第24話 森の探検
「はよっす!」
「おはよう」
食堂の入り口で、ターバを見かけ、朝の挨拶をした。
時刻は5時58分。で、食堂が開くのは6時。6時集合だから、少し早めだけど……これでいいのだ。
「他の3人はまだか」
「ああ、なんか、3人で泊まるとか言ってた」
「じゃあ、3人同時に……と、来たか」
「「おはよう!」」
「はよ」
「おはよ」
3人揃ってお元気ですなぁ。
ガチャッと音がして、扉が開いた。
「おはよう。早いねぇ」
「「おはようございます」」
「早く来た分、出来たてだよ。たんとおあがり」
愛想のいいおばちゃんだった。おばちゃんの言うとおり、確かにホカホカだった。
まあ、あいつらと食べる時も温かいんだけどな。
今日は少し多めに食べておこうかな。
パン4つ、野菜スープ、ベーコン、スクランブルエッグ、蒸した芋、牛乳。
昼ごはんはあるって言ってるけど、動くんだし、これぐらい食べてもいいだろ。
「にしても、今日は何するんだろうね」
クォーサの問いかけに対し、ヌーが、
「……狩りでしょ? あと、森の調査」
と、至極真当なことを言った。うん、間違ってはない。
「どっちが本題なのかって」
「オレは、狩りだと思うな」
「俺も同意見だ」
ターバも同じか。まあ、少し考えたらわかるよな。
「つまり……?」
「いや、入学したての生徒にこんなの任せるかって話」
「学年内で優秀って言っても、大した差はないしな。俺が聞いた話じゃ、覚醒者はいないらしい」
「……なるほど! ラインはともかく、ずば抜けて優秀でも、覚醒者でもない新入生を連れて森を調査するのはおかしい、ということね!」
「そうだ、ヌー」
最初に違和感あっただろ。
ただ、本当に森の調査も兼ねてはいるんだろうがな。
こうやって行くってことは、既に調査済みかな。
「まあでも、魔物の数が減っているのは事実らしいな」
「それは俺も聞いたな。たしかに、ゴブリンとか目に見えて減ってた」
「オレ、食料になるやつとしか会ったことないな。ゴブリンとか、どんな見た目なのか知らないし」
……なに? なんでそんな目をひん剥いて見てくるんだよ、ターバ?
「狩りしてたらゴブリンぐらい見るだろ?」
「いや、全然?」
「同じく」
「私はたまに見たな」
ヌーとクォーサは見たことがない、ヤマルはたまに、か。
「いや、クォーサ、私たち狩りに行ったことないでしょ」
「森には入ったことあるでしょ?」
「歩いてすぐのところにある木の実を摂りに行っただけでしょ!」
なんだよ。 クォーサって、天然? それとも……ただの馬鹿?
オレは後者を主張する。
「結局わからずじまい、か」
「話変わるけど……昨日は、どうだった?」
「トランプ勝負か? 俺が勝った」
「正確には、ターバが3戦2勝、クォーサが3戦1勝。ちなみに、ポーカーね」
なるほどなるほど。つまり、だ。
「ターバ、クォーサ。2人とも、無敗伝説終了したんだな」
「うる──」
「──そろそろ時間だな。行こうか!」
ターバが「うるせぇ!」って言いそうだったから遮ってやった。
それに、もう45分だ。いい時間だろう。
「ねぇ、服ってこれでよかったと思う?」
「みんなそんなもんだろ」
全員村出身で、そこで着ていた服を着ている。
オレも村での服装だ。昨日買ったのは、こういう場では着ない。
するとヤマルが、
「ライン、その靴かっこいい!」
「ああ、これか。昨日買ったんだ。一目惚れ」
「へぇ、いいセンスだね。」
いいせんす……? いいセンス!
たしかに、そう言ったな!
フッフッフ……お主も良き目をしておるのぅ。
6時55分。
オレたちは今、体育館前にいる。すると、大きな荷物を抱えた、私服姿の先生がやって来た。
「みなさん、早いですね。まだ5分前ですよ」
「「おはようございます」」
「はい、これ」
そう言って、先生が持って来たのは──
「……武器?」
オレには、鉄棍、弓、ナイフ。
鉄棍は、村で使ってたのと同じく、鉄でできている。
料金はかかるが、他の材料で作ることも可能だそうだ。ミスリルや金、銀を使ったりと。
芯だけ変える、というのもあるらしい。その場合、料金は少し控えめ。
で、ターバには、片手剣が2本と、弓矢。
「ターバって、双剣使いなの?」
「うん。武器は基本何でも使えるけど、一番使いやすいのがこれでな。両手にあると、収まりがいい」
「そうか、何か他の武器を使いたくなったら、いつでも言ってくれ」
「おう!」
ヌーとクォーサは
ヤマルは槍を。
「おお、ヤマルは槍を使うのか」
「うん、これが一番使いやすいの。薙刀とか、中距離武器は全部使えるわよ」
先生は剣か。
あれ、じゃあこれ、めっちゃいいパーティーじゃない?
