第9話

2035/11/16(金)  早朝五時 検非違使神戸分署仮八課棟七班班室 長良ながら・他


「その組織の話なんですが、ひょっとしたら中華系シンジケート黒龍ヘイロンかもしれません」と唐突にラウさんから情報がもたらされたのである。


「今回の件の手口が非常に似ているので、俺の追っている組織ではないかと思うんだ」とも追加したのである。


「ここからはオフレコなんですがね、黄龍のドンワンさんから報復の依頼を受けたんですよ。昨日の午前零時半の南京町での襲撃の後にね」ともいったのである。


「オフレコじゃあ詳細までは話せないか、副課長にもこの話伝えてもいいか?」と了解を取る。


「話が大きくなりすぎて俺だけでは対処できなかったので報復の話以外は伝えて貰ってもいいですよ」ということになったのである。


 その段になって佐須雅さすがさんからも話が持ち掛けられた。


「その組織ってEEJPC090-EA-29086575-DAC4FF34-20255B76の密売組織ですかね? コードネームが黒竜って名乗っているんですが、昨日のタレコミのあったテイザーサイトの主なんですよ。そして今日の深夜のタレコミにあったのもその掲示板です。取引自体は符丁が使われていて丁寧に隠されてて掴めないんですが時間は中国時間ですし、場所の指定は同じ方式ですから分かったんですが」といったのだった。


「貴重な情報じゃねえか!?」と俺が驚くと、「私も合同捜査班ですから九課の情報で渡していい情報を副長の夜桜とずっと話していたんです、つい先ほど許可が下りましたので詳細が話せるようになったんですが」といってくれたのであった。


「分かった、今の情報を副課長に話そう」といって内線電話を取って課長室に繋げたのであった。




2035/11/16(金)  早朝五時十分 検非違使神戸分署仮八課棟七班班室 長良・他


「長良ご苦労だった、二人に情報提供ありがとうと伝えてくれ」と副課長からいわれ内線電話は切れたのである。


「二人ともありがとうってさ」と二人に伝えたのだった。


「朝飯にしようぜ」、といって買い置きしてあった唐揚げ弁当大盛二つと擬体用の弁当を出して佐須雅さんに擬体用の弁当を渡し、ラウさんに唐揚げ弁当大盛を渡して食べだしたのであった。


「いつもありがとうございます」といって佐須雅さんが食べだし、それに続く形で「すまねえな」とラウさんもいって食べだした。


「ヘイロンのアジトか現在のヤサでも掴めればな」と俺が“モッシャモシャ”食べながらいった。


「アジトは難しそうですが、現在のヤサなら割れるかもしれませんよ?」と佐須雅さんがいう。


「ネットの海を虱潰しらみつぶしですけどね」といったのである。


「合同捜査班の三人にも手伝ってもらえれば捗るかもしれませんが」ともいったので、そのまま副課長に伝えると許可が得られたのであった。


 それを佐須雅さんに伝えると嬉しそうに「良かった。サハラ砂漠から星砂一粒を引き上げる作業をしなくて良かった」といったのであった。


 要するにそれくらいの情報量があるそうで、時間は結構かかるそうであるが出動時以外の時間を当てれば三日から四日でネタは上がるそうであった。




2035/11/16(金)  早朝六時 神戸市某所 銀髪の男・黒服の部下


 俺は事の顛末を聞きながら、赤線を胴に入れた紙巻タバコを吸いながら悦に浸っていた。


 極潰しが一人居なくなったことにより、組織はうまく回るようになったからである。


「次の取引はいつだ、次は俺も行くからな」といいながら聞くと三日後まで取引はないらしい。


「どこでの取引だ?」と聞いた、「ポートアイランド南公園近くの路上です」といわれた。


「ブツの数は?」と聞くと「二十カートンです」と答えられた。


 見た目は紙巻煙草だから、普通に受け渡してもいいんだがと俺は思った。


 わざわざトランクに入れるなんて、さも怪しいものを取引してますよといわんばかりだと思った。




2035/11/16(金)  早朝六時三十分 検非違使神戸分署仮八課棟七班班室 長良・他


「ソイツらの次の取引場所とブツの数は分かるか?」と佐須雅さんに聞いた。


「三日後の十一月十九日、時間帯は深夜一時で場所はポートアイランド南公園近くの路上です。ブツは二十ってことは二十カートンってことですね」と佐須雅さんが答えた。


「特に問題がなければ、十八日の昼には折神おりがみが返ってくるな」とぽつりと俺がいった。

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