第59話 山田邦弘の失ったものと作戦決行
この世界は広い。
だけど俺達の高校はまるで箱庭だ。
あくまで広いとは言えない。
俺はそう考えながら山田を打ち負かす方法を考える。
そしてあっという間に時間は過ぎ去り。
俺は計画の為に始動し始めた。
どういう計画か。
それは.....まあこんな計画。
山田の頭の中を改造計画.....というか。
取り敢えず見てもらおうと思って.....山田を呼んだ。
「此処は何処かな。僕をどうするつもりだい。僕も暇じゃないんだ」
「.....来てくれた事には感謝だが。お前はどうも金銭面とかで捻くれているみたいだからな。取り敢えずユナとか俺達の活動の事を知ってもらおうと思ってな」
「.....それはどういう意味だい?」
「金と権力であれこれ出来ると思ったら大間違いだという話だよ」
「それ以外に必要無いだろう。この世の中は」
俺は、それが間違っているんだ、と言いながら歩く。
そんな会話をしながら俺以外は何も知らないユナ一家と何も知らない山田を引き連れて俺達は羽田の家に来た。
そう。
何をするかといえば山田の減らず口を壊そうと思っている。
それはまあ目標の、ついで、だが。
俺は思いながら居るとスキンヘッドにしている山田にユウちゃんが手を握った。
それから、ねえねえ。おにぎりさん、と言う。
俺達はブハッと噴き出してしまった。
「な.....。僕はおにぎりでは無いぞ」
「良いじゃねぇか山田。そういうのも似合っているぞ」
「そうだね。アハハ」
「.....君達。僕を馬鹿にすると.....」
「良いから。取り敢えず入った入った」
そんな事を言いながら、お、おい、と言う山田の背中を押してから。
そのまま羽田の家に入る。
すると.....板前や女将が出て来た。
頭を下げてこちらに向く。
ユナは目を丸くする。
山田も目を丸くする。
そして現れた山部。
それから宣言がなされた。
「森本さん。貴方に経験してもらうわ。そして山田。アンタには色々と活動を見てもらうから」
「.....?」
「え?山部.....さん?」
山部は腕を組んでから、むふー、と息を出す。
それから偉そうなツラを見せる。
この野郎、と思ったが。
まあ良いか、と思いながら見ていた。
「これは擬似旅館よ。.....貴方と貴方の家族が泊まる為のね。何日も前から長門と一緒に計画していたの」
「.....え.....」
「擬似旅館ってなーに?」
「旅行気分よ!!!!!つまり!!!!!」
と満面の笑顔で言ってくる山部。
極端過ぎるだろ、と思いながら額に手を添える。
山田は、それと僕が何の関係があるんだい?、と言ってくる。
そんな山田に山部は眉を顰めて、アンタは権力の座に居座っているからあまり分からないでしょうけど。英さんっていう森本さんのお父様は全身が癌で動けないのよ。あまりね。アンタにどれだけ下々が苦労しているか教えてあげる、と言う。
ピクッと同じ様に関連している山田の目が動いた。
しかしご解説感謝です。
俺は苦笑した。
「何だそれは。そんな事をして何になる」
「ちょうど良い機会だったしね。.....アンタに全てを教えてあげるわ。金じゃどうにもならない事もあるって事を。初心に帰らせてあげる」
「.....」
山田は見るからに不愉快そうな顔をする。
俺はその姿を見ながら少しだけ息を吐いてから。
そのままユナを見る。
ユナは俺に対して涙を浮かべていた。
そんな事を計画してくれていたんだね、と。
「.....そうだな」
「.....有難う。藤也」
「おう」
そして山田を見る。
山田は眉を顰めたままだった。
俺はその顔に真剣になる。
お前は金が全てと思っているかもしれないが。だけど今この場に来たって事はお前も変わりたいんだろ。色々と、と言いながら山田を見る。
山田は目だけ動かす。
「変わりたい?この僕が?」
「.....お前が来たのはその証拠じゃないのか。お前らしくもない」
「.....僕はただ興味が湧いただけだ。下らない下々の動きに」
「そうか。まあそれならそれでも良いけど」
そんな感じで喧嘩している様な感じを見せていると。
ユウちゃんが、ダメー!!!!!、と言って割って入って来た。
それから、喧嘩はダメ!、と言いながら俺達を交互に見る。
さっきから何なんだいこの子は?、と山田は顔を顰めて言う。
「山田。お前は父子家庭とか母子家庭ってのを知っているか」
「.....知っているね。母親が居ない又は父親が居ない家庭だね」
「そうだ。ユナの家は父子家庭だ。母親が居ないんだ。.....この前亡くなった」
「.....!」
「だけどな。それでも幸せなんだよ。お前は親の片割れが居ない様だが。親を失った悲しみとかそういうのすらも忘れたか。こんな汚い真似をしやがって。.....亡くなったお前の親御さんは泣いているぞ」
俺は言いながら山田を見る。
すると山田は眉を思いっきり顰めた。
母親が居ない、か。
何故それを知っているのかな?、という感じで。
俺は、お前の事は結構有名って事だ、と言いながら前を見る。
「お前も分かるだろ。そこそこに片割れが居ないので大変なのは。だけどお前は偉そうにしている。その部分だけ破壊してやるからな」
「僕を土下座でもさせると。.....そんな事が出来る訳無いだろう。馬鹿なのか」
「.....そこまでとは言ってないんだが。.....だけどな。お前のその偉そうな口を叩き潰してやるよ。減らず口ってやつを」
「.....」
「.....」
俺達は顔を見合わせてから。
そのまま山田を見る。
山田は顎に手を添えながら、まあ良いだろう。そこまで言うならしかと見てあげるよ、と言った。
俺はその姿を見ながら、じゃあ作戦開始だ、と山部に告げる。
すると奥から袴姿の羽田がやって来た。
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