第48話 倒れたユナの父親とユウと
「中園先生」
「はいはい。何でしょうか」
授業が終わってから。
中園先生に聞いてみる。
その中園先生は低い身長ながら母性豊かに聞いてくる。
何でしょうか?、とニコニコしながら。
俺はその中園先生に話す。
「羽田の事.....結構知っているみたいですね。どれぐらい知っているんですか」
「.....最近はご両親と仲が良くなったという事だけ聞きました。羽田くんのご親族が亡くなられている様でそれで仲が拗れた様ですね」
まあこれ以上は内緒ですけど、と言いながら俺を人差し指を口元に添えて見てくる中園先生。
俺は見開きながら、そうなんですね、と聞く。
すると背後から、そうだな、と声がした。
見ると羽田が苦笑気味に立っている。
「俺の母親の事だな。仲が拗れた原因は」
「.....そうなのか?」
「ああ。母親を愛しいと思った親父の影響で拗れていったんだ。でも君と周りのお陰でそこそこの仲にはなったよ」
「そうなんだな。.....仮にも良かったな」
「そうだな。.....中園先生は元婚約者の親戚に当たるんだ」
「.....そうなのか。だからこんなに」
そういう事ですね、と笑みを浮かべる中園先生。
話せないのは先生としての役割です、と笑顔を浮かべた。
俺はその姿に柔和になる。
中園先生は羽田を見た。
それから、貴方は本当に生徒会長に立候補するんですか?、と聞く。
「優柔不断ですが.....取り敢えずは立候補してみます」
「.....そうですか。決して無理はしない様に」
「はい。.....しかし相変わらずですね。貴方は」
「私は教職員として生徒を守る立場にあります。ただそれだけです」
「.....それだけ、ですか。でも中園先生はそれだけじゃ無い様ですが」
「まあそこら辺はご想像にお任せです」
では私は仕事がありますから、と行ってしまう。
俺はその姿を見ながら羽田を見る。
羽田は、長門。自販機でも行かないか、と行ってくる。
その言葉に、まあそうだな、と答えた。
すると、次の時間は数学だな、と羽田は言ってきた。
「数学は得意じゃなかったかお前」
「まあそうだな。数学に拘らず色々な事が得意だ」
「欠点としては人付き合いがあまり好きではない感じか」
「そうだな。それ以外は完璧だと思っているがな。自分でも」
「.....まあ確かにな」
やれやれ。
それもあって何故このルックスなのか。
神様って奴は最低だな本当に、と思いながら自販機の近くに来る。
それからお汁粉を買ってみる。
っていうか何故こんな物を買ったのか.....。
「この時期にお汁粉を飲むとはな。珍しい」
「何でか分からんが糖分摂取したくなった」
「そうか。それは結構な事だ」
「さっきの時間で力を使い果たしたかもな」
「確かにな。ちょっと難しかったか」
そしてお汁粉を飲む俺。
すると羽田がとんでもない事を言い出した。
君はアニメが好きだったな。俺にもアニメの事を教えてくれないか、と。
噴き出してしまったのだが。
いきなりどうした。
「アニメってお前。どうしたんだ」
「.....友人の知る事を俺も知りたいからな」
「そうは言ってもハードルが高いって。アニメだぞ」
「そうだな。よく分からないが絵が動くんだろう。ジブ◯とかなら嗜んだからな」
「.....いや。次元が違う」
次元が違い過ぎる。
いきなり萌えアニメとか見せたら卒倒するだろうなコイツ。
俺は考えながらそれは無い、と思いながら大人向けアニメを紹介した。
っていうのもエロいアニメじゃない。
ハードボイルド的な。
「それはシナリオ的に面白そうだな。.....どうしても今流行りの萌えの様なものが得意じゃ無いからな」
「それはハードルが高過ぎる。.....お前にそれは必要無い」
「そうか。そう言うなら分かった」
それから羽田はペットボトルを捨てながら。
そのままベンチに腰掛ける。
そうしてから、改めて言うがユナと付き合ってくれて有難うな、と言ってくる。
何だコイツは改まって。
不気味だ。
「ユナは.....特に気に掛けないといけない女の子だからな」
「.....そうだな。それは分かってる。.....彼女の父親が.....」
