例えばこの世界に絶望があったとしても光は差すだろう

第49話 願いを叶える為に

『.....そうか。かなり厳しいか.....』


「だな.....うん」


『正直に言って朗報を期待していたんだけどそうはいかなかったな。.....すまない』


「.....謝る必要は無いだろ」


自宅トイレにて。

また篭ってから羽田と話していた。

羽田は眉を顰めている様な感じで話している。

俺は電話してきた羽田にこう伝えた。

実はユウちゃんが家に来てな、と。


『それは預かって欲しいとでも言われたのか』


「そうだな。それで今は四葉のクローバーの冠を作って遊んでいる」


『.....四葉のクローバーはユナの父親の為かな。.....成程な』


「なあ。羽田」


『何だい』


「お前は神様ってのが居るって信じているか?」


神様か。

俺はそんなものは信じないタイプだな、と答える羽田。

それから、神様なんて信じてどうにかなるならとっくに祈っているしな、と答える。

言葉に、だな、と返事をする。

天井を見上げながら。


「.....俺も信じれらないな」


『日本では仏様と呼ばれるかもしれないがそれも信じられないな。.....不謹慎だけどな』


「そうか」


『ユナにばかりこの様な目に。.....信じられる事は無い』


俺はその言葉を聞きながら、だな、と返事をする。

それから目の前のカレンダーを見る。

カレンダーを捲ったりする。

そうしていると、一応だが優子とかが向かっている様だ。病院に。俺はちょっと用事で出られないから.....侍女を向かわせた、と言ってくる。


『仲間なのに何も出来ないのが歯痒い感じだ』


「こればっかりは仕方が無いだろ。家族間の問題だしな」


『.....そうだな』


「だから今は祈るしかない。取り敢えず」


『だな。取り敢えず明日も向かおう。俺は』


「そうか」


それから羽田は、じゃあな。ちょっと用事があるから、と電話を切った。

俺は、じゃあな、と返事しながらそれを受け入れる。

そうしてからまた天井を見上げる。

どうしたものか、と思いながらトイレから出る。

すると目の前にユウちゃんが立っていた。


「はい!藤也お兄ちゃん!」


「.....これは何だ?」


「栞だよ。お兄ちゃん」


「.....そうなんだな。こういうものまで作ったんだな」


「そうだよ!藤也お兄ちゃんの為!」


「.....元気だね。ユウちゃん。心配にならない?」


確かに心配にはなるよ。

でも藤也お兄ちゃん達が居るからもう大丈夫なんだ!、と笑顔を浮かべてから俺を見てくるユウちゃん。

俺はその姿に、そうか、とだけ答えながら。


そのまま唇を噛む。

何も出来ないのが歯痒い。

本当に、だ。

人の言葉しか聞けないのが.....無念だ。

胸に手を添えて、だ。


「ユウちゃん。きっと良くなるからな。親父さん」


「うん!四葉のクローバーがあるから大丈夫!」


「.....ああ」


そうしているとユナからメッセージが入った。

俺はビクッとしながらメッセージを読む。

そこにはこう書かれていた。


お父さんから伝言。もし私が死んだら藤也くん。本当に色々と頼むね、だって、と。

俺はまた唇を噛む。

そんな事を言わないでほしい、とは思った。

だけど.....。


(ユナ。親父さんの調子は良くないのか)


(良くないと言えばそうなるのかもしれない。だけど私は信じているよ。空に祈ってる。お父さんを助けてって)


(俺も彼氏として何か出来れば良いが。歯痒いな本当に)


(君はしっかりやってるよ。色々と。彼女である私を助けたりしているから)


(そうは言ってもな)


(君はしっかり戦っているから。だから私があるから)


泣かないでね、とユナは言ってくる。

俺は目の前の聖羅とユウちゃんを見る。

2人共に不安そう顔をしていた。

俺は一回だけ顔面を平手打ちしてから、よし!、と言う。

それから文章を打つ。


(ユナ。大丈夫だ。俺も聖羅もユウちゃんもみんな親父さんの無事を祈っている。勝ちはあるからな)


(藤也有難う。何時もの藤也だねそれこそ)


(そうだな。もう弱音は吐かない。目の前に待っている人達が居るからな)


(有難う。藤也。愛してる)


(ああ。俺もだ。帰りを待っているから)


