第11話 パルパリ迷宮 2/2


 その後、しばらく迷宮内を散策していると──


「あ」


 とある部屋に脚を踏み入れた瞬間、大量の魔物が出現した。

 いわゆる『モンスターハウス』に入ってしまったらしい。


「……めんどくさいな」


 モンスターハウスは全ての魔物を討伐すると、特殊なアイテムを獲得できる。

 だが……目の前にいる総勢30匹の魔物の群れを倒すのは、かなり面倒だ。


「手分けするか」


 そう呟き、俺は3匹を召喚した。


「キドラァ!!」


「ガルゥ!!」


「ピキー!!」


「ノルマは10匹だ。わかったな?」


 3匹がコクッと頷く。


「よし、それでは始めようか」


 俺たち蹂躙を始めた。


 

 ◆



「はッ!!」


 一番最初に殺した魔物は、『サバトゴート』だ。

 この魔物は首から下は、ごく普通のヤギだ。だが頭部だけ、何故か骨だけとなっている。

 そんな邪悪な見た目をしたサバトゴートを、ナイフでズタズタに惨殺する。

 所詮はE級の魔物。俺の敵ではない。


「次ッ!!」


 次に相手をしたのは、『ブラックローチ』という魔物だ。

 見た目は……デカいだけのゴキブリ。60センチもある。

 生理的に受け付けない見た目の為、早急にナイフで惨殺する。

 ……うげっ、白い液体がビュルッと頭から漏れ出た……。


「うッ……背後から体当たりするな!! 鬱陶しいな!! 《仲間術テイム》!!」


 背後から体当たりをしてきたサバトゴートを、テイムする。

 無事に成功。俺の影に収納された。


「次ッ!!」


 次に相手をしたのは、『リザードマン』だ。

 二足歩行で歩き、革鎧と剣で装備を固めるトカゲのような魔物。

 初心者キラーとして恐れられているが、俺には関係ない話だ。

 首元をナイフで切り付け、大量出血で惨殺。


「次は……またリザードマンか!! 《仲間術テイム》!!」


 背後から剣で切り付けようと迫るリザードマンを、テイムする。

 無事に成功。俺の影に収納された。


「次は……ブラックローチ!! お前は殺す!!」


 コイツだけはテイムしたくない。

 ナイフで惨殺。うげっ、またしても白い液体……。


「次ッ!!」


 次に相手をするのは、『レッサーアラクネ』だ。

 俺と一番最初に配合した、体長60センチほどのクモ型の魔物。

 俺に配合魔人としての生き方を与えてくれたから、敬意を表して惨殺する。


「次は……メタルカナブン!! 《仲間術テイム》!! 《仲間術テイム》!! 《仲間術テイム》!!」

 

 3連続のテイム、全て失敗。

 1匹の魔物に対して、テイムは3回までしか使えない。

 悔しい思いを抱き、メタルカナブンを惨殺。

 ……脳内に響くレベルアップのファンファーレが、妙に虚しい。


「次ッ!!」

 

 次に相手するのは、『ウルフ』だ。

 その名の通り、見た目はただのオオカミ。

 ルルが本来進化するハズだった魔物の為、敬意を持って惨殺する!!


「次も……ブラックローチ!! ゲンナリさせるな!!」


 襲い掛かるブラックローチを、必要以上に惨殺する。

 クソッ!! 9分の3でブラックローチとか、確率おかしいだろ!!


「ラストは……メタルカナブン!! 《仲間術テイム》!! 《仲間術テイム》!! 《仲間術テイム》!!」


 3連続のテイム、今度は成功した。

 メタルカナブンが俺の影に収納される。

 よしッ!! ラストがこれで嬉しい!! 最高の気分だ!!

 ブラックローチに汚された俺の気持ちを、見事に洗浄してくれた!!


「よし、10匹終了。あとは……」


 3匹の方を見ると、もうじき終わるといった感じだった。


「キドラッ!!」


 ララは口からブレスを放ち、3匹同時に魔物を滅却する。

 範囲攻撃か。さすがはドラゴンといった感じだな。

 その攻撃にて、ララのノルマは完了された。


「ガルァ!!」


 リリはその高い敏捷力で、瞬く間に魔物を討伐する。

 リザードマンの固いウロコも、リリの牙には敵わない。

 思い切り首元に噛みつき、思い切り嚙み千切るのみだ。

 そんなグロテスクな戦法で、リリのノルマは完了された。


「ピキー!!」


 ルルはその身体を大きく広げ、一気に複数匹の魔物を丸のみにする。

 そして体内でニードルを形成し、体内の魔物を突き刺した。

 ……正直、一番えげつない戦い方だ。

 残酷な戦法で、ルルのノルマは完了された。


「……これで終わりか」


 辺りに広がる、死屍累々。

 やはり……ブラックローチの数が断然多い。

 この迷宮、生理的嫌悪を誘発するな。

 初心者に人気という話は、ウソなんじゃないのか?


「お」


 唐突に部屋の中央部分に、宝箱が出現した。

 そう、これを求めていたんだ。


「さて、中身は……?」


 宝箱を開ける。

 そこには──


「……種?」


 一粒の種が入っていた。



 ◆



【ランダムの種】

 食べるとランダムな効果が発動する種。


 【鑑定眼】を使ってみても、意味不明な記載しか書いていない。

 なんだよ、ランダムな効果って。


「とりあえず……食べてみるか」


 おそるおそる種を食べる。

 ガリッと嚙み砕き、飲み込んだ。味はアーモンドに似ているな。

 飲み込むと同時に、目の前にウィンドウが現れた。

 

【魔法スキル:闘気 を獲得しました】


 と、書かれたウィンドウ。

 闘気……? 聞いたことないな。

 とりあえず、出てきたウィンドウをタップする。



【魔法スキル:闘気】

 身体をオーラが纏い、身体能力を大幅に上昇するスキル。

 修練を積んだ武人のみが獲得可能な、魔法スキルである。


「へぇ、魔法スキルなのに会得できるのは、魔法師ではなくて武人なのか」


 変わったスキルを手に入れた。

 だが修練を積んだ武人にしか会得できないスキルとは……相当強力なスキルなんじゃないのか?


「俺、当たりを引いたんじゃないか?」


 気分がいい。

 良いことが起きると、気分がいいな。

 

「よしッ!! この調子で迷宮を散策しよう!! モンスターボックスを片っ端から、攻略していこう!!」


 俺はそう意気込み、さらに迷宮を散策した。

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