第111話 鎌鼬④
「さあ、第二ラウンドといこうぜ!」
『
これが終わったら【魔導士】に教えるのもいいかもな。できるかわからないが。
【魔導士】の加護は【全属性理解】でしかないからな。【緻密な魔力操作】だったら難なくできるんだろうけど。
まあ、物は試しだ。
第二ラウンドとは言ったが、互いに魔力、体力共にかなり消費している。オレは特に体力だ。
この状態で『
使えば、攻撃を受ける。
一応『
『――『飛撃』』
腕は2本だから、『飛撃』も2発。十字を描き、迫る。『飛撃』で迎え撃てば霧が発生し、視界が悪化する。
仮面のおかげで若干見えやすいとは言え、魔力由来の霧だから視界は完璧ではない。
ならここは……
オレは前へ走り、地面を滑り、『飛撃』の下をかいくぐった。
雨で濡れていて、かつ石畳でよかった。とてもよく滑る。
そして起き上がりざまに、オリハルコンを刀に変え、横に大きく振るう。
「――『剛撃』 ――『飛撃』」
もちろん、この攻撃が通るとは思っていない。
予想通り、
正直、上に避けてくれるとは思わなかった。
「――『晶拳』」
今回は先を尖らせた『晶拳』でお送りします。
限界ギリギリの魔力を込めたので、防御もあまり意味を成さないでしょう。それでは……。
なんて思っていたら……
『――『
そう呟くと
さらにもう一度……。そして……。
『――『
オレの真上に移動した
風の効果なのか、回転も加わっている。
――やばい! 速すぎる!!
避けようとした瞬間、目の前に
その際に発生した衝撃でオレは5、6メートルほど後ろに飛ばされる。
足に風を纏わりつかせていたのか、あのスピードで整備された地面に激突しても大したダメージを受けているようには見えない。
地面も大きく抉れている。
クレーターとから
その歩み方には余裕すら見え隠れしているように思えた。
先ほどの『
厄介な魔法だ。空中歩行すら可能にする。
風って、火力はあまり高くはない魔法なんだが……使う者によってこんなに厄介なものになるのか……。
オレもあまり人のこと言えたものではないが……。オレは『水晶』に拘り過ぎているのか。
まあ、水晶は物質だもんな。二酸化ケイ素だったか?
理科の先生がなんか言ってたな。あの、元素記号を覚えていたとき。NaMgAl「Si」P……。「SiO₂」か。
元素まで操れたら酸素を発生させて火属性魔法を強化できるな。無理だけど。
魔法としての水晶は「二酸化ケイ素」ではなく「水晶」なんだよな。
水魔法、または水に雷魔法を放てば酸素と水素に分解されるらしいけど。自分の力で分解することはできないってことだ。
それに対し、風はものを動かすことに精通している。空気を動かす魔法だもんな。
例えば、オレが火の魔法を扱えたなら、地面に高火力の火を起こせば空気が暖められ、上昇する。
……できないことを考えるべきではないな。
相手は風だ。
駿のように火ではない。あいつの火力はおかしい。水晶が溶けるってどんなだよ。
ただ、そこまで魔力が繋がるのか。これが問題だ。
試してみよう。
……
水晶が残っている間は残存魔力を使用しているのだろうな。接続できなかった。
プログラミング……も、外部から形を変えられたら正常に機能しなくなる可能性がある。
プログラミングはたしかに、相手の意表を突くいい手段だ。だが、こういった弱点がある。
完璧なものはこの世にはないってことだな。
つまり、やつの風魔法も弱点がある。……と言いたいところだが、そうではなさそうだ。
まず、『
あとは風魔法全般に言えることだが、風とは力だ。
それに向きが加わる……ベクトルだな。それを緻密に操作することで威力の高い魔法を生み出している。
あと、風は所詮、空気を動かしているだけにすぎない点だ。
オレが『晶盾』で『
単調な風は、遮蔽物があれば機能を失う。
同時に多方向から力を受ければ内部崩壊を起こす。接続が弱い部分から離れるのだ。
水晶においては、劈開面を利用されているとも言える。
『――『
持続時間が過ぎたのか、
先ほどから動きを観察していてわかった『
・敏捷力の上昇
・感知力増強
・空中歩行
一言で言ってしまえば、『
完全に死角となる所数か所から同時に――他の魔法で周りを囲み、魔力の察知を防いだ上で――放ったが、あと一歩のところでノールックで避けられてしまった。
厄介な。ただでさえ『風衣』は使う人によっては面倒な魔法なのによ……。
『ふぅ……だいぶ感覚も戻ってきたか……』
「へぇ……そいつは何より。で? どうする?」
『……痛みは与えん。そこで大人しく横になって――』
「――まさか」
誰がはいそうですかってなるかよ! オレは最期まで足掻くし、死ぬつもりは毛頭ない!
オレは
もちろん、いちいち鞘を刀身に合うように出している。
放ったらすぐに消す。鞘がないと……締まらないからな!
その最中に『
そのとき、オレは奇妙な感覚に襲われた。
…………力が溢れる? 地面を蹴る力も、スピードも上昇している気がする。
そして何より、
そして同時に、
神器の覚醒に一歩近づいたのだ、と。
おそらく、加護にもなっている【理解】が完全体になったのだろう。
それに伴い、全知もレベルアップしたと見ていいか? 知識量が増えた? いや、理解力が増加したっぽいか。
「ああ……頭が冴える…………!」
脳がスッキリして、とても気持ちがいい。脳内を冷たい水が流れているようだ。
……とはいえ、このパワーアップは戦力差が拮抗している状況においては有効的だったのだろうが。
悔しいが、
後退を止めた
周りに風の球を置くことで、防御は整えている。
その分、集中力が持っていかれるからチャージ時間も伸びるが、費用対効果としては最適なラインを見極めた上での行動だ。
さてさて……あの風の球は見た感じ、範囲内に異物を感知すると爆発する仕組みだろうな。
ってか、【理解】が完全化した…………違うな。【思考加速】か、これは。直感でそう判断した。
たしかに、考え事をしているときの体感時間の割に、雨が見えそうなほど周りの時間が遅い。
考えろ…………効果的な何かを……!
…………あ、いいこと思いついた。
「――『隕晶』」
先ほどよりも一回りほど大きい、最大サイズだ。
その圧倒的質量で押しつぶすこともできるが、それは幸運な場合のみだ。
それに、発現直後は一瞬にも満たない僅かな時間だが、静止する。
その僅かな時間で、
その背後で、『隕晶』が地面に
その瞬間、オレは手招きをする。
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