そこまで言ってからいきなりメッセージが立て続けに来た。
俺は、?、を浮かべながら開いてみるとユナだ。
ゴメン。藤也。今日一緒に帰りたかったけどお父さんが倒れたみたい、と書いてあった.....え。
愕然としながら、大丈夫なのか!、と送る。
(早退して病院に行ってくる。ゴメン)
「マジかよ.....」
「どうしたんだ?」
羽田が心配そうに俺を見てくる。
俺は全て説明した。
すると羽田は眉を顰めて顎に手を添える。
それは良くないな、と言いながら。
放課後に病院に行くか、とも。
「.....いや。そっとしておいた方が良くないか」
「.....そうだな.....それもそうか......」
「.....どうしたんだお前」
「いや。慌て過ぎたな。後悔しない事をやってほしいからな。例えば.....俺の母親の様に突然亡くなる可能性だってあるんだから」
羽田は言いながら真剣な顔で校舎を見る。
俺は見開きながらもそれ以上は聞かない様にして缶を捨てる。
取り敢えず情報が更新されるまでは何もしない様にしよう、と思いながら。
そして放課後になっても情報の更新は無かったが。
夜になってメッセージが来た。
☆
そこにはこう書かれている。
ゴメン。遅くなって。もう長く保たないかもだってお父さんが、と。
俺は唇を噛みながら、そうか、とだけ送る。
すると、私って何か間違ったかな、と送ってきた。
そんな事は無い、と送る。
それから、間違いって何だ、と送ると。
ユナからは、私の行いが悪かったのかな、と来た。
俺はそんな事は無い俺の彼女なのに、と送る。
「.....」
(私にはバチが当たったのかな。耳にイヤリングとかして不良っぽかったから)
(そんな事は無いって言っているだろう。幾ら何でもそれは有り得ないし人にはそれぞれあるんだから)
(だよね。でもその。ユウが可哀想で仕方がなくて)
俺は眉を顰めながらその言葉を見る。
泣いているのだろうけど。
返事が遅いから。
だから俺は優しく返事をしていた。
(でも確かに私が泣く訳にはいかないよね。有難う。藤也)
(俺なんかで良かったら助けになるから。相談してくれ)
(流石は私の彼氏だよね)
(まあ確かにな。でも彼氏じゃなくても救ったと思うから)
返事をそう書きながら送信する。
すると数秒経ってから、愛してる。藤也、とメッセージが来た。
俺は、そうだな。俺も愛してる、とメッセージを送る。
そうすると、今日はお父さんの看病するから明日も行けないかもだけど宜しく、送ってきた。
俺は、そうだな。大丈夫だ、と送る。
(お前が居ない分は穴埋めするから)
(うん。それでお願いがあるんだけど。心からのお願い)
(何だ)
(ユウを暫く預かってくれない?)
(分かった。今何処に居るんだ。ユウちゃんは)
(多分もうちょっとでそっちに着くと思う。宜しく)
聖羅が特によく分かると思うなこの分野。
俺は考えながら直後に鳴ったインターフォンに、はい、と答える。
目の前にユウちゃんが居た。
その姿を見ながら聖羅と一緒に出る。
ユウちゃんは悲しげな顔で立っていた。
「ようこそ。この家に」
「だね。お兄ちゃん」
「.....お邪魔します」
「畏まらなくて良いよ。この家は君の家と思ってくれれば」
「.....うん。藤也お兄ちゃん」
まあそれは.....そうだろうな。
悲しげな顔がなかなか気分が上がらない様だ。
それは悲しいよな。
親父さんがあんな目に遭っているんだからな。
もう少ししたら亡くなるかもしれないってのに。
考えながら真剣な顔でユウちゃんを見ていると聖羅が一歩を踏み出した。
「ユウちゃん。今から河川敷に行かない?」
「.....え?」
「お父さんの為に治る様に。四葉のクローバーを探そう。ね?お兄ちゃん」
「.....!.....だな」
相変わらずだな聖羅は。
こういう気分の時に特効薬として.....効いてくる。
俺は考えながらそのまま家に鍵を掛けてから。
河川敷にやって来た。
薄暗い中なので懐中電灯を持って、だ。
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