第7話

2035/11/16(金)  深夜零時四十五分 新開地南公園南部県道 検非違使けびいし・敵


 すでにこの段階で敵と呼ばれるものは立ってはいなかった、が死んではいないそんな状況だった。


 捜査専従班もすでに到着し、黒服のヤツラからは紙巻煙草を奪ったうえで後ろ手に手錠で拘束護送車両に軟禁していった。


 破落戸ごろつき三人も同様である。


 黒のベンツと白の軽ワゴン全ての車内をくまなく調べると、証拠が出るわ出るわといった状況だった。


 ただアジトの情報は掴めなかった。


 証拠品とその解析作業とソイツらの車両は、捜査専従班に任せておいたソレしか方法が無いからだ。


「実働部隊撤収作業急げ!」と副課長の声が無線にのった。


「捜査専従班は何か分かり次第、個々で構わないので各課に通達を願う」とだけ無線を切り替え捜査専従班に通達した。


 そして実働部隊は八課に撤収したのである。




2035/11/16(金)  深夜零時五十五分 神戸市某所 銀髪の男・黒服の部下


「よくわめく口の割には、相応の能力しかなかった様だな。出入りだ、徹甲弾を装備しておけ」と銀髪の男が部下にいった。


「はっ、分かりました徹底させます」と黒服が下がる。


 そして俺は黒塗りのタンドラを出した。


 百九十八センチ台の長身に、筋肉質な体いわゆるマッチョ体形だ。


 襲うなら道路上少し油断のある事件直後くらいのほうが相応しい、どうせ防弾だろうがアサルトライフルは止められても十二点七ミリは止められまい。


 俺のタンドラの後部デッキにはブローニングM2重機関銃が固定装備されている、黒服二名で操作するそういう方式だ。


 検非違使はどうやらブツと人間はバラして運ぶらしい、今回は人間だけ殺せればそれでいい。


 ブツを追っても、科学捜査では痕跡は残らないはずだからである。




2035/11/16(金)  深夜一時五分 神戸市内国道二号線上 銀髪の男・黒服の部下


 俺のタンドラ以下五台で襲撃に入る、目標は検非違使の犯人護送バン四台である。


 俺が頭を押さえているうちに並んだボックス型ワゴンから、ブローニングM2重機関銃を突きだし横からハチの巣にするだけの話だからである。


 弾が尽きるまで撃ち続けさせる、そういう目的だった。


 深夜だが車を近づけて止める。


 信号が青になった瞬間、頭を押さえるべく猛然とアクセルを踏み込み検非違使の車列に割り込ませた。


 誰かが怒鳴ったが、デザートイーグルを撃ち込んでやると静かになった。


 直後、後部ウィンドウを開けてやる。


 その後ブローニングM2重機関銃の連射音が、深夜に響き渡った。


 数名トミーガンを持って車列に近寄り生存者がいないか確認させる、居たら始末しておけとだけ言い残し俺は先にヤサに帰った。




2035/11/16(金)  深夜一時十七分 検非違使神戸分署仮八課棟課長室 加藤


「なんだと! 襲撃を受けた? 売買犯以外にも手が合ったということか! でお前は偶々隠れていて生き残ったのか。他の奴らはどうした。死んだのか?」と電話に話す。


「視界が真っ赤で……」といって反応が無くなった。


「救急を一名分、至急だ! 近隣病院からでいい、出血多量死の可能性が高い早めに現場にいってやってくれ。回線を繋ぐ」というと電話回線を救急回線に紐づけた。


「一筋縄ではいかん奴らのようだな」と私はいうと棟内の班室有線にいった「四月朔日わたぬき衣笠きぬがさ長良ながらは直ちに課長室へ来てくれ」と。


 いったその後で、力が抜けるような感覚に襲われ「ふー」とため息をついた。




2035/11/16(金)  深夜一時十九分 検非違使神戸分署仮八課棟課長室 長良・加藤・他


『緊急と伺いましたが何か?』と四月朔日と衣笠が被った、三秒遅れで「遅れました、なにかあったんで?」と副課長に聞いた俺がいた。


「人員輸送班が壊滅した、生き残りは出血多量で意識不明の重体だ!」と加藤副課長は切れ長の目をさらに細めてデスクにうつむいた。


『なんですって』と我々が三人そろって反応した。

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