第36話 佐藤の山部への告白と森本の恥じらいと

この旅館は山部の祖父の持っている旅館らしい。

その為に祖父の家に遊びに来た感覚で居たのだが。

偶然に俺と再会してしまった。


それで今に至るが。

俺は旅館のトイレに篭って羽田に電話していた。

計画的犯行か?、という感じで。


『ああ。そうなのか。それは気が付かなかったな。俺の采配ミスだな。すまない』


「.....じゃあお前はわざとじゃないのか?」


『そんなわけ無いだろう。俺は君と山部さんがなるだけ接触しない様に配置した。だけどまさかこんな展開になっているとはな。それはそれですまない』


正直俺は山部さんはまだ信頼出来ない範疇だからな、と羽田は語る。

俺はその言葉に天然石で出来た様な荷物置きを見る。

そして、まあもう良いや、と言う。

その言葉に羽田は、どうした、と言ってくる。

まあ諦めたっつってんだよ、と答えた。


「こうやって山部に再会したのも何らかの運だろ。取り敢えずはしゃーないと思う」


『.....すまないな。君に嫌な思いをさせてしまった』


「構わない。それに俺達はこの場に2日ぐらいしか居ないしな」


『今度からはよく調べるよ。すまない』


それから羽田は、すまない。この後パーティーに参加する必要があってね、と言葉を発してきた。

俺は、相変わらず忙しいな、と答えると。

そうだな。でも君に出会ってからはなかなか楽しくなったよ、と言ってくる。


『気楽に出来るという意味でな』


「.....それはまあ結構なこったな。.....気を付けてな」


『そうだな。君もなるだけ気を付けてな。まだ山部さんを心から信頼している訳じゃないから』


「ああ」


そして電話を切ってから。

俺は立ち上がるとドアがノックされた。

それからバァンと開く。


な、何事!?、と思いながらドアの先を見ると。

何やってんの?、的な感じで山部が。

この馬鹿野郎は何やってんの?


「お前。人が排泄していたらどうする気だったんだ」


「そんなの無いでしょ。アンタ電話していたし」


「客室にいきなり入って来るのも如何なものかだよお前」


「そうね。それは謝っておくわ」


「.....」


よく見るとユナと聖羅も慌てている。

止めようとはしたみたいだな。

俺は額に手を添えながら、出て良いか、と入り口を塞ぐ山部を見る。

山部は、ああ。ゴメン、と言いながら立ち退いた。

それから山部は俺を見る。


「っていうかマジにどうする気だったんだ。トイレ中だったら」


「アンタだし問題ない」


「問題あるわ。ふざけんなよテメェ」


「あ?」


山部は俺を睨みながら眉を顰める。

おー。女子とは思えない目付きだなこのアホ。

俺は考えながら山部を見る。

山部は、まあそんな事は良いけど取り敢えず計画を立てたから、と言ってくる。

何の計画だよ。


「私は言ったわよね。アンタ達をイチャイチャさせるって」


「.....まあそうだな。それでお前はマジに俺達をイチャイチャさせるのか」


「まあそれが私に出来る事の最大だろうから」


「.....そうか」


それから俺を見てくる山部。

そして顎に手を添える。

何だコイツ、と思いながら見ていると。

デートにはやっぱり服装よね、と言ってくる。

何だデートって。


「.....仕方が無いわ。男目線も欲しいし。佐藤に電話しよう」


「いや。何でそこで佐藤の名前を出す。俺は嫌だぞアイツに意見聞くの」


「アンタの充実を図る為なんだから。森本さんも。我慢しなさい」


「.....ハァ.....」


そして佐藤に電話する山部。

それから、何だ。山部、と声がした。

その声に答える様に、佐藤。デートの時の服装教えなさい、と言う山部。

コイツいきなりかよ。

そんなんじゃ分からんだろ。


『は?お前何言ってんの?何で俺が.....』


「何?嫌だってんの?」


『それはお前とデートのイメージでか?』


「.....何で私なのよ」


『いや。俺お前が好きだぞ?』


.....。


数秒考えてから。

俺達は愕然として真っ赤になる。

特に山部が、ファぁ!?、と声を出した。

何言ってんの!?

いきなり告白かよ!!!!!


「あ、アンタね!?私が好きなの!?」


『そうだよ。悪りぃかよ』


「は、はぁ!?」


おう。山部があり得ないほど動揺している。

俺はニヤニヤしながらその姿を見る。

いきなりの告白だがこれは見ものだな、と思いながら。

森本達は硬直している。


「.....佐藤.....アンタねぇ」


『何だ。お前を好きになっちゃ悪いのか』


「.....そんな事無いけど.....お客さん居るのにそんな言葉.....」


『.....俺は昔からお前が好きだったぞ。だからお前が付き合い始めた時にちょっと残念だったんだぞ』


「.....」


俺を睨んでくる山部。

何で俺を睨むんですかね?

俺は考えながらジト目で山部を見る。


山部は真っ赤になって狼狽える。

そして、も。もう良い!アンタと話したくない!、と電話を切る。

何を見せられたんだ俺達は?


「参考になりゃしない」


「良かったな。佐藤に好かれて」


「それ以上言ったら殺すわよアンタ」


「いや。現に好かれているんだからよ」


「.....殺す」


「.....やってみやがれこのタコサクが?」


それから睨み合う俺達。

そして互いに盛大に溜息を吐いた。

そうしてから、ったく。気が狂う、と言い出す山部。

俺は、それはこっちの台詞なんだが、と言う。

何を見せられたんだ俺達は?


「.....長門」


「.....何だ。山部」


「アンタ詫びとしてキスをしなさい。森本さんと」


「お前さっきから狂ってんの?何言ってんの?マジに」


「私だけ恥ずかしい思いをするのは嫌なの!」


コイツ.....。

俺は額をガリガリ掻く。

それからユナを見る。

ユナは俺にやる気を見せている。

おま.....。

聖羅は真っ赤だ。


「絶対に駄目だからな。この場では人が多過ぎるから」


「じゃあ後でね」


「.....後でもしないっての。あのな。恥じらい殺す気か俺を」


「私はいつでもどこでもキスは万事OKだから」


話を聞け。

俺は思いながら額に手を添える。

そして3人を見てから。

そのまま盛大に赤面しながら溜息を吐いた。

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