第13話 再開

「最悪」




ウランドの街のとある酒場、そこの扉を勢い良く開き私は店から出た。




言葉通りの店だった。酒は冷えてないし、頼んだ肉料理なんて、味付けは塩のみは焼き過ぎで硬いし、臭みもひどい。




一口食べて、金だけ置いて店を後にした。


どこかうまい店を探さなくては・・・・




私はオタルを探しにこここのウランダ国に訪れていた。




オタルの情報は無いに等しかったが、フルド・キャンセムと言う人物はいくつか情報があった。




ここウランダの場所をパルミア支店のポストギルドの受付嬢に聞いていたらしい。


ビンゼルの情報なら間違いないだろう。




馬を走らせて私はウランダの街でフルド・キャンセムなる人物を探していた。




とりあえず最悪な料理を食べて不機嫌な私は、新しい酒場を探す。


やはり、富裕層の街に行かなければ、いい店はなさそうだ。最初から冒険なんてしなければ良かった。




ふと人混みを避けながら歩いていると。冒険者ギルドが目に入った。ものはついでだ。また引き返してここに戻ってくるのはめんどくさい。腹は空いているが先に情報収集といこう。




不機嫌なまま、バタン。とギルドの扉を開ける。カウンターに向かう途中一人の男とすれ違った。


平凡そうな男だ。無視してカウンターに前に立ち止まる。冒険者プレートを出す。白銀階級のプレート。クエストの制限がない。


驚く受付嬢を無視して聞いた。




「オークの情報ある?」




そう言うと受付嬢は視線を横に移した。その視線を追うとあの男がこちらを見ている。




「なに?」




そう言うと男は




「いえ、なにも、す、すいませーん」




といってそそくさと外に逃げていった。


なんだあいつは、


そう思いながら、再び受付嬢に視線を向ける。




「あ、はい。オークの情報ですね。金等級のクエストで10匹程度のオークの群れの討伐があります。」




そう言って受付嬢はこちらに内容の紙を見せる。場所はテトか、ここから南にある遺跡のあるところだ。


他にもあるだろうか?情報が欲しい。




「他にもある?何等級でもいいんだけど」




「重複になりますが銀等級のオーク一頭のクエストがございますが、その・・・」




「なに?」




「先程の冒険者様が、このクエストを受注されたのですが・・・・」




もしかしてと思った。




「それフルド・キャンセムって冒険者?」




「え、は、はい」




その瞬間、私は出口の扉へと走った。


扉を勢い良く開け、さっきの男フルド・キャンセムを探す。おそらくもう人混みに紛れている。




「くっそ、」




服装を覚えていればよかった。普通なら視界にすら入らないような地味な男だったことだけ覚えている。おそらくもう見つけれられないだろう。




私は先程のまずい料理の件といい、今日は苛立つことが多い。




そのまま冒険者ギルドに戻る。




「さっきのオークの件、とりあえず受注で」




「・・・・は、はいかしこまりました。しばらくお待ち下さい」




苛立ちが顔か態度に出ているのか、受付嬢の対応が余所余所しい。目を合わせてくれない。




なんか申し訳ない。この子には悪いことをした。






受注の手続きを終わらせて、地味男フルドを探し始める。あの男が受けたクエストを重ね受注した。地味男がハフの村へ行くことがわかった。




おそらくはオタルが一緒にいる。また旅に出るまでに見つけなくては。


いや、先回りしてハフの村に行って待つのもいいかもしれない。




テトの国の件は後回しでいいだろう、あれだけ大きいクエストならテトの国でもクエストが出てるだろうし、他に受けるものもいるだろう。




ハフの件が終わったらすぐに行けば問題ない。








地味男を探し始めてもう日は暮れていた。


探した結果この街では宿をとってはいないようだ。


となると外でオタルと共に行動しているかもしれない。今思えばオタルはおそらく街にはいれない。




となれば、街の外を探さそう。


もし焚き火をしていれば夜なら見つけやすい。


と思案して街の外を探している。


愛馬のクリシアに乗って街の外周を回っていた。




「・・・・ビンゴ」




見つけた




森の奥、かすかに明かりが灯っている。焚き火の明かりだ。月が雲で隠れていて助かった。








と、クリシアの速度を上げ私はその明かりの方へと向かった。




ーーーーーーーー




「蹄の音が聞こえる」




オタルのご馳走を頂こうとした時、唐突にオタルはそう呟いた。




「馬か?」




「うん、こっちに向かってる」




「よう聞こえるな」




そう言いながら半信半疑で耳を地面を付ける。




「本当だ、一頭ってとこか?」




「うん、どうする?」




「とりあえずオタルは隠れとけ、野盗で苦戦してたら頼む」




「うん、わかった」




おそらくは旅人だろうが、オタルを見て騒がれたら面倒だ。


オタルはある程度の荷物を持って森の奥へ隠れた。


俺は耳についた砂を払いながら、足音の主を待つ。


足音は近づき、暗闇のなか馬から降りる音がする。そのまま馬の足音と一人の足音がこちらに近づく。


万が一の事を考えて、身体の死角に剣を握る。




影が見える。夜目は効くほうだ。遠くてもその姿はうすらとわかった。


少しづつ日の明かりでその姿が鮮明に見え始める。




やっぱりか、冒険者ギルドで出会った怖い女だった。




「フルドキャンセムね」




驚いたことに俺の名前をよんだ。




「そうすけど、どちらさんで?」




少し怖い、何かしただろうか、もしや見ただけで痴漢とかいう出すんじゃないか・・・・




「オタルいるんでしょ?」




予想外の言葉だった。




「フレイヤさん!」




俺が返答するよりも早く、オタルが森の影から現れる。顔見知りか?




