第23話  レッツ・ショッピング!②

「ライン〜。これなんか、いいんじゃない?」

「どれどれ? お、たしかにこれは……!」


 そう言ってミルが持ってきたのは、シンプルな黒のズボンだった。材質はジーパンっぽい。

 だが、植物の蔦が左脚に描かれている。とてもおしゃれかつ、好みにドストライク!!


「これ……最高じゃぁないか!!」

「やっぱり? 似合うと思ったんだよ。こういうの、似合う似合わないの差が激しいんだ」

「一目惚れだ、絶対買う!」

「ライ〜ン、ミル〜、俺のも見てくれよ」


 そう言ってゴースが持ってのは来たのは、七部丈のズボンだった。色は藍色。


「ゴースって、見た目と性格の割りに地味好きなんだ」


 そう、ミルが耳元で囁いた。


「まあ、そういうのが似合うんだけどね」


 とも、呟いた。短髪で赤髪なのにな。偏見か。


「どうよ? これ」

「落ち着いた色でいいんじゃないか?」

「七部丈とは珍しいのを選んだね。季節的にも、いいんじゃない?」

「よし、じゃあこれにしようかな」


 ちなみにミルは、


「僕はこれがいいと思うんだけど、どう?」


 と言って、灰色のダボッとした長ズボンを持って来た。


「組み合わせ次第だな!」

「通気性も良さそうだし、あとは上に何を着るか、だな」

「やっぱりそう思う? よし、これにしよう。上に着るもののイメージはできたから」


 イメージできんの!? 

 そりゃまたすげえな。オレなんかイメージできねぇから、何にでも合うやつしか買ったことないわ。

 おかげで地味な服装に落ち着いていたんだけどな。

 おしゃれって周りは言ってきたけど、信じていない。


「それじゃ、上着を見に行くか?」

「あらかた見たし、いいよ」

「オレも」


 ズボンだけで2着も3着も買う金はない!

 あるにはあるけど、節約だ。あと、上着を1着か2着買えばそれでいいかな。




 上着コーナーに到着〜〜。


「各々、好きに見て回る? さすがにこうも広かったら……」

「オレもそれでいいと思う」

「俺も同意。ただ、何か見てほしかったりしたら、『通話トーク』で」


 さてさて、パーカーを探そうかな。

 できれば、上から羽織るものも買っておきたいけど……また寒くなってからでいいかな。

 あ、あとで靴も買わないと。




 売り場を数分ほどブラブラと歩いた。そして、1つの結論を導き出した!

 う〜ん……。パーカーでいいかなぁ。シンプルに白いやつ。

 他にも、良さそうなのはあったけど、ミル曰く、


「う〜ん……似合わないな」


 だそう。

 ちなみに、黒か白か見てもらったら、即答で白だった。


 このダボッとした感じは前世と同じか。

 とりあえず、ゴースのところに行ってみようか。その前に『通話トーク』を発動させる。


『ラインか。どうした?』

『ああ、オレはもう決めたからさ、そっちに行こうと思って』

『なるほど。こっちにはミルも来てるよ。あ、そうだ。ミルももう決めてて、あとは俺だけなんだ。一緒に、決めてくれないか?』

『ああ、わかった。』


 ──プッと、切れた。

 相手の所在地がわかれば便利なんだけどなぁ。適当に探すか。




「──お、いたいた」

「おお、ライン! 早速で悪いんだが、どっちが似合う? ミルも決めあぐねてるんだが」

「そうなのか、ミル?」

「うん。どっちも似合うからさ。片方買って、バイトしだしたら買うんだけど、買われてたら嫌だろうからいい方を、と」


 服に関するこだわり凄いなぁ。

 服屋の店員にでもなればよかったんじゃ……。そんなこと言わないけど。


 で、件の服は……。

 一つは、白地に、腕の部分に黒のストライプが入ったもの。

 もう一つは、黒地に、白で十字の線が入ったもの。


 え……。これは……。


「十字のがいいと思う」


 仕方ないよなぁ。

 個人的に、縞々はちょっと……。いや、縞々はいいんだけど、黒と白はなぁ。


 本当に! あくまで! 個人的な感想です!


「ラインがそう言うなら、そうするか! さて、次はどうする?」

「靴しかなくないか? 時間もあと1時間切ってるし」

「僕も同意見だね」

「じゃあ、行こうか」




 はい、靴コーナーに到着!


