第6話
2035/11/16(金) 深夜零時 検非違使神戸分署仮八課棟待機所 ラウ・加藤・
「加藤副課長もいかれるんですかい?」と俺は少し慌て気味でいった。
「事件ってのは現場で起こるんだ、毎度後方にばかり詰めていたら気が紛れんし緊急時の対処も出来ん。
「この雨だ、相手も気を少し緩めていると思うがな」と続けられた。
確かに本降りというよりも大雨に近い降りかたになっていた、そして風もある西風の様だった。
副課長がベージュ系ウール地のタクティカルジャケット、長良さんが紺のテーラードタクティカルジャケット、佐須雅さんは濃紺のバトルドレスユニット、俺も検非違使用の紺のバトルドレスユニットを着用していた、さらに皆その上からコンバットレインウェアの着用も忘れていない。
準備は万端だった、そして「出動!」と副課長は静かにはっきりとした口調で命令した。
2035/11/16(金) 深夜零時二十五分 新開地南公園南部県道 加藤・七班・二班
先に現場に到着し二班が西側へ回り込んで公園側西側に一台を停車公園内部に四人を展開した、県道の南側に一台を配置しドライバーを残し三人が県道付近に散開した。
七班と私を含む部隊は県道近くのコインパーキング近くに停車し佐須雅以外が展開した。
目立つ長良の自車は公園東側に駐車し、長良は公園南東側に展開させた。
県道は車通りもなく静まり返っていた。
市バスのバス停が南側にあるだけで他は片側二車線道路のみであった。
その市バスのバス停の東向きの車寄せに一台、不審な白い軽ワゴン車が止まっていた。
皆の配置を、タブレットで確認する。
皆問題なく隠れられる場所に潜み、私も県道の段の一段下に潜んでいた。
2035/11/16(金) 深夜零時三十分 新開地南公園南部県道 加藤・七班・二班・他
三台ほど黒塗りのベンツが近づいてきた、西側から東側に向けて速度を落としバス停で会合するようであった。
無線に走らせる「押さえろ」と私は静かにいう。
「佐須雅、東側をバンで塞げ。二班
「長良と公園展開の二班は南側に寄せてこい」と静かに指示を出す。
バス停で停車している最中に前後に障害物ができた。
段の下から真ん中をスモークミラーで
黒服・黒サングラス・黒い山高帽がトレードマークだといわんばかりの奴らが、十五人出て来ていた。
他にはヤクザふうの
十五人はトミーガンを持ち構えている、誰が指示役か一見では分からなかった。
トミーガンはM1921タイプと判断できた。
検非違使仕様のバンは二トン近く重量がある、壁にはもってこいだった。
風雨もきつくなってきた。
私は奴らの車列中央に閃光の魔法を仕掛けた。
二度閃光が瞬いた、一発目は音無し二発目は音ありだ。
二発目二秒信管の音響手榴弾を投げ込んだ。
音だけ大きい“バン!!!”という爆発する音がした。
今度は四方からスタングレネイドが飛び込んだ。
“ズズズズドン!!”とスタングレネイドが連鎖爆発する。
本来ならば立っている奴はいないはずだった、よく見ると黒服全員が紙巻きタバコを吹かしているのが見えた。
ヤクザと思われる破落戸は、すでに倒れ伏していた。
「撃ちかけろ」と指示をして、バス停の真南側からモーゼルを撃ち込んでやる。
ヤツラの車両も、防弾車両のようだった。
2035/11/16(金) 深夜零時三十五分 新開地南公園南部県道 加藤・七班・二班・敵
散発的に続く、銃の発射音が夜に響く。
こちらも撃たれてばっかりではない、撃ち返すが決定打にならない。
お互いに、そういう状況だった。
北側から増援が駆けつけた、長良たちだ。
重低音の連続発射音が響く、長良の持つナイツアーマメント
四方から撃ち込まれ、徐々に弱っていくのが確認できた。
「手は抜かなくていい。
我々が使っている弾は、対妖魔専用の銀弾である。
鉛弾に比べると魔法的ハードコーティングをされているせいで、AK等の鉄弾よりも柔らかめといったところだろう。
「殺さなければどんな手を使ってもいい、生け捕りにしろ」と非情な指示を下した。
今は情報が必要なのだ。
「喋れる状態を、維持させておけば構わん。情報が少なすぎる」と無線に乗せた。
「バックアップの捜査専従班は、逮捕拘束の用意をして待機しろ。十八人分だ」と逮捕拘束に向かってくる班に連絡を入れる。
表向き逮捕拘束と収監は検非違使の神戸本署に依頼せねばならない、私たち八課の設備はまだ仮の状態だから
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