第15話 VSシセル
「ここなら問題はなさそうですね」
俺たちは街から数百キロほど離れた、無人島へとやっていた。
ここは名もなき無人島であり、魔物も多くない。
つまり──
「私とアルカくんが戦うには、ピッタリの場所だね」
本日、俺とシセルさんは戦う。
前回のように互いの力を測るモノではなく、どちらが強いかを競うために。
「あの頃とは、違うところをみせてあげますよ」
「それは楽しみだね。じゃあ、始めようか!!」
「はい!! 今度こそ勝って見せます!!」
ゴングもなく、俺たちの戦いは開始した。
◆
「スゴいね!! 私の動きに着いてこれるなんて!!」
「鍛えましたから!!」
以前までは、シセルさんの動きなどまるで見えなかった。
あまりにも早すぎるが故に、目が追いつかないのだ。
だが、今は違う。
レベルが上がったことで、シセルさんの動きがハッキリと見えるようになったのだ。
むしろ……少し、遅く感じるほどに。
「やぁ!!」
「遅いですよ」
「え!?」
「こっちです!!」
シセルさんの斬撃を躱して、担当で攻撃する。
ギリギリのところで躱された。
いや……シセルさんの頬が少し、腐っている。どうやら、掠ったようだ。
「ひどいことをするね。私だって、女なんだよ?」
「悪いですね。ですけれど、これは真剣勝負ですよ」
「そうだね、からかってゴメンね。それにしても……スゴいね」
「えぇ、俺も強くなりましたよね?」
「うん、正直……見くびっていたよ。だから……私も本気を出そうかな」
そう言って、シセルさんは駆けてきた。
先ほどとは、まるで比べ物にならない速度。
だが……それでも尚、俺の目はシセルさんの動きを捉える。
「遅いですよ!!」
「え──!?」
遅いかかってくるシセルさんの攻撃を躱して、腹部を切り裂く。
今度は見事に命中だ。ジクジクとシセルさんの腹部が腐っていく。
「ぐッ……痛いな……」
「どうしますか、まだやりますか?」
「当然……でしょ。私だって……人類最強の誇りがあるんだよ……!!」
シセルさんは駆けてくる。
だが、遅い。痛みのせいもあってか、速度が落ちている。
「シセルさん」
俺は駆けてくるシセルさんの足を掴んで、地面に叩きつけた。
そして、横たわるシセルさんに馬乗りになって、首元に短剣を添える。
「俺の勝ちです」
「……うん、私の負けだね」
かくして、あまりにも呆気なく勝敗は喫した。
◆
「スゴいね、アルガくんは。まさか私が……負ける日が来るなんて、思いもしなかったよ」
「あはは、恐縮です」
たった数ヶ月余りで、俺はシセルさんに勝利した。
つまり、人類最強に至ったのだ。
「でも……最強は虚しいよ? 他に目指すべきモノが、何もないんだもん」
「ありますよ」
「え?」
俺は天を指した。
気がつけば、辺りは暗くなっていた。
夜空には星々が、煌めいている。
「空の果て、宇宙には多くのじゃあくなかみがみがいるんですよね? そして……俺たちでも敵わない邪神が、数多くいるんですよね?」
「うん、まぁね」
「だったら、ソイツらを倒せるほどに強くなればいいんですよ」
「でも……邪神たちがこの星に飛来してくる保証なんて、どこにもないよ?」
「飛来してこない保証だって、どこにもないじゃないですか。それに俺が邪神だったら、こんなちっぽけな星に最強を名乗る生物がいたら腹が立ってやってきますけれどね」
「ふふ、それもそうだね」
シセルさんは笑う。
その笑顔はあまりにも、綺麗だった。
星々の光に匹敵するほどに。
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