第22話  レッツ・ショッピング!

 ん……。朝か……。

 今日はショッピングか。


 今は6時……。いつも通り目が覚めたか。

 目覚し時計が鳴る直前に目が覚めてしまう。

 前世じゃ、目覚し時計が鳴っても気づかなかったのになぁ。さてさて、シャワーを浴びてきますかな。




 食堂! 人っ子一人いません! 

 そらそうだ。みんな寝るわな……。

 

 と、食堂の入り口で突っ立っていたら、


「おはよう、ライン。早いね」

「ロイズか。おはよう。そちらさんも相変わらず早いな」


 そう挨拶をしたが、


「私もいますよ〜」


 と、後ろからもう一つ、声がした。


「あ、ノヨもいたのか。おはよう」

「おはようございます、ラインさん」


 ロイズよりも小柄だからわからなかったぜ。


「ミルとゴースはまた来るかな」

「時間までまだありますからね」

「ご飯取っておこう。そろそろ時間だから来るはず……」


 時間は……25分か。

 ちなみに、今は私服を着ている。


 大丈夫か、と心配になったが、全員村出身で似たような服だったから、結果的にいろいろ安心だ。

 いや、これがこの世界では普通なんだけど。


 けどやっぱり、都市に行けば少しシャレオツなのが売ってあるらしい。

 村の服は、完全に動きやすさ重視だからな。

 農作業があるからそれでいいんだけど、今は違うからな。


「──おはよう」

「……おはよう」


 ミルとゴースが来た。ゴースは相変わらずの寝ぼけ眼だ。起きてんのか?


「「おはよう」」


 今日のオレのメニュー。

 毎朝お馴染みのパン。いつもより1つ多くして、4つだ! 野菜スープ。以上!! あ、あと牛乳な。

 かなり少なめだ。


 みんなも同じメニューだった。ただの偶然? そうじゃない。

 理由はただ1つ!! 領都の美味いものをたらふく食べるためだ!!


「「いただきます!!」」


 ん〜!! 今日も美味〜〜い!


「食べたら出れますか?」

「オレは大丈夫だ」

「僕とゴースも大丈夫だよ」

「うん、大丈夫」


 ちゃんと肩掛けバッグ持ってきてるし。財布も入れたし。

 暖かくなってきたから、上に羽織るものは持ってこなかったけど。

 パーカーとか売ってないかなぁ。


「じゃあ、7時の便に乗れそうですね」

「帰りは何時頃の予定だ?」

「6時頃にはこちらに戻ってきて、晩ごはんにしたいですね」


 そこにロイズさらに質問を重ねた。


「どこを見る予定?」

「私は服屋を覗きたいな、と。皆さんはどうですか?」

「オレは、同じく服屋。あと、本屋が見たいかな。三賢者とかについて知りたいし、物語も読んでみたいしな」

「三賢者に関しては、授業でも習うよ? そのあとでもいいんじゃない?」


 授業でやるのか。それほど重要なのか。


「そうか。でも、物語もいいのがあれば買いたいから、優先順位は低くて構わない」


 三賢者が書いたもの、三賢者に関する記述があれば見たかったが、いいか。


「僕は特に見たいところはないね。ゴースも何も言ってなかったし。だよね、ゴース?」

「……ああ。俺も服買いたい」

「私は特に……。ただ、いろいろ食べたい」


 ゴース、まだ目覚めないか。

 ロイズは意外と食べることが好きなんだろうな。朝からよく食べるし。


「──あ、オレ、食材を少し買いたかったんだ」

「なんで?」

「なにかしら作ってみたくてな。せっかく部屋にキッチンがあるんだし」

「必要なものはある程度なら、寮の入り口にある紙に書いて出せば、届くよ? まあ、品物は限られているから、そこにないものは買うしかないけど」


 ミルがよく知っているのか、オレが知らないだけなのか……。


「あ、でも、作り方わかんねぇや」

「……何を作るつもりだった?」

「間食とかだな」


 できれば、ケーキとかプリンとか作ってみたかったんだが。

 よくよく考えれば、作り方しらないんだよな。三賢者よ、この世界におやつの作り方を残していてくれ!




 朝ごはんを食べ、今は学校の正門を出たところにある、馬車乗り場にいる。

 時刻は6時55分。


「たしか、3番の馬車ですから……」

「──あれだな」


 目当ての馬車を見つけた。

 大抵の馬車は、領都が終点だ。3番の馬車は領都直行便。


 領都の他に、いろんな村に行く馬車も多くある。


 領都までは徒歩1、2時間だが、馬車に乗ればたったの20分で着く。


 馬車を引くのは馬ではない。

 馬という名で呼ばれてはいるが、正式名称はアヌース。見た目はほとんど馬だけどな。馬よりも小さい。

 でも、馬力は馬以上っぽい。だって、1頭で馬車1つ引けるんだ。


 馬車1つで、およそ20人乗れる。

 そう考えれば、アヌースという生き物がどれほど凄いのかわかる。徒歩1時間の距離を10分で駆ける。車と同じくらいか?






