第13話 VS邪神


 如何に邪神といえども、俺の相手ではない。

 ステータスを越えた3匹と、この俺。

 ソラから飛来してきたという邪神であっても、俺たちには到底及ばないのだ。


「ルル、【ドラゴンブレス】」


「ラドラァ!!」


 紅蓮の業火が邪神を襲う。

 堅牢な外殻を持たない邪神には、あまりにもダメージが響いてしまうようだ。

 鳴き声を上げることもなく、邪神は必死に耐えている。その柔肌を融かしながら。


「リリ、【紫電一閃】」


「ケガァ!!」


 協力無慈悲な体当たりと、噛みつきが邪神を襲う。

 リリが衝突した衝撃によって、邪神の身体は大きく凹む。さらに噛みつき攻撃によって、邪神の柔肌が3つの首に齧り千切られる。

 邪神は悲鳴も上げず、ただ耐えている。青色の血を流しながら。


「ルル、【潰エタ希望】」


「ピキー!!」


 漆黒の光線が邪神を襲う。

 人類の業よりも深く、そして暗い光線によって邪神の身体は半分が焼失した。

 邪神は悲鳴も上げず、耐えている。身体の半分を失った、今でさえも。


【────】


「なんだ、何も言わないのかよ。悲鳴も上げず、ただ攻撃を耐えるなんて……なんでお前は蘇ったんだ?」


【────】


「まぁ、聞くだけ無駄か」


 ハッキリ言って、期待ハズレだ。

 俺がこれまで相対したどんな魔物よりも、どんな敵よりも、圧倒的な実力を持つと予想していた。

 だが蓋を開ければ、反撃をしてこないただの肉壁だったのだ。


 コイツは何故、何のために蘇ったのだ。

 もう1度生きることができるのだから、最期まで足掻けばいいのに。

 そんなことを考えてしまい、無抵抗のコイツに呆れてしまう。


「まぁいい。とりあえず、殺して──」


【────!!】


 瞬間、邪神が動いた。

 口から大量の粘液を放ってきたのだ。


「おぉ、危ない危ない。なんだ、反撃できるじゃない──」


【────!!】


 次に邪神は体当たりをしてきた。

 その巨体故に避けることはできず、直撃してしまう。


「ぐッ……。あまりダメージはないな」


【────!!】


 吹き飛ぶ俺に目掛けて、今度はボディプレス。

 何百トンにも及ぶ質量が、俺に覆いかぶさる。


「とはいっても、普通に耐えられるのだけどな」


 邪神を持ち上げて、投げ飛ばした。

 地面にズサッと、転がる邪神。気持ち悪い。


「なんだ、いきなり攻撃をしてきて。怒ったのか?」


【────】


 今度は邪神の正面に、巨大な魔法陣が現れた。

 幾何学模様のソレは、この星の技術のモノではない。

 見たことのない、不思議な魔法陣をしていた。


「ダメージが通らないから、大技に賭けることにしたのか? いいだろう、勝負するか」


 指を鳴らし、3匹に命令を下す。


「ララは【ドラゴンブレス】、リリは【サンダーブレス】、ルルは【潰エタ希望】だ」


「ラドラァ!!」


「ケガァ!!」


「ピキー!!」


 ララの口元に、灼熱が溜まる。

 リリの口元に、雷撃が溜まる。

 ルルの身体に、漆黒が溜まる。

 

 そして──


【────!!】


「一斉放射、だ」


 お互いに攻撃が放たれた。

 邪神の攻撃は、純白の光線。

 対し、俺たちは3属性の攻撃。


 お互いの攻撃が衝突する。

 拮抗する……と、思われたがそうではなかった。

 邪神の攻撃を貫き、俺たちの攻撃は──

 

【────】


 邪神に命中した。

 3つの属性が邪神の身体を破壊する。

 焔が身体を焼き、雷撃が分解し、闇が侵食する。

 如何にタフな邪神であっても、それに耐えられるモノではないようだ。


【────】


 邪神の身体は徐々に消えてゆく。

 下半身方徐々に、粒子へと化していく。

 

【────】


 短い間、極めて一瞬。

 邪神は──その命を終えた。

 完全に粒子と化し、今度こそ──息絶えたのだ。


「勝ったな……」


 振り返り、2人にピースをする。

 ついに、邪神に打ち勝ったのだ。

 シセルさんと同じ偉業を……成し遂げたのだ。

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