いや、そういえば前話してたようなにないような・・・・




「久しぶり」




「はい、お久しぶりです」




「まあ、用件は後にして、とりあえずご飯にしましょ」




「は!?」




俺は彼女のいきなりの言動に声を隠せなかった。




「なに?」




「い、いや、」




ここは「これは俺とオタルの飯だ、食うなら金払え!」と強く言えればいいのだが、それができないのが俺だ、我ながら情けない。


こういう女は本当に苦手だ。俺はすぐに目を逸らせてしまった。




ーーーーーーーーー




「本当、あの街の酒場最悪だったのよ」




「へぇ、そうなんですね、、焼き過ぎは美味しくないですから」




オタルはニコニコしながらフレイヤと言う女におかわりのスープを渡す。


オタル肉料理を食べながら。ウランダでの料理の愚痴を吐く、それをオタルは、親身に聞いてあげる。




俺はと言うと遠慮のない食いっぷりにドン引きしていた。




みるみるうちに二人分の食事がなくなって行く。




これは俺の食う分も無くなりそうだ。


仕方ないとオタルの保存用ボックスを開け新たな肉を出す。




「オタル包丁貸してくれ」




「うん、いいけど・・・・あ、お肉(下処理した)がもうない」




下処理していた肉の8割はあの女の腹の中、1割は俺の腹の中、オタルに関してはスープしか飲んでない。この女は飯貰うにしても遠慮がないのか。




普通、「悪いんで、私が焼きますよ、あ、おかわりはいりませんか?」




ぐらい言えんのか!と心の中で愚痴りまくる。




保存用ボックスから出した肉を適当な大きさに切って野草を挟みながら、鉄の棒に刺していく。俺好みに塩・胡椒や薬味で味付けをして、焚き火の近くへ刺す。




このペースなら3日分の肉も無くなりそうだ。この女のせいで。




「こっちでも焼くよ」




「お、悪いな、」




焼くスペースが無くなりそうなのを見かねてオタルが声をかけてくれる。


やはり気がきく奴は違うねー、と心の中で女に嫌味を吐いた。


最初の二人分よりも多い肉が焚き火の周りに並ぶ。


これなら流石に俺とオタルの分も残るだろう。




だが次の日の肉が心許ない・・・


まあ、しょうがない。




「オタル、俺んとこの串も見ててもらえるか、」




「うん、どうしたの?」




「罠仕掛けてくるよ。この辺ウサギの穴あったろ?運が良けりゃ捕まるだろ」




「そんな後で僕がいくよ」




「いいよ、食ったらすぐ寝てえし、焼くの頼むな、俺の分取っといてくれよ。」




「うん、ごめん、わかった、」




「お前もちゃんと食えよ」




俺は腰に剣を掛けて、どうにかあの女の手から逃れた内の一本の地面から抜く。




肉汁溢れる肉を頬張りながら、串片手に罠を仕掛けに森にはいった。






ーーーーーーーーーー






フルドが森に消え、私はオタルと二人きりとなった。


まだ、今回でたった二回目の出会いだが、不思議と二人の間には気まずさはない。


夜の森、時折獣の声が森に響く中、満腹になった腹を摩りながら満足気な吐息を吐く。




「ふーー、それでなんであいつと旅なんてしてるの?」




いきなりの問いにオタルはキョトンとする。




「え、なんで、、その、何というか」




