第9話 今後の方針


 目が覚めると、俺はベッドの上にいた。


「知っている天井だ」


 どうやら俺が倒れた後、ララたちは俺を宿まで連れ帰ってくれたみたいだ。感謝の意を伝えようと思ったが、周りに姿が見えないことから既に影へと帰還したと考えられる。


 カーテンを開くと、既に太陽は沈んでいた。

 どうやら数時間以上、眠っていたようだ。


「過労は身体に良くないな。これからはちゃんと眠ろう」


 まだ頭がボーッとするので、モゾモゾと布団の中に横になる。

 さぁ、2度寝を楽しもう。



 ◆



「さて、これからどう進化させようか」


 次の日の早朝、早起きした俺はさっそく悩んでいた。


 ララたちは配合を繰り返すことで圧倒的に早く進化できることはわかった。

 だが、だからといって無闇に配合を繰り返すと、逆に弱くなる可能性もある。


 つまり今後は配合素材にも、気をつける必要があるのだ。

 適当に配合しまくって、通常の進化先より弱くなることだけは避けなければならないからな。


「伸ばしたい能力に向けて、配合素材を選べばいいんだろうな」


「ドラァ?」


「リリが攻撃と敏捷に長けているからな、後2匹は被らせない能力にしないとな」


「ガブゥ!!」


 リリが俺の頬を舐める。

 見た目は変わっても、中身はまるで変わっていない。進化前と同じく、子イヌのように懐っこいな。


「ララは……そうだな。生命力と防御力に特化した、『タンク』にするか」


「ドラァ?」


「竜種は進化すれば身体がデカくなる。デカい図体に強固な防御力と潤沢な生命力が備われば、皆を守る盾に……いや、壁になれるだろう」


 それに加えて身体がデカいのだから、必然的に攻撃力も高くなる。竜種はブレス攻撃も備わっているため、防御面だけではなく攻撃面に関しても問題がなくなる。

 ララをタンクにすれば、最強になれるのだ。


 と、なると必要な素材は……土属性系や甲虫系、あと鋼鉄系になるか。

 土属性のドラゴンはイメージ的にダサいから却下。鋼鉄系は俺のレベルが足りなくてテイムできない。となると、甲虫系を素材にするか。

 まず初めはカナブンやビートルなどの甲虫系と配合して、俺のレベルが上がれば鋼系などのより強固な魔物と配合しよう。


「ピキー!!」


「ルルは……回復系にするか」


 タンクとアタッカー、2つが備わったのだから残るは回復系だ。


 回復系の魔物はどの系統にも存在する。

 ゴブリンならゴブリンプリースト、リザードマンならリザードマンプリーストなどだ。

 とりあえず、『○○プリースト』と付いている魔物であれば、例外なく回復系になる。


 ルルを回復役にすれば、俺のパーティは完璧になる。

 アタッカーはリリ、タンクはララ、回復役はルル。三者三様、役割が分担された最強パーティだ。


「よし、方針が決まったんだ。早速だが、テイム兼レベル上げに向かおう」


 追放されてからこれまで、俺は適当な依頼を受けてその辺の野山でザコ魔物を狩る日々を過ごした。

 賃金は安く、疲労は溜まる。この生活はあまり長く続けない方がいいと、倒れてようやく気づいた。


 だからこそ、そろそろ新たな一歩を踏み出す必要がある。

 これまでは全員ステータスが低く、レベルが低かった為に踏み出せなかったが、今は違う。

 

 リリは進化した。

 通常の進化よりも、圧倒的に強く。

 ララとルルも、同じく進化するだろう。その日は近いハズだ。


 今の俺たちならば、踏み出せるハズだ。

 そう、"迷宮"に挑む時が、やってきたのだ。


「本日午後、早速挑もう。大丈夫、俺たちなら問題はない」


 目指すは初心者向けの迷宮、『パルパリ迷宮』だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る