第14話

2035/11/18(日)  早朝六時 神戸市某所 銀髪の男・黒服の部下


「今回は俺のミスだ。相手を過小評価しすぎた」と俺はいう。


「シルバー様のせいだけではありません。我々も準備を怠っているわけですから」と黒服が申し訳なさそうにいった。


「上は何と言って来た?」と俺は銀の髪をかき上げながらいった。


「人員・武装・薬物の補充はもう無いそうです」と黒服は表情を変えずいう。


「退路も無しか、あの腹黒爺ども。金だけ、巻き上げるだけ巻き上げて。人間でも妖魔あやかしでも関係なく、使い捨てにしやがる」と俺は悪態をついた。


 俺の後ろで生殺しの目に合っている巨大な妖魔が、何かをつぶやくべく溶液の中で“ゴボリ”という音を立てたのだった。




2035/11/18(日)  早朝六時 検非違使神戸分署仮八課棟課長室 加藤


「で、ブツは確実に妖魔絡みなんだな。ダウジングにかけてみよう、一本だけパックにして持って来てくれ。課長室までデリバリーを頼む」と私はいった。


「それと、神戸市の拡大地図も持ち込んでくれ」というのも忘れてはいない。


 七班班室に繋がる有線のスイッチを入れた。


 そしていう「七班副長長良ながらは太刀を持って課長室へ上がって来てくれ、急ぎだ」と。


 そういってから有線のスイッチを切ると、ダウジング用のアイテムを揃え始めた。


 久方ぶりのダウジングだが、なぜか確証というか確信を得ていた。




2035/11/18(日)  早朝六時十五分 検非違使神戸分署仮八課棟課長室 加藤・長良


「久しぶりだがなぜか確証というか確信が持てるんだ」といいながら例の、袋に入った紙巻煙草を少しだけ開けモリオンのペンデュラムを少し当てた、その後静かに袋を閉じるとペンデュラムを神戸市の縮尺の小さめの地図の上に垂らした。


 少しずつ移動させながら、振り子の揺れや回転を確認していく。


 数周させると反応があるところが絞り込めてきた。


 各区の大きい地図で兵庫区に反応があったので、そのまま詳細地図に進み確認していく。


 その中でも封鎖区画EE1378に反応が出た。


 EE1378は昔の工場跡で霊体反応が非常に多くお祓いできなくて放置されたという経緯を持つ地区である。


 EEの記号が示す通り非常に小さな封鎖地区である、逆にAAとかABだとかなり大きいものを示す。


「ホンボシはそこですかい?」と長良が聞いてきた。


「多分ここだろう、準備はしっかりとして行けよ、一班が回復するまで出動はお預けだ。出撃は一班、二班と七班で行う。全班が揃うまで待機、英気を養っておけ」と私はいった。




2035/11/18(日) 朝九時十分 検非違使神戸分署仮八課棟緊急指令室 副課長・七班・一班・二班


「奴らの本拠が割れたのは本当ですか」と二班班長の衣笠きぬがさが聞いた。


「ここで間違いなさそうだ、EE1378封鎖区画だ!」と私がいう。


「副課長のダウジングは久々に見ましたが、正鵠せいこくを射抜くのは見ていて爽快そうかいでしたね」と七班長良副長がいった。


「各班準備出来次第出動! 今回も私は七班に交じっていく。第三班の班長八神に後詰は任せてある。以上」といった。




2035/11/18(日) 朝九時三十分 検非違使神戸分署仮八課棟駐車場 副課長・七班


「七班揃いました」と長良副長が報告してくれる。


「よし出動! 一班は北側から、二班が東側から、七班は南側から攻める。西側には、封鎖区画の壁がある。三方向からで十分なはずだ」と私はいう。


「地上部分には、戦時中に建てられて放棄されている。三階建ての鉄筋コンクリRC造の建屋がある」というのも忘れない。


「ホンボシは多分地下にいるだろう」と私はいった。


 私の勘では地下に設備を作って、立てこもっているだろうと考えられたのである


 それ以外だと封鎖区画とはいえ光が漏れてしまうであろうから、ADセキュリティー辺りに感づかれてしまうのではないかと思われたのだ。


 その報告がないということは、地下に設備を持っているのであろうと思われた。


 そして厄介なことにそれが、敵にとって最も効率がいいモノを隠すことができる場所にもなっているということであった。

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