言いながら互いに別れの言葉を言って俺はスマホの画面を切る。

そしてユウちゃんを見る。

ユウちゃんは驚きながら俺を見ていた。

平手打ちしたのを驚いている。

そのユウちゃんに、次は何を作ろうか。四葉のクローバーで、と言ってみる。


「もー。お兄ちゃん。痛かったでしょ?」


「.....いや。すまん。弱気になっていたからな。だから喝を入れた」


「だからって.....もー」


「.....聖羅」


「何?」


「有難うな。お前という妹が居てくれたお陰で何だか気楽だ」


もー.....、と頬を朱に染めながらも笑顔を浮かべてくれた聖羅。

そして、じゃあ一緒に遊ぼうか。お兄ちゃん、と言ってくる。

俺は頷きながらユウちゃんを見た。

ユウちゃんは四葉のクローバーを見ながら俺達を見る。


「こうして見ると何だか娘の居る家族みたいだね!」


「.....えぇ!?」


「ウェ!?」


俺達はビックリしながら互いの顔を見る。

それからクスクスと苦笑した。

そしてユウちゃんを見る。

ユウちゃん。私達は血が繋がっているから無理だけど.....でもユナお姉さんとお兄ちゃんは結婚出来る。そうなったら.....色々と変わるね、と言い聞かす聖羅。


「そうなの?」


「うん。私達は2人の妹になるよ」


「そうなんだ!楽しみ!」


「おいおい!気が早いわ!!!!!」


「え?でも結婚前提でお付き合いしているよね?」


「早いわ!!!!!」


もう婚約の話か!?ふざけるな。

早すぎるわ。

俺はツッコミを入れながら苦笑いを浮かべる。

全くコイツは、と思いながら。

それからリビングに戻って来る。


「お兄ちゃんは何を話していたの?トイレで」


「羽田だ。ちょっと色々な」


「そうなんだね」


「ああ。変な話じゃない」


それからジュースを持って来た聖羅に頭を下げてから。

そのままユウちゃんを見る。

ユウちゃんは絵を描いていた。

それは.....四葉のクローバーと.....家族の絵を。


「.....それは母親の絵か」


「そう!お母さん!.....今はほすてす?で帰って来れないけど」


「そうなんだね.....」


そうだな。

確かに森本には母親が居るのに俺達の家族に預けてきたもんなユウちゃんを。

俺は、みんな忙しいんだな、と思いながらユウちゃんを見る。

すると、お母さんとお父さんって学生時代に出会ったんだって!、とユウちゃんは言ってくる。


「まるでお姉ちゃんみたい!」


「.....そ、そうか。ま、まあそうだな」


「うん。あ。そうそう。藤也お兄ちゃん。.....私は泣かないから」


「.....?」


「.....だからお姉ちゃんをずっと泣かせてあげて。お父さんの為に」


俺達は、!、と頭に浮かべる。

それから聖羅と見つめ合う。

聖羅は悲しげな顔を浮かべた。

その聖羅を見てから俺はユウちゃんを見る。

ユウちゃんは笑顔だった。


「姉妹の絆だな.....」


「.....だね。お兄ちゃん」


こんなに良い姉妹だ。

だから天罰を与える様な真似は止めてほしいもんだな。

俺は考えながら眉を顰めつつ絵を見る。

4人家族の絵を、だ。


「ユウちゃん。.....お父さんがもし治ったら何がしたい」


「家族旅行!」


「.....!.....そうなのか」


「うん!」


俺はその言葉にスマホを取り出す。

それから電話を掛けた。

その相手は.....山部である。

すると山部は、何よ、と電話に出た。


「山部。少しだけ頼みがある」


『改まって何。.....というか何の頼み?』


「子供の願いを叶えてやってほしいんだ。えっとな.....」


俺は状況を全て説明する。

すると山部は、それじゃあ羽田さん達にもお願いしましょう、と言い出した。

何をお願いするんだ。

俺は考えていると。

ニヤッとしながらな感じで山部は説明を始める。


『共同でこの近くに旅行出来る臨時旅館を創るのよ。協力してもらって。板前さん達も呼ぶわ』


「.....お前正気か。.....そんな馬鹿な事が出来る訳無いだろ」


『何?アンタ子供の願いは叶えない訳。散々色々と散らかしといて』


「いや。そんなつもりは無いが.....」


『ならやるわよ。.....ノーとは言わせないわ』


「.....マジか.....」


コイツは馬鹿なのか正常なのか。

俺は思いながら目の前の遊んでいる2人を見ながら盛大に溜息を吐く。

それから近所旅館創造計画がスタートした。

この日をもって、だ。

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