第37話 改めて言う。お前が好きだ

「それで。具体的にはどうするんだ。俺達の事とか」


「アンタ達の服装を先ずは整えて。具体的なデートプランを考えるわ」


「正直言って俺達はそんなの求めてないんだが.....」


「やるって言ってんの。だからやるの」


盛大に溜息を吐く俺。

それから、やる気に満ち満ちているのは良いがやり過ぎるなよ、と俺はコメントだけしてから。

ジュースを買いに行って来る、と立ち上がった。

すると、じゃあ私も行く、とユナが立ち上がって俺にニコッとしながら付いて来る。


「お前も何か飲むのか」


「そういう訳じゃ無いけど。でも藤也と一緒に居たいから」


「お前な.....小っ恥ずかしいって」


「私だって恥ずかしい」


「なら付いて来るなよ!?」


俺達はそうツッコミながら。

聖羅と山部だけ残してからそのまま外に出る。

そういや母さんと父さんは大丈夫かな。

イチャイチャして来るって言ってたけど。


「ねえ。藤也。仲が良いね。君のご両親」


「.....俺の親は若々しいからな。だからまあ仲良くあるんだ」


「私も一緒になれるかな。藤也と」


「付き合うと決めるな。俺はお前とは付き合うとは今はまだ考えられない」


そんな事言わないでぇ。

と言いながらユナは==な目をする。

俺はその姿を見ながら苦笑しつつ。


そのままジュースを買いに歩き出す。

浴衣が少しだけ揺れた。

なんとユナが俺の腕に絡みついて来たのだ。

俺は真っ赤になりながらユナを見る。


「お前何やってんだ!?」


「エヘヘ。良いじゃない。ね?藤也」


よく見ればユナはイヤリングを外している。

髪の毛も何だか整えている気がする。

俺は顎に手を添える。

それから、ユナ。どうしたんだ?イヤリングとか、と思い切って聞いてみる。

すると、うん。もう卒業した、と答える。


「不良っぽいのも卒業する。私は.....貴方の為だけに生きる事にした。真面目な子が好きだよね?」


「お前な.....有難いけど。確かにそうだけど!でも本当に恥ずかしいんだが!勘弁してくれ」


「私は.....もう子供っぽいのは嫌だから。だから藤也の為に、って思ってね」


「.....!」


ユナは俺を見てくる。

柔和になりながら、であるが。

俺はその姿に心臓をバクバクさせる。

困ったもんだな、と思いながら.....ユナを見る。

ユナの心臓の音も聞こえてきた。


「.....」


「.....」


何だろう。

本当に何でだろうな。

俺は考えながらユナを見る。


ユナは俺に寄り添う。

何で俺なんかを好きになるのだろうか。

そう考えつつユナに聞く。


「ユナ。そんなに俺の事を好きになって.....楽しいか?」


「楽しいとかじゃないよ。私は助けられた時からもう運命の人だって思った。君の事」


「.....恥ずかしい.....」


「私だって恥ずかしいよ。本当に赤くなるしか無いしね」


アハハ、と苦笑するユナ。

俺は、ならこんなにくっ付くなよ、と思いながらまた苦笑する。

するとユナは、うん。でも今はくっ付きたい、と笑顔を浮かべる。

赤くなりながらの笑顔を、だ。

頬を掻く俺。


「.....ねえ。藤也」


「何だ」


「私ね。不良に憧れていた。.....今までずっとね。でも藤也はそんなの好きそうじゃない。初めて不良から遠ざかろうって思った。君は本当に不思議な人だね。藤也」


「.....俺は何もしてないだろ。そもそも俺はあの日、携帯で警察に電話しただけだぞ」


「それを勇気って言うんだよ。藤也」


私にとってはそれだけで十分だった。

あそこで.....あの日。

あの場所で。

君が助けてくれたから。


だから私は世界が芽吹いんたんだよ。

と満面の笑顔で目の前に立ってから後ろに手を回して腰に手を当ててから俺を見てくるユナ。

その顔を見て.....桜吹雪でも舞うかの様な感じがした。


「.....」


「.....どうしたの?」


「そうだな。.....そうだな」


「.....?」


俺は改めてユナを見る。

そして真っ赤に赤面した。

それから外方を向く。


ああそうか。

俺は.....ユナが好きになっている。

今ので完全に自覚した。

思いながら俺はユナを再度、改めて見る。


「.....ユナ」


「.....何?藤也」


「俺がもしお前の事が好きって言って。.....そして付き合うってなったらどうする」


「.....え.....あ.....うん。それは嬉しい」


とても嬉しいかも。

だってみんなに自慢出来る。

こんな最高の彼氏が居るって。

光にもそうだけどみんなにも、ね。

と言ってくるユナだったが。


「でもね。.....私は何時迄も待つよ」


とも言ってきた。

俺は、?、を浮かべながら顔を上げる。

そこにはユナの見た事の無い満足げな笑みがあった。

まるで宝箱の宝石の様な。

そんな感じの。


「.....君が私の事を大切にしてくれるまで」


「.....ユナ.....」


「それにね。今は心からまだ付き合うべきじゃ無いかもって思ってる。光もそうだけど.....みんな迷っているから」


「そうだな。まだ問題は解決してない。例えば中島とかな」


「そうだね。まだ試練だと思う」


だからみんなに徐々に広めていきたいから。

今は付き合うって言っても本格的じゃなくて弱めに付き合いたい。

とユナは言ってくる。

俺はその言葉に苦笑しながらニヤッとする。

それにしてもお前らしくないな、と。


「.....お前はそんな考えとかすっ飛ばすかと思ったんだが」


「失礼だねぇもう」


「.....いや。お前の事だしな。本当に」


「うん。でもそう思われても仕方が無いよね」


でも本当なんだ。

今は光とか雪子とか。

そういう問題を解決したい。

だからまだ本格的には付き合えないかな、と言ってくる。


「.....でも君が私を大切にしてほしいって思う。私は.....」


「ユナ。改めて考えたが俺は.....どうやらやっぱりお前が好きだ」


「.....え」


言葉の途中で俺は本心を告げた。

その想いを。

大切な想いを、だ。

それは.....ユナに絶対に伝えたいって思った言葉。

俺はお前が好きだ、と。


「.....それって.....本当に?」


「今さっき自覚した。お前の笑顔でな」


「.....」


ユナは涙を真珠玉の様にポロポロ溢し始めた。

先程の笑顔は何処にいったのか、という感じで、だ。

そして余りの嬉しさ故にか。

顔を覆って見せない。


「.....ゴメン。余りに嬉しくて何にも言えないや」


「.....」


俺は咄嗟にユナを抱き締めた。

それから頭を撫でてやる。

特別な存在がした。

それだけで、だ。

それからユナを見る。


「.....有難う。藤也。遂に言ってくれたね。私が好きって」


「自覚するまで時間が掛かった。過去の事もあったしな」


「.....『こんな俺が付き合って良いのか』ってだよね」


「ああ。すまなかった」


「.....有難う。藤也。それでも好きって言ってくれて」


ユナは。

いや。

俺の彼女は。


涙を流してそれを拭くまで相当時間が掛かった。

だけど俺はずっと待つ。

それからジュースを改めて買いに行った。

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