第4話

2035/11/15(木)  昼三時三十分 検非違使神戸分署仮八課棟課長室 長良・副課長


「まずは報告を聞こうか?」と副課長にいわれた。


 副課長はいつもの明るめのベージュ系のウール地ジャケットに、紺色のワイシャツを着こなしエンジ系のシルク地のソリッドレギュラータイを着用していた。


「折神はまだ、二日はかかるそうです。言われた通り、8357を所持しています。予備マグは三本です。肉は届けてきました」と答えた。


「今回太刀のほうは懐刀と捉えたほうが良さそうだ、車に予備バスケットを入れておけ。基本は、撃ち合いになりそうだ」と副課長にいわれたのだった。


「え! マジですかい? 俺は両方いけますが、相手は妖魔あやかしで決まりなんですか?」と聞いた。


「基本はシンジケートの一般構成員だろうが、やっこさんはトミーガンで武装しているらしくてな。撃ち合いに発展することのほうが多そうなんだ、で8357の出番っていうわけだ」と副課長に答えられてしまったのだ。


「ヤサが分かり次第、私も出る」と追加されたのである。


そして副課長は足元から革のトランクケースを出したのだった。


「副課長そいつは?」と俺が聞いた。


「私の相棒だよ、長らく手入れしかしてなかったがね。まさか、こういう日が来るとは思わなかったが」と答えながらトランクを開けていく。


「年代物だが、こいつ以上に信頼を置ける武器が少なくてな」といってモーゼルM712 Flowストックを出したのであった近代式に改造されカスタムされたモーゼルは艶消しブラックをまといピカニティーレールを上下に備えその上にはスコープと下にはハンドグリップとフラッシュライトが付いていた。


「長良、お前もM4 CQB-R FDEを調整してみるってのはどうだ? 今作戦ではバラまくのも必須だろう、この前調達書に書いてあったよな? それかいい機会だからナイツアーマメントLMGでも使ったらどうだ? 体力的には問題なかったよな」といわれてしまった。


「ナイツアーマメントLMGのほうを検討しますが数日で入るんですか?」と聞く羽目になった。


「神戸分署で二十六丁がすでに採用になっている。今ならすぐ手に入るぞ? 予備分も込みだからな」といわれたので、「分かりました。ナイツアーマメントLMGを受領します」と答えるに留めたのであった。


 そのまま副課長から神戸分署に即連絡が行き、二時間後には七班の班室に届いたのはいうまでもなかった。




2035/11/15(木)  昼三時三十分 検非違使神戸分署仮八課棟七班班室 ラウ・佐須雅


 俺は俺自身の情報収集能力のなさを痛感していた、どうあがいても都市交通網にはアクセスできず、且つ情報を抜くなどという荒業は俺にはできなかったからである。


 対人戦ならなんとかなるという思いはあった、だが今回の相手は電子戦をしなければいけないような相手なのである。


「佐須雅さんすまないが、次奴らが動く時間と場所は分かるのか?」と聞くことしかできなかった。


「検非違使での合同捜査になってくれて、助かっていたところですよ。次奴らが動くのは明日の深夜零時三十分新開地の南公園付近ですね、生憎の雨模様ですが情報が取れただけいいとしましょう。副課長さんに、情報は回しておきます」と佐須雅さんはいった。




2035/11/15(木)  夕方四時 検非違使神戸分署仮八課棟仮眠室 ラウ・長良


「起きすぎた、軽く寝ようぜ」と長良副長にいわれた。


「確かに起きすぎた、少し寝ないとな。検非違使管轄になったからやり易くはなったが、俺一人だったら地道に潰してかなきゃならなかったぜ」と俺はいって別のベッドで寝ることにした。


 俺らが動くのは深夜帯と朝方までの時間になったからだ。


 佐須雅さんのおかげで、次の取引は深夜零時三十分新開地だと分かったからであった。


 いつものお仕事は女性陣に任せておけばいい、と副課長もいっていたので気は楽だった。


 仮眠というより睡眠時間は六時間かっきりで、起床時刻は午後十時であった。


「しかしすげえな佐須雅さんは、寝てねえって話だからな。あれでいて、擬体ぎたいの特性をフルに生かして行動できるってんだから驚きだよな」と長良副長がつぶやいた。

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