閑話 最近話題のテイマー【3人称】
ここはいつものギルド。
3人の冒険者が、とある冒険者について話していた。
「そういやよォ、最近話題の冒険者を知ってるか?」
「最近話題? あぁ、チキン戦法を大いに失敗した、ピヨヨのことか?」
「ありゃ酷かったな。チキン戦法は道中の全ての魔物を避けるんだが、当然ながら魔物も多種多様だ。『絶対に逃げられない魔法』を使うヤツもいるからな」
「そうそう。その上、ボスには毒薬をぶっかけるらしいが、【状態異常無効】のスキルを持つボスも多いからな。ボスは弱点を把握した上で対策をするべきなのに、アイツは何も考えずに毒をぶっかけるだけだからな。だから失敗したんだろうな」
「チキン戦法なんて欠陥しかない戦い方、採用するなんてバカのやることだぜ」
「あ〜。盛り上がっているところ悪いが、俺が言っているのはピヨヨことじゃないぞ?」
「え? じゃあ誰だよ?」
「あ、わかった! 最近チキン戦法を取り入れたバカども、カナトパーティのことだな!!」
「いや、違う。ていうか、チキン戦法から離れてくれ」
1人の冒険者は、ため息を吐く。
チキン戦法がどれかけ欠陥の戦法か、うんざりするほど理解したような素振りで彼は語る。1人の冒険者を。
「聞いたことないか? 訳わかんねェ魔物を連れている、黒髪のテイマーの話を」
「あ〜、なんか聞いたことあるような無いような」
「俺はあるぜ! 確か……キメラみたいなドラゴンを連れているんだろ?」
「あぁ、その通りだ。加えて、凶暴そうなウルフと普通のスライムを連れているらしいぜ」
「なんだよそりゃ。本当にテイマーか? 錬金術師じゃねェのか?」
「錬金術師の知り合いがキメラみたいなドラゴンを見たらしいんだが、どうやらキメラとは根本的に違うらしいぜ」
「へぇ〜、で。何が話題になってるんだ? ただ珍しい魔物を連れているだけじゃねェか」
1人の冒険者は、ニヤリと笑う。
そのテイマーのことを話したいと、その質問を待っていたと言わんばかりに、彼は語り出した。
「どうやらソイツ、魔物同士を合体できるらしいんだよ」
「合体? 錬金術の【キメラ錬金】みたいなものか?」
「確かに似ているが、どうやらそのテイマーが合体させた魔物は種族が【キメラ】にならないらしいぜ」
「はぁ? どんな魔物でも、合体させたら種族が【キメラ】になるハズだろ?」
「さらにその合体、何度でも行えるらしい」
「おいおいマジかよ。キメラ作成は魔物への負担が大きいから、あまり何回も行えないハズだろ? そいつの合体は何回も合体できるなんて、最強じゃねェか」
「そうなんだよ。何回も何回も魔物を合体できて、当然ながら合体の度に強くなる魔物。まさしく最強のテイマーだろ?」
「そいつ誰なんだよ?」
「あ〜、それは……」
これまで嬉々と語っていた冒険者は、急にバツの悪い顔になった。
「悪い!! 俺も名前とかは知らないんだ!!」
「はぁ、そんなことだろうと思ったぜ」
「だけど……元カナトパーティの仲間だってことは判明している!!」
「カナトパーティって、チキン戦法を取り入れた愚かなパーティだろ? 確かテイマーを追放しまくってるって、悪い噂が流れているぜ」
「確かにテイマーは不遇職だけど、その知識だけは確かだってことに気付いて無いんだろうな。ある程度実力があれば、気付けるハズなんだけどな」
「アイツらって、確かB級だよな? そこまで昇格して、テイマーの知識の有用性に気付けないって……マジでバカなんだな」
呆れる冒険者たち。
そんな彼らの元に、新たに3人の冒険者がやってきた。
「おいおい、楽しそうな話をしているじゃネェか」
「最強のテイマーとか、聞こえちゃったなァ!!」
「オレ達の前でその話をする意味、わかってるよなァ!!」
「げ……テトパーティ……」
屈強な浅黒い肌の3人の男ども。
彼らはまるで3つ子のように、ほとんど同じ容姿をしていた。。
彼らは左から『テトワン』『テトツィ』『テトスリィ』というふざけた名前をしている。
3つ子でもないというのに、見た目がほとんど同じで似たような名前。周りの冒険者が気色悪がっていることを、彼らは知らない。
彼らはテイマーのことを、蛇蝎の如く嫌っている。理由はしょうもなく、3人ともテイマーに彼女を寝取られたからだ。
彼らはテイマーという言葉を聞くだけで、虫唾が走り言葉を溢した者に暴行する。最悪なことに彼らはB級冒険者の為、反撃できるものは少ない。
「おい、教えろよ。誰なんだよ、そのテイマーは」
「い、いや……俺も詳しいことは知らない……」
「ウソを吐いてるんじゃネェよ!! さっさお吐いた方が、気楽になるぜェ?」
「お、俺たちは今さっき話を聞いたから、マジで知らない……」
「うっせえな!! さっさと話せよ!!」
「話が通じない……。だから、コイツらのこと嫌いなんだよ」
イライラが最高潮に達したのか、テト達は冒険者達に殴りかかろうとした。
拳が冒険者達の顔面に直撃する、その時──
「やめろよ」
3匹の魔物を従えた、黒髪の男が現れた。
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