「お金とか取られてない?」




「そんなことないです!むしろ増えてるほうで」




「あんまあんたのこと知ってるわけじゃないけど、絶対騙されやすいでしょ」




「・・・・」




沈黙は肯定だ。


いかにも騙されたことがありますというような顔で頭をポリポリと掻く。




「・・・で、あいつはどうでもいいけど、クリフォードについてはわかったの?」




「あ、いえ、あれからはあまり、どのオークも場所までは知らないみたいで・・・・」




「どのくらい、倒したの?」




「えーっと・・・群れが2つぐらいです。それからの足取りが掴めなくて・・・そのぉ・・・・」




「なに?」




「もしかしてフレイヤさんも集めててくれてたんですか?」




「まあね」




「本当に、巻き込んでしまってすみません。その・・・」




「いいのよ、仕事みたいなもんだし、ちなみに集めてはいたけど収穫はないわよ」




「そ、そうなんですか、すみません」




なぜ謝ったのか理解できなかったが、気にはせずに話を続けた。




「あの男に頼んで、オークの情報手に入れようとしたんでしょ?」




「は、はい、ハフの村ってところで・・・」




「北でしょ?ギルドで聞いたわ」




「はい、そうらしいです」




「で、あの男はこれからも一緒にいるの?」




「はい、オーク退治も手伝ってくれるみたいで・・・・」




「あの程度じゃ足手まといにしかならないわよ。銀等級でさえ怪しいのに」




「それは、その・・・大丈夫です。これから一緒に稽古していくし」




オタルはオドオドとし始める。視線が定まってない。その仕草はまるで言い訳をする子供のようだ。




「甘すぎる。あんなの目離したらすぐに死ぬわよ」




「いや、その・・・・・」




「もういいわ、ここで待ってなさい。ちょっとあいつと話してくる」




重たい腹を抱えながら立ち上がる。あの男を探しに森へ向かう。


一緒に立ち上がろうとしたオタルを止める。




「あんたはここで食べながら待ってなさい。絶対ここ離れたらダメだからね」




「で、でも・・・」




「絶対よ、何があっても、話してくるだけだから」




「わ、わかりました・・・・」




シュンと子供のように落ち込みながら、半分上がった腰を落とす。このくらい言っておかないとついてくるだろう。




「絶対よ」




私は釘を刺し森の中へ進んだ。






近くで物音が聞こえる。おそらくその方向にフルド・キャンセムがいる。




近づけば罠を仕掛けているフルドを見つけた。




「なんすか?」




男はもう私に気づいていた。なるべく足音は消したほうだが、多分こいつは猟師の経験があると直感した。


罠の作り方の手際がいい、分も経たずに罠が完成した。




「もう終わったの?」




「まあ、」




男は目を合わせずに答える。




「そ、じゃあ、なんでオタルと一緒にいるの?」




「・・・、まあいろいろと」




「色々って?濁さなくてもいいのよ?」




「濁す?なにを?」




男の視線がこちらに向く。




「オタルと組めば階級が上がると思った?無駄よ、審査ですぐにバレる」




「・・・・・・」




「図星?いままでご苦労様、いいわよ?これからは私が一緒にいくから」




