目覚めと決心

 「ここはどこ?」


 目を覚ますと知らない天井が見えた。

 ・・・あれ?私、いつ寝たの?ここはどこ?今はいつ??

 私?の頭の中で?マークが飛び交う。混乱していろいろ考えていると、思考を断ち切るように声をかけられた。


「お目覚めになられましたか?」


 そんな声とともに天幕が上がる。そこにいたのは、荘厳な雰囲気を纏う一人の男性だった。


「お体は大丈夫ですか?」

「は、はい。」


 体を起こし、改めてその人を見る。くすんだ茶色のような金色の髪に、サファイアのような瞳。がっしりとした体つき。歳は50前半といったところだろうか。纏うオーラからして、只者ではない。


「ここは、どこでしょうか?」

「ここは水の領地、ウァッサーングです。」

「ウァッサーング?」


 ・・・なにそれ?聞いたことない。知らない。


「とりあえず、お風呂に入られませんか?温かいお湯につかれば頭の中も整理できるでしょう。」

「あ、ありがとうございます。」




 お風呂に入り鏡を見る。そうしたら、いろいろ思い出してきた。

 私はアインス。アインス・エンダーザイト。14歳。神々の管理する大図書館の一番最初の司書。

 外見については私自身はよくわからないので、神様の言葉を借りようと思う。


『月のような優しい輝きを持つ銀髪に、宵闇のように鮮やかで深い紺色の瞳。髪はまるで極上の絹糸のようにさらさらでつやつやで、手で持っていても水のようにするすると逃げて行ってしまう。肌は白く、頬は薔薇色。紅を塗らずとも苺のように艶やかで、形のいい唇。まるでビスクドールのよう。』だそうだ。


 ・・・ここどこだろ。それに、私は落ちている本を片付けようと手を伸ばした後どうなったんだっけ?

 そんなことをお湯につかりながらつらつらと考えていると、ふと思い出した。

 ・・・そういえば、私の後輩たちが話していた図書館の怪談話に、似たような話があったはず。

あの大図書館に収められている歴史は、館内で紡がれていて、紡いでいる途中に触れてしまうと、世界の中に引きずり込まれてしまうって。


「あれ?もしかして、私は...」


 ・・・紡ぎかけの世界に引きずりこまれ..て.....


「そ、そんな..。うそでしょ..。」


 あまりにショックで、何も考えられなくなってしまう。


「ど、どど、どうしたら。」


 考えられるようになったら、生きた心地がしなくなった。


「な、何とかしなきゃ。それに、帰りたいよ。どうしたら帰れるのかな。」


 私は必死に考える。でもなかなか考えがまとまらなくて、考えることを投げ捨てた。


「うん。生きてさえいれば何とかなるでしょ。それに、私がいなくなったことが分かれば、誰かが気付いて助けてくれるでしょ!」


 そう、半ば強引に決めつけて完結させる。そして決心する。

 絶対に生きて元の世界に帰るんだ。絶対に帰ってみせる。

 自分でも、どうしてこんなにも帰らなくちゃいけないと思うのかはわからない。

 まぁ、せっかくだし、その日までこの世界を楽しもうと思う。

 ・・・そうと決まれば、まずこの世界についていろいろ勉強しなきゃ。でもどうやって勉強しよう。それに、今どんな状況かも知らなくちゃいけないしね。


「よーし。そうと決まれば、頑張るぞぉ!!」

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