第38話 鈴木の電話と遠野の威圧と

『告白したんですね?アハハ』


俺は宿の待合室のソファにて。

そこで腰掛けて電話を掛けていた。

相手は何処か騒がしい所に居る鈴木である。


鈴木は少しだけ悲しげな声をしていたが。

それでも快晴。

つまり澄み渡って晴れている様な声を出した。

俺はその声を少しだけ複雑に受け止めながら.....雨が止んだのを確認してから。

そのまま話した。


「鈴木。良かったのか。これで」


『結ばれるべきは先輩です。そして森本先輩です。だからもう諦めました。区切りがつきました。でも.....この後お父様にどう説明しようかって思っている所ですが』


「.....そうだな」


『ああでも聞いて下さい。何だかそのお父様なんですけど.....何か知った様な感じで居るんです』


「.....え?」


俺は目を丸くする。

満月の様にであるが。

すると、お父様は知っているかも知れないです、と数秒経ってから声がしてくる。

俺は更に驚愕する。

だとするならヤバくね?、と思ったのだが。


『まあ仮にも親ですからね。仮にも。だから何処かで聞いたんでしょう』


「.....俺って殺されるかな?」


『それは無いです。私が.....説明します。先輩も説明してくれれば助かります』


「それはするけど。.....でも一回目が大丈夫かお前だけで」


『はい。大丈夫です。先輩に勇気を貰っていますから』


「.....だったら良いけどな」


俺はそう柔和に言いながら。

宿を見渡しつつ話す。

鈴木。お前も居てくれて有難うな、と。

すると鈴木は、何がですか?、と言ってくる。

お前が居てくれてユナが居てそれでもう幸せだったんだな俺って思ったんだ、と言葉を発する。


『先輩』


「何時も有難うな」


『.....もー。先輩。泣かせないで下さいよ』


「.....ああ。すまん」


グスグスと小さく声がする。

鼻を鳴らす音が、だ。

鈴木はそれでも悲しかったんだな、って思う。


今の状況が。

付き合えない事に、だ。

俺は何も言えずに目の前の親子連れなんかを見ていると。

先輩、と声がした。


『私も幸せです。先輩に出会ってから色々学ばせて頂きましたし。私があざといって事も初めて知りました』


「.....まあ昔からあざといから指摘しただけだけどな」


『いいえこれは指摘でもちょっと違います』


「まあそう思ってくれるならそれでも良いけど」


俺は苦笑いを浮かべながら目の前を見る。

鈴木。今は何処に居るんだ?、と聞いてみる。

すると鈴木は、はい。私は今.....羽田くんの家族の主催のパーティー会場に居ます、と答えた。

え?大丈夫なのかそれって、と思いながら考える。

クスクスと笑い声がした。


『先輩なら多分、大丈夫かコイツ、って思ってくれているんでしょうね』


「そうだな。よく分かったな」


『そりゃそうですよ。好きな人の考えなんて』


「.....そうか」


『私は大丈夫ですよ。でも.....羽田くんが結構苦笑しています』


「.....そうか.....そりゃそうだろうな。羽田家主催だったら何か面倒そうだ」


俺は行きたくないものだな、と思う。

だけど結構豪華なんだろうなぁ、とは思ったりする。

俺は考えながら少しだけ苦笑しつつ、まあ何かあったら連絡をくれ、と鈴木に言い聞かせる様にする。

すると鈴木は、はい。先輩に真っ先に相談しますね、とニコッとした感じで言葉が飛んで来た。

俺は、うむ、と返事をする。


『じゃあ先輩。そろそろパーティー会場に戻りますね』


「.....悪い輩に気を付けてな。クソばっかり居そうだしな。その場には」


『.....はい。やっぱり先輩は優しいですね。私の好きな人だっただけあります』


「いや。普通は心配するもんじゃないか?」


『.....私を救ってくれたのは羽田先輩に次いで先輩が2番目です。でもこの想いは1位です』


「.....そうか」


それから、じゃあ先輩。失礼します、と声がしてから。

電話が切れる。

と同時に電話が掛かってきた。

それは.....前に見た事のある番号だった。

もしもし、と電話に出ると。


『やあ。長門くん』


「.....何だお前は。遠野」


『旅行は楽しんでる?』


「.....気持ちが悪いな。楽しんでいるけど」


『.....そうか。実は用事があって電話したんだけどね』


何の用事だよ、と俺は警戒しながら話す。

すると、羽田くんの事に関して聞きたい、と言ってくる。

相変わらずなこったな、と思いながら、羽田の事なら大丈夫だ、と言う。

その言葉に、何故?、と声がする。

それに対して鈴木が居るからな一緒に、と言葉を発した。


『そうなんだね』


「そうだな。もう良いか電話切って


『相変わらずだな。君は。固い固い』


「固いんじゃない。お前の思考が読み取れないんだ。だから話したくない」


『.....そうか。じゃあ端的に話そうかな』


「.....ああ。端的に話せ」


ユナちゃんと付き合うのかな君は、と聞いてくる遠野。

俺は、というか告白して付き合ったけどな、と答えると。

遠野の言葉が数秒途切れた。


そしてこんな言葉がしてくる。

すまないが雪子を説得するまで付き合わないでくれるかな?、と。

何言ってんのこのクソ野郎は。


「お断りだな。.....お前の都合なんぞ知った事か」


『前にも話したけど君の考えが全て通るとは限らない。だから少しだけ.....』


「聞き飽きた。じゃあな。俺のユナはお前の私物じゃねぇっつーの!!!!!」


電話を思いっきりブチッと切った。

中島?それがどうした。

遠野?それがどうしたんだ。

この馬鹿は相変わらず.....私物と思ってんのか全てを。


考えながら俺は不愉快な感じでその場から立ち上がってから。

そのままスマホを内ポケットに仕舞い。

その場を後にした。


ユナは俺の彼女だからな。

中島は確かにユナの友人だが。

思い入れは無いしな中島に、だ。

ユナさえ居れば何でも良い感じだしな。

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