「は?」




「なに?」




「オタルに借金してんだよ、それ返し終えるまではなー」




敬語がなくなった。森の中で暗く、鮮明に顔色を伺えないが明らかに苛立っていると声でわかる。




「いくら?」




「え?」




「いくら?」




「金貨2枚くらい」




「私が返しとくから、いいわよもう」




「なんだ?そんなに俺と遠ざけたいってことは、アイツとなんかあるのか?」




「あんたには関係ないでしょ?」




「そうだな、なら俺とオタルが一緒に旅しても関係ないよな?」




めんどくさい男だ。いっそのこと力尽くで理解させてやろうか・・・・




「あんたじゃ荷が重いっての、どうせオーク一頭すら倒せないでしょ?」




「いいじゃん、オタルには問題ないって言われてるし〜」




「なに言ってるかわかんない、あんたの為だから」




理解しない奴だ。言葉で聞かないなら身体で解らせるしかない。


黒い帯、私の固有魔法をフルドの周り具現させる。


フルドはかすかに違和感に気づいているようだが、しかしまだ暗闇のなか私の黒帯は見えてはいないようだ。


まあ、今更見つけたとしても遅い。帯を素早く動かしフルドの脚、胴体を巻きつけ動きを奪う。




「な!?、くっそ!そうやってすぐ力に頼る!」




「叫ぼうとしたら口も抑えるから、死ぬよりはいいでしょ。大丈夫、気を失わせるだけだから、」




身動きができないフルドに近づき、腰のポーチから小瓶を取り出す。中には睡眠薬が入っている。キノコから抽出したもので、口もとに近づけて30秒程度嗅がせれば、すぐに夢の中に入る。




長い時間眠らせたければ鼻と口の間に塗れば明日の昼まで起きない。ある程度の金を持たせておけば文句も言わないだろう。




「おいおい、それなんだよ」




「ただの眠り薬よ、安心して、ちゃんと宿まで運んでおくから」




「そう言う問題じゃねーよアっ」




黒帯で小瓶を持ちフルドの鼻元へと近づける。


薬の匂いから逃れようとするが黒帯で頭を抑え、叫ばれないよう口も抑える。




「いい加減にしなさい」




黒帯でフルドの頭を抑える。すると次は息を大きく吸ってと思うとそのまま、息を止める。




「往生際悪いわよ」




全くめんどくさい。黒帯を拳程度の大きさに集めで鳩尾を殴打する。フルドはフン!と鼻から汁とともに空気を吹き出す。その汁が薬の小瓶にビチャリと付き、小瓶を固定していた黒帯にも付く。魔力を切れば消えるものとわかっていても気持ち悪い、さっさと眠らせよう。




そして高い薬だが小瓶ごと捨てよう。




空気を吐き出した反動で空気と共に薬を大量に吸い込む。これはあっという間に眠るだろう。




包帯の中でゴホゴホと咳き込む。


それからも動かない頭を必死に抵抗させる。


口元の包帯から、オタルー助けてくれー、と言っているのであろう声がかすかに漏れる。


私の黒帯は防音性にも優れている優れものだ。




しかし、おかしい。




薬の効果時間は経っただろうか、全然眠るような気配がない。疲れてはいるが、明らかに眠気ではない。


こいつは薬の効きが弱いのか?そういえば酒好きは睡眠薬の効果が薄いと聞いたことがある。


酒好きには見えないが・・・・・


鼻汁が入って効果が薄まったか?




