第39話 遠野の視界と俺達の視界

とか何とか遠野に言っちゃって。

これで羽田とかそんなのの仲がおかしくとかならないよな?

二の舞とかゴメンだぞマジに。

俺は思いながら下町.....を歩く。

温泉街と言っても良いかもしれないが。


「優子と何の話をしたの?藤也」


「.....そうだな.....まあ色々だ。例えば、付き合ったんですね、とかそういうの」


「何それ?アンタ馬鹿じゃないの?一般的過ぎるでしょ」


「お前な.....」


今この場所に居る人物。

俺とユナと山部。

温泉街の射的で聖羅は遊んでいる為にこの場所には居ない。

因みに山部は途中で別れるという。

俺達の為に、だ。


「この先には足湯とかそんなのあったりお茶屋さんがあるから。まあせいぜい頑張って」


「.....お前ってさ」


「.....何?文句か何かあるのかな」


「いや。表面はマジに腐っているけど内面は良い奴だよな」


そんな言葉を口にすると.....山部は真っ赤に赤面した。

それから、そんな事無いし、と言葉を発する。

ただ悪い事をしたって思っているだけ、とも、だ。


俺はその言葉に苦笑する。

そしてユナを見ると。

ユナも笑みを浮かべていた。


「ねえ。山部さん」


「.....何?」


「私は誘拐されて良かったかもね」


「.....?」


「こうして貴方と知り合えたんだから、ね?」


山部はビクッとして目を丸くする。

そしてプイッとそっぽを向いてから、何よそれ、とだけ言葉を発してから。

そのまま足速にこの場から去って行った。

俺達はその姿を見送りながら顔を見合わせる。

それから赤面する。


「.....ねえ。藤也」


「.....何だ。そんな真っ赤になるな」


「手繋いでも良いかな」


「.....恥ずかしいんだが」


「良いじゃない。折角だから」


そして俺の手を掴んでくるユナ。

その手は本当に暖かくそして柔らかかった。

俺は真っ赤になりつつビクッとなる。

体が硬直してしまう。

こんなに柔らかいのか女の手ってのは。


「緊張するね」


「そうだな。ならやるなよ」


「でも私達は折角恋人同士になったんだから」


「.....まあそうだけどさ.....」


周りが、良いわねぇ若いって、と言いながら歩いている。

その言葉にも恥ずかしく顔を俯かせる。

困ったものだな、と思いながら横を見ると。

ガチガチのガチガチに緊張したユナが唇を噛んでいた。


「.....ユナ。大丈夫か」


「うん。大丈夫。めっちゃ恥ずいだけ」


「.....そうか」


俺は手を握り返す。

そして笑みを浮かべた。

ユナはその笑みを見ながら驚く。

なあ。足湯に行かね?、と聞いてみる。

ユナは、う、うん、と目を丸くしたまま返事をする。


「まあ折角の旅行だし楽しまないとな」


「.....そうだね。確かにね。藤也」


「恋人同士にもなったしな」


「.....うん!」


満面の笑顔になるユナ。

それから俺達は足湯に向かい浸かってから。

お土産屋さんとかゲーセンとか覗いた。

そして最後に.....お茶屋さんにやって来る。

そのお茶屋さんで.....とんでもない事態が発生した。



「あれ?遠野くんからメッセージだ」


「.....?.....どういう」


お茶屋さんにて。

抹茶菓子のセットを注文して待っていると。

ユナがそう言ったので一瞬だけ眉を顰めつつ見る。

するとユナは遠野からのメッセージを読んだ。


「.....えっと.....『すまないけど君達の邪魔をする事にした。僕はあくまで平和を求めるから。すまない』.....だって」


「.....あの野郎」


ユナは不安そうな顔を俺に向けてくる。

俺はそんなユナを見ながら電話を掛けてみる。

丁度外にある茶椅子だったので良かったが。

羽田に掛けてみる。

すると羽田が重い口調で、はい、と言ってくる。


「忙しい時にすまん。.....聞いたか。遠野の意見は」


『.....柳広と優子そして雪子達にも伝えた。優のやっている事は過剰過ぎるという事で一応は一致したが。雪子は手遅れかもな』


「.....そうか」


『正直だが彼の言いたい事は分かる。仲を取り持つのも大事だ。だけど何かが違う気がする。彼の考えている事と俺達の考えと。.....話し合いをしようと思う』


仲を取り持つ為に君とユナは付き合っては駄目とはどういう事なのかな、と羽田は話ながら顎に手を添える感じで俺に答えを求めてくる。

俺は、分からん、と回答する。

奴の考えは本当に分からない、と言ってみる。

すると羽田は、極端だな。優の考えは、と話した。


『俺は賛成出来ない。正直君達の仲を引き裂く様な真似といい。今から俺は優の家に行ってみる。すまないが結果が出るまでは電話出来ない』


「.....すまない。ってか気を付けろよお前」


『俺達は友人だ。そんな最悪な事態には至らない。.....心配掛けてすまないな』


「.....」


『結果が出たら直ぐ伝える。すまないが切るからな』


俺達は眉を顰めながら電話を切る。

そして顎に手を添える。

遠野の身といい何が起こっているのか、だな。

そう考えながらであるが.....。


「遠野くんどうしちゃったんだろう」


「.....奴の考えと俺達の考えとでは次元が違う。元から気に入らなかったが.....まさかここまで酷い考えの持ち主だとはな。.....全く」


「確かにね。私も遠野くんの考えは少し苦手だけど遠野くんは大切な友達だし」


「.....そう思ってもらえるだけ奴は幸せだな」


俺達は話ながら。

目の前の通行人達を見る。

そして羽田からの連絡を待っていると。

遠野から俺にメッセージが来た。


君達が付き合うのは歓迎するよ。でもやはり今の状況から言ってやはり君とユナが付き合うのはまだ早い気がする。周りを見てほしいよ、と。


その言葉にイラッとした俺は、ただお前は目の前しか見てないだけじゃねーか、と返事を書いた。

それから送信する。


(僕が間違っているとでも?)


(間違いだらけだ。お前は目を覚ませ。良い加減に目の前じゃなくて仲間の心も感情も見ろ)


(僕は何時でも見ているよ?全て)


(お前の思考がインシデントだ。俺じゃない。お前の思考がインシデントじゃ無いのか。俺達が付き合うのは邪魔させない)


(君は馬鹿なのかい?僕がそんな訳無いだろう)


(お前がその思考で居る限りは周りは幸せにならない!!!!!)


俺はそんなメッセージを強く飛ばした。

それから待っていると、僕は周りの全てを守りたいだけだ。だからこの思考は必要だと思うけどね、と送ってくる。

俺はその言葉にゾッとした。

駄目だコイツは、と思いながら。


「.....遠野くん.....」


「.....ミチル.....か」


そう呟きながら俺は、ミチルが泣くぞ。そんな性格では、と送る。

すると案の定というか。

遠野はブチギレた様である。

それからこんなメッセージを送ってくる。

彼の名前を出す必要性は無いよね、と、だ。


(いや。ある。お前が.....大切な奴なんだろ。彼を思い出してもう一度考えてみろ。全て)


(君という奴は.....)


遠野の冷ややかな目が見てとれる。

しかし今はそんな事を気にしている場合では無い。

コイツを正気に戻さないと。


何をしでかすか分からん。

そう考えながら俺は文章を打とうとした、その時だった。

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