近距離2人、中距離1人、遠距離2人。オレはどこでもいけるから、番外が1、か。番外ってなんだよ。
「にしても、先生。これどこから持って来たんですか?」
「武器庫から借りてます。そのうち、授業で使うことも増えると思います」
「先生の剣は?」
「これは僕の私物です」
私物……。
まあ、冒険者とか近衛騎士なら、不思議ではないか。
冒険者を育成する学校の先生だし、卒業生だろうからな。
「さて、では行きましょうか」
先生を先頭に、オレとターバ、ヌー、クォーサ、ヤマルの順で、北門を目指した。
北門を潜ろうとすると、眠そうに顔を顰めた見張りが声を掛けてきた。
「なんの御用で?」
「狩りと、調査を兼ねて森に入ります」
「証明書は? 武器は預けているか?」
「えーと……はい! 武器は、借り物です。新入生なので」
「確かに。よし! 通れ!」
ようやく学校外に出れた!
門兵がちゃんといたんだな。領都に入るときも聞かれたが、武器は門兵に預けるんだな。
持ってなかったからよかったけど。帰りは、さっさと出れたな。
門から出て少し進むと、左手に湖が見えた。
「あそこで釣りができますが、禁止されています。みなさんの使用する水の水源がここなのでね。浄化されているとはいえ、魔法具ですし、万全ではないのでね」
へぇ! ちゃんと浄化装置があるんだな。
いや、そりゃあるだろうな。領都では臭いはなかったし、村ですら上下水道がちゃんと整備されていたんだ。
「それと、ラインくん、ターバくんは、いつでも矢を放てるようにしておいてくださいね」
「「了解です!」」
ってもオレは、狙いを定めて弦を引き、水晶で矢──『
『晶矢』なんてのも考えたけど、なんかいまいちパッとしないなってことで、『晶弓』だ。
「あと、今回は森の調査を兼ねているので、まだ魔物は狩らないでくださいね。ゴブリンとか、人に害を為し、食べることのできない魔物は、言ってくれればいいですけどね」
「「わかりました!」」
あっぶねー。
カクトツが見えたから、つい反射的に弓を構えようとしてた。
「ああ、カクトツですか。美味しいですけどね、今狩ったら持ち帰りが面倒なので、やめてくださいね」
「……へい」
やっぱバレてた。バレるも何もないんだけど。
するとヌーが、
「あれ……? 先生、そう言えば、昼ごはんは持って来なくていいって言ってましたよね? どうするんですか?」
あ……。そういや、そんなこと言ってたな。
「魔物を1匹狩って食べようと思います。ちゃんと、どこで食べるかを考えているので、そこに着いてから、狩りをしてもらいます。分担としては……ラインくん、ターバくんの2人で1匹、狩って来てください。他の3人は、近くに生えている野草を集めてください。着いたら、また指示します」
オレとターバで1匹狩ればいいのか。簡単だな。
数分ほど歩き、ようやく先生の言う目的地に到着した。
そこは、半径20メートルほどの広場になっていて、木漏れ日が差し込み、何やら神秘的な雰囲気を見せていた。
こんな広場の真ん中には、妖精とかがいるのが物語やゲームの定番だが、そんなものがいるはずもなく……。
「さて、では、行動を開始してください。あと、食べられる野草はわかりますか?」
「大丈夫です」
ヤマルは知ってるのか。
「ヌーさんとクォーサさんは?」
「少しだけ知ってます」
「ヤマルさんは結構知ってるんですか?」
「はい。村のみんなでよく、採りに行っていたので」
「ではヌーさん、クォーサさんは、ヤマルさんと野草の採取をお願いします」
オレとターバは、少し歩いたところで1匹のカクトツを発見した。
「またカクトツか。あれにするか」
「そうだな、2人同時に射るか?」
「そうしよう。外すなよ?」
「大丈夫だって!」
ささっと仕留めてしまいますかな。
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