そう考えていると。ようやくフルドがウトウトし始める。目が開閉が遅い。たまに白眼になり、包帯で歪んだ顔と相まって気持ち悪い。




そしてようやく意識がなくなる。足元に落ちている木の棒で強めに脛を打つ。木が折れる。これは痛いだろうが痛がっている様子はない。




念の為に常に小瓶を当てながら黒帯を緩め横に寝せる。念の為に口全体に薬を塗っておこう。




手では触りたくないので終始、黒帯で小瓶を掴み一滴一滴口元に垂らしていく。




ばさっ!!!と後ろからの物音、とっさに後ろを振り向く。


彼のかけた罠に兎がかかり、あたふたと暴れていた。


それを気を取られたのが悪かった。


操作を誤った黒帯で掴まれた小瓶からバシャと勢いよく中の液体がフルドの顔にかかる。




「あ、やばい」




過度に摂取させてしまうと殺してしまう。


急いで拭かないと、そう思って近づく、


しかし手頃な布は持ってないし、自分の服で吹きたくもない。




・・・・・土でいっか




黒帯で近場の土をすくい、フルドの顔に掛けゴシゴシと薬を取っていく、もう大丈夫かと顔を除いた時、カッとフルドの目が開き、ブシュっと口から薬とそれを含んだ土が私目掛け飛んで来た。




「汚!!!」




息を止め急いで薬を腕で拭き取る。どうして?薬が効かなかったのか??


そして、フルドはその一瞬の隙をつき叫び声を上げた。




「助けてくれ!!!!オタむぐ!!」




途中で黒帯で口を塞いだが、おそらくもう遅い。失敗だ。


諦めてフルドの拘束を解いた。


フルドに巻きついていた黒帯が霧のように消える。


そして、時間を待たず俊足のオタルは駆けつけた。




「えっと、そのどうしたの?」




私達の状態を見て困惑している。




「どうしたもこうしたも、この女、俺とオタルを別れさせてーみたいでよ、さっきまで拘束されてたんだよ、薬まで使ってよ」




「え、、えーと、そのフレイヤさん・・・」




嘘のないフルドの言葉にオタル信じられないように私を向いた。




「本当よ」




「なんでだよ、俺がオタルといちゃまずいのか?」




「別に不味くはないけど、はっきり言って足手纏いになるのが目に見えてるし」




嘘を言っても仕方がない。




「クリフォードやらオークの群れだろ?ちったぁ聞いてるよ」




「あんた程度に倒せる?逆に殺されて終わりじゃない?」




わかる。経歴を調べてもこの男にそんな実力はない。しかも私達が追っているのは固体ではなく群れだ。いくら私やオタルがいても守れる保証はない。




「フレイヤさん、それは大丈夫だと思います。最近は稽古もしてるし、しかも丈夫ですし、」




「稽古でそんな早く上達するなら誰も苦労しないわよ」




しかし確かに彼の稽古ならばそこらの冒険者よりは上達は早いかもしれないが・・・・丈夫?訳がわからない。




「まあいいめんどくせえ、オタル見せてやってくれて」




「え?見せるって」




「いつもみたいに殴ってみろよ、それでわかるだろ」






「ああ、うん、、、そっか、わかったけど、いいの?いくよ?」




「おう、こいや」




一瞬訳がわからなかった。稽古でも見せるのか?そんなもので私を納得させるのかと、




フルドは身構える、それにオタルを拳を構えて


その剛腕を振った。




激しく爆発音と共にフルドがそのまま姿を消したように飛ばされる。




森の木々をえぐりながら数回バウンドし、地面に引きずられながら停止した。




数十メートルは吹き飛ばされた。唖然とした。




死んだ、、、、オタルと遠くに飛んだフルドを何度も視線を往復させた。




間をおかずに私は本当に驚愕した。




絶命したと確信したフルドが立ち上がったのだ、




肩を鳴らしながら平然とこちらに歩き戻ってくる。ひと月前の鮮明な記憶が蘇る。




オークを頭蓋を果物のように割ったあの拳。


しかしオークよりも明らかにひ弱なヒュムの彼がそれを受けて平然としている。


手加減したのか?いや、したとしてもあの衝撃音、魔力量、あの時よりも確実に強かった。


人が平然としていられるわけがない。




「いってぇぇ、おい、ちょっと、いつもより強くないか?」




「そうかな?ごめん、」




平然と会話を続ける一人と一頭、


そんな中私は一つの答えを見つけ出した。




オタルが彼を大丈夫だという訳を


薬が効かなかった訳を


オタルの拳を受けて平然としている訳を








「・・・・あなた、異世界人ね」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る