 馬車に乗り、20分後。オレたちはようやく領都に入った。

 領都は城壁に囲まれていた。冒険者学校みたいに、山や森に面している場所だけ……ではなく、全方位が囲まれていた。

 門の前で馬車を降り、検問を突破して、ようやく領都に入ることができた。

 検問は、武器の類がないか調べられただけだった。


「ここが領都かぁ」

「人が多いですね」

「こんなたくさんの人、初めて見た」


 見渡す限り、人……人……人!

 そう言えば、村の冒険者たちのホームがここだったな。今日は日曜だから、ここにはいないか。


 にしても、こんなに人がいるとは。

 開店、新装直後の大型ショッピングモールぐらいかな?


「まずは、服を見に行くか?」

「そうだね」

「服屋は、おすすめの店を冒険者の人に教えてもらいました。そこでいいですか?」

「問題ない。」

「俺もそれで構わない」




 ノヨに案内された店は、とても大きかった。

 2階建てと低めだが、使用している土地が多い。冒険者学校の体育館ぐらいか? いや、それより広そうだ。


「でかいなぁ」

「体育館の半分ほどの面積があるそうですよ。はい、地図です」


 この店が1番大きい。けど、それ以前に領都が広すぎる!

 ……いや、領主の館が1番大きい。この服屋も大概だけどさ。


「領都広!」

「村いくつ入るんでしょうか?」

「王都はもっと大きいと聞く」


 領都何ヘクタールあるんだよ? いや、キロヘクタールか? 

 それより広い王都って……。まるで想像がつかない。


「この服屋は、王国最大の服屋で、各地に支部を出店しているんです!」


 瞳が……輝きすぎている! 服大好きなんだろうなぁ。女の子らしい……のか? 女の子らしさがわからない。


「では、早速入りましょうか」


 本屋の18禁コーナーを思わせるような布の扉をくぐり、中に入った。

 入ってすぐに目に入ったのは、大量の服。

 この街の人口より多いんじゃないか、と思える。それぐらい大量の服がそこにあった。


「いらっしゃいませ。初めてのご来店ですか?」

「はい」

「では、こちらをどうぞ」


 そう言って、一人一人に紙が渡された。案内図だった。

 ショッピングモールかっての。


「それでは、ごゆっくりどうぞ。何かありましたら、近くの店員に、お気軽にお尋ねください」


 えーと……メンズ、レディースで別れてる。


「じゃあ、ここで別れようか」

「それがいい」

「終わったら、『通話トーク』で連絡を取ればいいね」

「目安は、昼前にしておきましょうか」


 さてさて、メンズは2階か。

 ゴース、ミルと一緒に2階へ行き、服を見ることにした。

 向かって左側に靴のコーナー、正面が服(上着)、右側にズボンか。で、斜め右方向に下着コーナーか。

 やっぱ、まずは右側でしょ。決めにくいズボンから選ぶ。


「ここからは別々で行動するか?」

「俺はミルといる。こいつ、結構おしゃれだからな。ラインも、自身なければ見てもらったほうがいいんじゃないか?」

「そうなのか!? じゃあ、自分で決めたあとで見てもらうよ」

「ハハ。感覚的に選んでるだけなんだけどなぁ」


 ミルよ……。お前、すげぇな。


 ──と思ったら突然『通話トーク』がかかってきた。


『どうした、ターバ?』


 誰からの連絡なのかわかるから、便利だよな。


『ライン、俺今、先生と一緒なんだけどさ』

『うん。それで?』

『明日、貸出用の武器を使うらしいんだけど、ラインの武器は弓と棍でいいかってさ』

『ああ、それでいい。ただ、矢はいらないって伝えてくれ』

『わかった』


 矢は自分で作ればいい。

 というより、自分で作った、水晶の矢の方が威力が高いし、硬いし。

 細工プログラミングもできるしな。


『それと、これは別件なんだけどさ。明日、参加する5人で朝飯を食べようと思うんだけど』

『もちろん、構わない。それより、そうしようと思って、夕方にでも提案しようと思ってた』

『時間は、6時でいいか? 時間の変更があって、集合は第一体育館前に、7時になったから』

『わかった、ありがとな』


 プツッと、『通話トーク』が切れた。

 時間の変更……か。まあ、明日は1日いないって、4人には伝えたから別にいいんだが。

 時間を前日に変更……それも早めるって、どうなんだ?

 少々思うところがないこともない。


「終わったか?」

「ああ、待たせたな。明日の事で、ちょっとな」

「そうか。さて、それじゃあズボンコーナーを見に行こうぜ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る