第14話 平和


 邪神を討伐してから、早1ヶ月が経過した。


「平和ですね」


「平和なのは元からだよ」


「一般の方は邪神の存在なんて、知らないですからね」


 それもそうか。

 邪神教の連中は暗躍していたが故に、一般人にその存在は認知されていない。

 故にこの平和は元々のもので、邪神の討伐云々は関係ないのだな。


「でもわたしたちが邪神を倒さなければ、復活した邪神に多くの人々が殺されたかもしれませんね」


「そういう意味では被害を最小限にして、世界を救ったといえるのかもしれないね」


「そう……ですね」


 結果がどうであれ、俺たちは確実に世界を救ったのだ。

 邪神の脅威から、この星を守ったのである。


「でも、あんな邪神が宇宙にはまだまだいるんですよね? 俺たちの手にも余るレベルの邪神が飛来してきたら、今度こそ世界の滅亡につながるかもしれませんね……」


「大丈夫だよ」


「え?」


「私とアルカくんがいれば、きっとどんな敵でも返り討ちにできるよ」


「そう……ですか?」


 そう言ってくれることは嬉しいが、本当にそうだろうか。

 あのクラスの敵なら大丈夫だろうが、今後飛来する邪神がさらに勝る敵だったら? 

 2人でも対処できないほど、強力な邪神だったら?


 考えれば考えるほど、不安が募る。

 俺たちは……あまりにも非力だ。


「大丈夫ですよ、アルガ様」


「……本当にそう思うか?」


「あの邪神のレベルでさえも、アルガ様とシセルさんがいなければ、この星は滅んでいましたよ。だったら2人でも対処できない邪神が飛来してきたら、それは人類の寿命だったというだけです」


「……それもそうか」


 そう考えると、いささか肩の荷が降りる。

 寿命にはどんな手段を講じても、争うことができない。それは人も星も、文明でさえも変わらない。

 

 俺だけが無駄に悩む必要はないな。

 そうだ、俺が敗北するようなヤツなど、最初から人類が敵う相手ではないのだ。

 

「これからどうする? きっとアルガくんも私と同じ気持ちでしょ?」


「高みに辿り着いたが故に、全てがつまらないということですね?」


「うん。これから先、色んな相手と戦うと思うけど、そのどれもが弱くてつまらないと感じるハズだよ?」


「俺は……そうは思いませんけどね」


「え、そう?」


「えぇ、だって──シセルさんがいるじゃないですか」


 今ならば、シセルさんにも勝てる気がする。

 だからこそ、これは挑戦状だ。

 俺とシセルさん、どちらが強いかを決めるための。


「へぇ、おもしろいね……」


 言葉の意図を理解したであろうシセルさんは、ニヤッと笑った。

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