶ危険性も高まる。
だから、早めにボスを討伐したいんだって。ボスを殺せばオーバーフローは収まるからね。
そんなわけで前にはシラソル、右にオルテ、左にイーリス、そして後ろにマスターと完全に俺が守られる陣形で森を進んでいる。
俺は魔力をとっておくため戦闘はしない。気分的にはお国の要人だな。
それにしても四人とも強い。特にシラソルは半端じゃない。流石Aランク冒険者だ。格が違う。現れる魔物に拳の一撃で風穴を開けている。
そんなふうにして移動することしばらく、一際重圧を放つ魔物が視界に入る。
五メーターはあるであろう虎。あいつがボスに違いない。近づくことを拒まれたような異様な感覚。この前対峙した賊とは格の違う殺気。
イーリスが俺の肩に手を置きゆっくり頷く。
「大丈夫。分かっとると思うけどあいつがボスや」
「よし、レオン行くよ。〈
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次回は4月4日月曜日午後6時です。
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