第110話 鎌鼬③
中心に近づくにつれ、速くなる、全方向型防御魔法『
オレも吹き飛ばすほどの威力。
これを食い破らない限り、オレの勝機はかなり少なくなる。
一度放つのに多大な魔力を使用するのであれば話は別だったが、疲れは見えない。
さらに、こいつの魔法レベルもかなり高い。
魔力探知で見てみた。こいつは近衛騎士の隊長よりもある。【魔導士】には遠く及ばないのは不幸中の幸いか。
こうなったら……。
オレは体の周りに大量に『晶弾』を生成しながら距離を詰めた。
『――『
「――『
一点集中型にした『
これは貫通型の魔法。つまり、開いたのは2か所。もちろん、その途中で
その隙間に『晶弾・龍』と『晶装・槍』を潜り込ませる。
『ぐっ……!』
背中には『
そう言えば、風の盾って普通、『
呼び方が違うだけなのか、それとも別の効果が隠れているのか……。
属性特化型だから、呼び方が適当ってのもあるか……。
属性特化って、そういうところ面倒だよな。
術者がその魔法を認識していれば名称は適当でも発動できるんだし。
大抵の場合、心の奥底に常識として一般名称がこびり付いているせいで上手く発動できないらしいが。
それにしても、このコンボでこの程度のダメージか……。
これ以上穴を大きくしようとすれば、まず『
この攻撃――『
前者は魔力に波を、後者は空気に波を起こす。
ゆえに、それらを大きく乱す風とは相性があまりよろしくない。
風は空気中の粒子の運動を活性化させることで起こる。
つまり、同じく粒子に運動を引き起こさせる波に対する最高の盾ということだ。
それに、『
これは純粋に、
『姑息な手を使いおって……。この俺の魔法に穴を開けるとは……』
何が姑息だ。これは命の奪い合い。勝者が勝者だ。
『――『
魔法の発動と同時に、
――竜巻が生じた。
そして更に、
『――『飛撃』』
空いた左手の爪から『飛撃』を複数、竜巻に向けて飛ばし、竜巻がそれらを取り込む。
そして右腕を思いっきり振り下ろし――
「――『
その前に、オレは『
『
その場に残り続けること。そして何より、硬いこと。
範囲はオレを中心に半径3メートルほど。
が、十分すぎる。少なくないダメージを受けてはいるが、耐えきれそうだ。
威力だけで見れば、騎士団祭で【魔導士】の放った『
【魔導士】は足止め用として使用し、
そして、風が止んだ。
だが、魔法は解除しない。すぐ向こうで待ち構えられている可能性が非常に高いからだ。
なら、どうすればいいのか。
だがおそらく、破壊はしてこず、オレが出てくるのを待つだろう。いや、そもそも文字通り殻にこもったオレに構わず、別の誰かを殺しに行くかもしれない。
あいつの目的はこの都市の崩壊。オレのような部外者に構う必要はないはずだ。
つまり、こうすればいい。
『晶殻』が格子状になるように、部分的に水晶を削る。『
昔は『晶殻』も『晶檻』だったんだけどな。
案の定、すぐ向こう側に
唯一、誤算だったのは
しかも、攻撃の発動寸前という悲劇!
『晶殻』よりも防御力の落ちた『晶檻』では……『晶殻』のままでも耐えきれなかっただろう。
魔法ごとオレを仕留めるつもりだったのか、チャージが必要な大技だ。
『――『
幸い、横に跳び、避けることに成功した。間一髪だったが。
――だが、攻撃はそれで終わりではなかった。
極細であるから、すれすれでも避けられればこちらのものだが……。指先一つで動かされるのは面倒だ。
たったの1度でも角度が大きくなるだけでも、距離が離れるにつれ、動く量が増える。
つまり、距離を取るのは愚策。だがその分、避けるのが易しくなる。
この魔法自体が貫通攻撃のため、防御魔法も役に立つかどうか……。少なくとも、今のオレじゃ、紙切れも同然の扱いだろうな。
しかし、勝算はある。
追撃がこない。それはつまり、この魔法に集中力の大半を持っていかれているせいだ。
そして二つ目の根拠。チャージ型の魔法は威力こそ高いが、消費魔力が多い。イコール、維持魔力も多いということだ。
さらに三つ目。既に述べた二つと重なるが、見た感じ、この魔法に向ける集中力は半端じゃ無い。少しでも崩したら魔法は消える。
つまり、どうにかして攻撃を加えて集中力を乱させる必要があるが、勝手に消耗してくれている以上、すぐに解除させるのはもったいない。
……ということだ。
さて、この『
おかげで、周辺の家が一部倒壊状態だ。多分、部屋の中の方が惨事だ。この貫通魔法のおかげでな。
こうして考えている間も避け続けているが、かすり傷が増えてきた。体力もそこそこ消費している。
このままだと消耗戦だな……。
集中力をいつ、乱させるかが問題だ。
…………チッ! 風が舞って
ええい! やってやれ!!
横に振るわれた『
もちろん、その程度じゃ魔法を消させるまではいかないだろう。だが、これならどうだ?
「――破っ!」
突如、『晶弾』がすべて爆発した。だが、破片は
だが、当たる攻撃を敢えて当てないことで、一瞬、混乱を生ませる。オレでも混乱するかもな。
そして、この爆発は目くらましの効果も兼ねている。だが、
だから、ラインの攻撃によって集中力を乱されたことで持続が困難になった魔法の
この『
単純な火力という点では『
集中力の乱れによって短くなった『
寸分狂わず、人影を横に両断した。抵抗は感じたが、無理やり通した。
人影の上半分が、ゴトッと崩れ落ちた。
勝った。だが、その感情は即座に水を掛けられる。
「――オレが死んだとでも思ったか?」
『!?』
視界が徐々に戻ってくる。
そして、霧の向こうにはかすり傷しか負っていないライン――【水晶使い】が立っていた。
オレは、念に念を入れ、『
もちろん、高確率で『
だが、オレとしては『
「さあ、第二ラウンドといこうぜ!」
次はチャージさせない。
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