「一緒に見て回るか?」

「靴だし、オレは一人で回ってるよ」

「じゃあ、ゴース。一緒に回る?」

「そうだな。ラインも何かあれば、『通話トーク』でな」

「おう!」


 さてさて、何があるかな。

 上着を見たとき、防具なんか置いてないかな……ねんて思って探したが、さすがになかった。


 防具はは防具屋に売ってるらしい。

 学校内にも、武器屋と防具屋はあるけど……修理専門だからなぁ。


 多分、ここにも装甲靴サバトンとかはないだろうな。何を買おうかな。


 前世で履いていたものといえば、ランシューがほとんどだった。

 他には、通学用の普通の靴ぐらい、か。通学用のもランシューだったか?


 できれば、普段使えるような、動きやすき、汚れにくいのがいいな。

 山に入ったり、授業で使ったり、こういうオフの場で使ったりできるやつ……。

 ないかな〜〜。ないわけないよな~~。




 そう思って、数分ほど物色していたら、


「──あっ、これいいかも……」


 それは半長靴だった。

 革製で、黒色。銀の留め具がついている。


 人気があまりないのか、それとも入荷したばかりなのか。全サイズ揃っている。


 ズボンや上着と違って、これは学校生活でも使うものだ。見た目だけで選んではいけない! 


 杞憂だった。


 試し履きしてみたが、とても動きやすかった。

 しかも、足にフィットする。これにするしかないな!

 決まった。『通話トーク』を起動させる。


『どうしたの、ライン?』

『ミルか。オレはもう決まったからさ。そっちに行こうかと思ったんだが……決まったか?』

『うん。僕もゴースも決めたよ。じゃあ、レジに行こうか。袋は持って来てる?』


 フッフッフ……。マイバッグ、持参してま〜す!


『大丈夫だ』

『わかった。先に買ってて』

『へ〜い』




 レジに持ってくと、


「──お会計は半銀貨5枚と銅貨4枚ですね」


 ……え? もう? バーコードリーダーはないのは知ってたけど。瞬だな。隣に置いてある箱に、数字が表示された。


 左から、0、0、0、0、5、4、0。

 多分左から、白金貨、金貨、半金貨、銀貨、半銀貨…………だろう。ただ、少しアナログっぽいな。


 金を払い、マイバッグに買った商品入れたら、ゴースたちも来て、ちゃんとみんなが支払いを済ませた後で一緒に店を出た。

 すると、ノヨたちも大満足な顔で出てきた。今から昼ごはんだ。


 ミルが、


「何か食べたいものある?」


 と聞いてきたが、全員が「ない」と答えた。


「なら、僕のおすすめ店に言ってみない? 昨日、近衛騎士の人に聞いたんだ。定食屋だけど」

「へぇ! じゃあ、そこに行こうぜ!」


 ミルに案内された店は、ザ・レストランって感じの店だった。

 中に入ってみると、店内は一面が木だった。テーブルも、イスも、カウンターも木製で、気の質感をそのまま残している。


「なかなかいい店じゃん!」

「それだけじゃなく、味も抜群の、隠れ名店らしいよ」


 早速席に座り、メニュー表を眺め、注文することにした。

 オレは、メニュー表を見たときから、もう、何にするかは決まっていた。

 ノヨが代表して、注文してくれた。意外と社交的なんだなと思った。


「豚カツ定食を3つ、唐揚げ定食を2つで」

「かしこまりました」


 オレは豚カツ定食だ。ロイズとゴースも、それを見て決めていた。


 この世界の豚ももどきだ。

 前、よその村に行ったときに偶然見かけたが、豚と言うよりも、イノシシに近かった。

 だが、名称は「ブタ」。三賢者がイノシシ型の魔物、ギープを家畜化したからだそう。


「お待たせいたしました、注文のメニュー、5品です。注文は以上でお揃いでしょうか?」

「はい」

「それでは、ごゆっくりどうぞ」


 さて、全員来たわけだし、


「「いただきます!!」」


 う〜ん!! やっぱ、美味い!! 同じ味だ。






 その後、ホームセンターで本棚を半銀貨4枚で注文し、後日、寮に届いた。

 ちなみに、本は買わなかった。

 空の本棚が部屋に置かれている奇妙な状況が後日、歓声することになる。 


 服屋で半銀貨5枚、銅貨4枚。

 レストランで、銅貨7枚。

 本棚で半銀貨4枚。


 合計、半銀貨9枚と銅貨1枚。所持金額、銀貨2枚と半銀貨2枚。




 その後、寮に戻り、晩ごはんを食べ、少し早めに寝ることにした。

 時間はまだ9時。寝るにはまだ早い。


 寮に帰ってきたのは、6時過ぎ。

 クローゼットに新しい服を掛けた。靴は、明日、早速履くとしよう。


 明日は、5時半起きか。目覚ましをセットして、眠りに落ちた。




 ……楽しかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る